第2話 美大で大学デビュー
ちょっと前の春の話。
私は美大に進学が決まり、胸をときめかせていた。
夢だった美大に受かったのはもちろん嬉しいが、『大学生』ってステージに上がれたことが嬉しくてしょうがなかった。
長年黒だった髪を茶髪に染め髪を巻いた。大学生が着てるような服を買い集めた。ネイルをしてピアスを開けた。ファッション雑誌を買って、ネットで『春から大学生の君へ〜』みたいな記事を読み漁った。
そう、大学デビューである。大学デビューを狙いまくった。
高校が女子校だったため、共学の大学に入れたことが嬉しすぎた。女子校出身者は特に大学デビューを狙うヤツが多いのだ。
なんで大学デビューするかって?モテたいからに決まってんだろ。
大学ではサークル入って新歓行って、飲み会して、オールナイトして、カッコイイ先輩といい感じになったりなんてして……なーんて妄想に浸っていた。当時の私はトンデモスイーツ脳だった。これも女子校出身者あるあるだ。これ書いていて恥ずかしくなってきた。
だが、そんな幻想は打ち砕かれた。
私の思い描いていた『大学生』は総合大学、いわゆる『一般大』の大学生であり、決して『美大』の大学生ではなかった。そのミスマッチにより、私は美大で少々浮いてしまうのだった……。
それでは美大の入学式の話をしよう。
当日、ピカピカ新品の可愛いスーツを着て美大の入学式会場へ向かう。
慣れない通学電車。まだ見ぬ新しい友達、先輩、教授、そして未来の恋人に思いを馳せながら電車に乗る…。
会場に到着。その辺はよく覚えてないのだが、でかいホールで行い、ただ席に座ってお偉いさんの話を聞くだけだったかな。
それが終わり、ホールから外へ順に出される。あ、こんだけなんだ入学式って…と思った。
問題はそのあと。
順に外へ出された新入生達。入学式の看板の前などでみんな写真を撮っていた。
周りの新入生を見てると……なんか違う……なんか……。
そう、彼らの服装だ。とても奇抜であった。
まずは全身真っ白スーツの男。金髪。お前はこれから式でも挙げるのかと言わんばかりの目立ちよう。
それに、なんて言ったらいいかわからない柄のスーツの女。頭は白髪。
他にもレインボーな髪色など、派手髪が多かった。そして金髪頭、いすぎやろ!
服もスーツではなく結婚式に着ていくようなドレスの子もたくさんいたし、何もスーツじゃなくていいみたいだ。
派手服以外の人だと、黒髪で、真面目で清楚な見た目の新入生が多かった。
なので、私みたいに明治大の入学式にいそうなゆるふわ茶髪のギャルスーツ女は意外にも少なかったのである。
そう、美大はそういうところである。
ものすっごく個性的なファッションの人か、地味系かに分かれてしまうため、『一般大にいそうなファッション』が少数派。肩身狭くなってしまうのだった。
そんなこんなでも早速友達ができるも「来る大学間違えたなw」と言われる。根は引っ込み思案な為大人しめな友達を作るも第一印象が『ギャルっぽくて怖い』だったらしい。
大学デビュー、失敗したなと思った。
派手なのも個性的なのも入学式だからであって、数日経てば普通になるかな?文化祭の時だけ髪色派手にする的なノリかな?と思ったがそんなことはなかった。
日を追うごとにコロコロと変わる友人の髪色。もうめちゃくちゃ色入れすぎて痛みまくってまっせ…。よくわからん柄のシャツを揃いも揃って着てる人たちや、いかにもお金持ちっぽい素敵なドレスを纏って登校してくる先輩。着物が普段着な先輩。
こんな面白い人材が揃ってるのは美大ならではなのである。
きっと彼らは美大じゃないと生きられなかっただろう。
みんなと一緒大好き☆一般大生の中にいたら明らかに浮く。しかも生きづらいと思う。美大これてよかったよ本当に。
そしてそんな個性的な人たちはやっぱり個性的な異性が素敵に見えてしまうし一般大を敵視する一面もある。
そんな彼らを見て思う。
こんなん私大学デビューどころじゃないやん!!!!
こうしてこのゆるふわギャル美大生は『美大』での大学デビューとモテを諦めたのだった……。
それでも大学生というパリピ心を抑えられない私は、他大学と交流できるインカレサークルに参加するようになるのだが……またそれは別の話である。
これを読んでる方で今年美大に入学される方はおめでとうございます!
これは一例ですが、このような可能性もあるかもですので頑張ってくださいませませ。
ちなみに、私の下級生はギャルが多かった。だから美大入ったからギャルはやってけないわけじゃないし、やっぱその年のカラーってのがあるのかもしれない。
美大はファッションに関してはとても寛容。流行りの髪型ファッションを強要してくる風潮はない。だから好きな服を着ればいい。
私はそれでも一般大の子みたいな服が好きなので着ています。
モテとかじゃなくて好きだから。
大学生は自分の個性が出せる時期ですからね。
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