忘れ物

 私は極端にうっかりやだ、今もまた現場に忘れたリモコンを取りに戻っている。


 重要な仕事なのに忘れ物なんてとんでもない事だ、家族からも散々言われても中々気を回す習慣が身に付かない、そこそこ長い道のりで時間が出来たので考えてみることにした。


 ちょっと前には鍵を忘れた。妻と娘が外出するから持つように言われていたのに、玄関の前で座って待った。体が芯から冷えて涙目で震えていたら、お隣さんが心配して声をかけて家にあげて待たせてくれた。


 今日と同じ仕事のミスで同じ忘れ物をした。危険なものを扱う仕事なのにどうも危機感が足りないのか、これで帰れると思うと気が抜けてしまう、まあミスしても危険にさらされるのは私だけなのが救いだ。


 反省はこれくらいにしよう、現場に戻ってきた。リモコンには目立つ目印がついているので直ぐに見つけた。


 壊れてはいないだろうか、見たところ何もなさそうに見えるが触って確かめてみる。




 瞬間、世界は眩い白い光に包まれた。


 地球のすべての命が消え去り、静かすぎる青い星になった。


 危なかった。私は本当にうっかりやだ。


 リモコンのスイッチを間違えて押してしまった。生命消去爆弾のスイッチを。

 間一髪宇宙船へのワープに成功して事なきを得たが、あのまま地球に居たら巻き込まれて消えてしまう所だった。


 私はノニクボギ星の調査員、地球は生き物が多くて消去を命じられた。爆弾を仕掛けてその起爆リモコンを現地の星に忘れるとは、命懸けのうっかりだ。


 仕事は終わった、反省は後だ。今は直ちに家族のもとへ帰りたい。

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