母の写真

 その写真を二度目に見掛けたのは、職場の先輩でもある彼の家に初めて招待された夜のこと。

 明るい並木道を背景に、何処か彼に似た若い男性の横で笑っていたのは、確かに、梓の母。

「それ、親父の若い頃の写真」

 梓の小さな息を聞いたかのように、彼が言葉を紡ぐ。

 この写真を同じものを、母はアルバムに隠してずっと大切にしていた。その事実が、梓を震えさせていた。


 華やかなざわめきに、息を吐く。

「親父、まだ喋ってる」

 今日は俺達が主役なのに。呆れたような彼の声に、梓は静かに微笑んだ。

 二人の斜め前では、梓の母と彼の父が、再会を喜び合っている。

 大学の先輩後輩だったという二人の、穏やかな雰囲気に、梓はもう一度、安堵の息を、吐いた。





Twitter300字ss お題『写真』

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