図書館
受付には女性がいた。
「御用件承ります」
いかにも機械的な反応だ、毎日沢山の来館を捌いているとそうなってしまうのか。
「本を探している、古い本だけどあるかな?」
「タイトルは分かりますか」
「申し訳ない分からないんだ、でもここなら条件や関連性で検索してくれると聞いてね、出来るかな?」
「勿論です、その為に学習しましたから」
こうして断言されると中々に頼もしい、目的の本の特徴を書いたメモを見せる。
「検索します、少々お待ちください」
「ああ、頼むよ」
さてどこで待つかと周りを少し見渡した時、彼女からお呼びがかかった。
「お待たせしました、お探しの本当館に所蔵されています、担当の者が運んできますのでロビーでお待ちください」
あっという間の出来事だった。
「すごいな、もう見つけたのかい」
「はい、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした、ご希望の本であればよろしいのですが」
「いやいや、あの限られた条件からこんなに早く割り出すとは思わなかった、ありがとう確認してみるよ」
言われた通りロビーで椅子に座り待っていると、片手に本を抱えて館長がやってきた。
「連絡くだされば迎えに行きましたのに」
彼と笑いながら握手を交わし、本を受けとる。
「いやいや、この抜き打ちのテストは開発者としての責務のようなものですから」
「あなたが開発した受付嬢型アンドロイドはとても便利です、当館の事は勿論、来館者の情報を目や耳嗅覚など感覚すべてを使って学習して成長しています」
ここは国立の図書館で、世界一の本の貯蔵量を誇る施設だ。
「目的の本を探すことは勿論、的確に指示をだし、困っている来館者に適切な人員を手配したりと、あなたの言った通り受付は彼女一人で十分以上の働きですよ」
「私も手応えを感じているよ、正解の本を難なく当てて、時間も前より格段に早くなった、館長が私の意見を聞き入れて彼女をここに配置してくれたお陰だ」
二人でしばし談笑した。
アンドロイドのお陰で図書館の利用者の満足度が高まったことや、子供たちから人気で手紙が届くこと、働いている職員達も仕事が楽になって喜んでいることを教えてくれた。
「館長、聞きたいのだが彼女何だか少し機械的な冷たい印象になっていないか?私はもう少し人間味のあるように作ったと思ったんだが」
「ああ、その事でしたら、まあ何と言うか、彼女は貴方が産みの親である事に気がついたらしいんです」
意外な答えだった。その情報は敢えて与えなかったからだ。
「どうやって知ったんだ?」
「学習したんでしょう、図書館は様々な人が訪れますから、定期的にくる貴方が行うテストや、表情やしぐさ等の様々な要因から思い至ったのではないかと」
「私を学習したと言うことか、しかしそれが何故あの対応に繋がる?」
館長は笑いながら答えた。
「見せたかったんですよ有能さを、自分がどれだけやれているかを、職場を覗きに来る父親にね」
退館しようとすると受付の彼女に呼び止められた。
「ご希望の本でしたか?」
「ああ、満足のいく結果だったよ」
彼女はにっこりと微笑み。
「それは何よりでございます」
と満足げに言った。
「また来るよ」
「ええ何時でもお待ちしております」
笑顔で会釈し、図書館を出る。
私はまたここを訪れるだろう、娘が働くこの場所は希望と誇りに満ち溢れているのだ。
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