第7話~ケンちゃんの秘密基地~
いつもの様に川で遊んでいるとケンちゃんがニヤニヤしながら近づいてきた。
「豊、ちょっとこっちこい」ケンちゃんはいつになく嬉しそうだった。少し獣道を入ると廃墟と呼ぶには少し足らない、朽ち果てた小さな小屋があった。壁のいたる所にダンボールを貼り壁の穴を塞いでいた。
「どうだ?すごいだろ?」ケンちゃんは鼻を人差し指ですすって自慢げに僕に聞く。
「これケンちゃんが全部作ったの?」ケンちゃんは少し焦った感じになったが本当の事を教えてくれた。ここは以前、農作業の休憩所として使用されていた場所だったらしい。過疎化が進み、誰も使わなくなったのを知ったケンちゃんは秘密基地として新たに蘇らせたのだ。
「まぁ座れよ!」ケンちゃんがダンボールの中に漬物石を入れた固い椅子を僕に差し出す。僕はその上に腰掛け、辺りを見渡す。
ケンちゃんがそわそわしながら僕に声をかける。「な、なぁ、豊は、そ、その、好きな子とかいるのか?」いつもと違うケンちゃんに戸惑いつつ、とっさに奈緒子の顔が浮かんできた。「い、いないよ!」僕は声を張り上げる。
「そうか、俺のことを好きになるやつっていると思うか?」ケンちゃんは顔を赤らめて少し恥ずかしそうだ。「もしかして、ケンちゃん明日香さんのことが…う、うう」ケンちゃんは僕の口を両手で塞ぎ辺りをキョロキョロ見渡す。
「だ、誰かに聞かれたらどうするんだよ。」手を離すと一つタメ息をついて僕に聞く。
「なんで、明日香って分かったんだ?」僕はやっぱりなって顔をして「だって学校にいる女子って明日香さんと奈緒子だけだし、いつも明日香さんと話す時ケンちゃん少し恥ずかしそうだもん。」と答えると、更に大きいタメ息をつき、「はぁ、バレてたのか。っで豊から見て明日香は俺の事好きだと思うか?」
「僕は恋愛経験がなく異性を好きとかで観てないからわかないよ。けどケンちゃんと明日香さんって仲良いよね」するとケンちゃんの頬の筋肉が緩み「そうか!そうか!豊に相談して正解だったな!」急に笑顔になり「それと今日の事は絶対に誰にも言うなよ!親友同士の固い約束だからな」とだけ言い残しはしゃぎながら秘密基地を飛び出して行った。
誰も居なくなった静かな秘密基地の天井を見つめ奈緒子の笑った顔を思い出していた。
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