番外編:「未確認作品?」と思ったら(確認方法)
戦前の雑誌をひたすら読んでいて、気づいたことがあります。
「あれ、この作品って存在が確認されてるのかな?」
こう考えた時、確認する手段は意外に限られていることです。言われてみれば簡単なものの、おそらく気づき辛い事ではないかな、と。
……正直どこに需要があるかは謎ですが、一人二人の役にでも立てば、と考えて以下、記すことにしました。
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今回は戦前の作家・甲賀三郎氏の作品を題に、確認の過程を取り上げてみます。
1・国会図書館にない雑誌の収録作の場合、作品として未確認の可能性を考えます。
☆雑誌『満洲良男』に、甲賀三郎の短編『防諜小説 靴の紐』掲載を確認
※未確認であるという可能性自体、その場で思いつくのはむずかしいです。
2・全集には著作目録があるのが通例なので、まず全集があるかを調べます。
☆『甲賀三郎全集』(1947,8)の刊行あり
確認し未収録と判明したため、次の段階に移ります。
※再録の可能性もあるので、リストは一通り目を通します。
3・全集より新たに出た本で、著作目録を掲載しているか確認します。
☆2017年に出た『甲賀三郎探偵小説III』(論創社)に暫定目録あり
確認し未収録と判明したため、次の段階に移ります。
※研究の蓄積を考えると、参照リストは基本的に新しい方が望ましいです。
4・未確認作品である可能性が高い場合。
作品が1~3をくぐり抜けた場合、出版社・学会・HP・SNSなどの経由で解説者や研究者に手紙を出すとよいでしょう。可能であれば、出典プラス冒頭だけでもコピーを添えるとなおいいです。
※ただし、本と研究との間にはタイムラグがあるので、この段階まで辿り着いても既に確認済みである可能性は残っています。
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以上は、ある程度まで有名な作者についてとれる手法です。一般的な作者では、全集的な著作が出ていないこと、研究者の見当がつかないことも十分あり得ます。
その場合、CiNiiなどを使い作者名で論文を引き、研究者を探しましょう。研究書が出ているならまずそちらを、内容次第で論文を参照します(論文は大学図書館で読めることもありますので、ご参考までに)。
以上をあらかじめ参照しておくと、確認する研究者の負担も少なく済みます。
それでも確認が困難(専門家がいない等)な場合、SNSにて、
「著者名・作品名・一部写真」
「調べても分からなかった旨の言葉(未確認作品?など)」
を添えて、公開してみてもいいでしょう。
ほとんど運の世界ではありますが、うまく行けば調べがつくこともあります。
当方の場合、長谷川町子氏の戦前漫画について教えて頂けたことがありました。
そして仮に、もし気が向いたら、特定の作家について研究し始めてみてもいいかも知れません。著作目録をつくるのは想像以上に大変ですし、立派な研究でもあります。
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以上、ものすごくニッチな番外編でした。
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