亜人の行進 / 六連シロク様

 予定していた作品がイベントから抜けていたので、急遽予定変更です。

 縁があれば再び会いましょう。


 さて、今回は前置きナシです!

 気合を入れねばモッテかれるからね!



 亜人の行進 / 六連シロク様

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054884939067



○●○●○●



 ジャンル的な好みで言えば普通です。

 私は個々のキャラクターにスポットが多く当たる作品を好みます。

 そういう意味では歴史もの、戦争ものと言われるジャンルは嫌いではないけど……といった感じなのです。


 けどね……

 こいつは面白い!


 太閤記や愚者と愚者を読んだときの、

 大きなうねりや命の儚さ激しさをヒリヒリと感じる興奮!

 そう、興奮した!


 それに亜人が出てくるなんて最高だろ…… 



○●○●○●



 物語は主人公であるワーウルフのシヴァの村が人間に襲撃されるところから始まります。復讐劇が始まるのかな? と思ったらずいぶんとハイペースにお話は展開されていきます。

 ですが緩急ははっきりしており、薄味などでは決してない。

 

 この物語ではバトルシーンは特別展開されません。

 ここで展開されるのは殺し殺されるだからです。

 気持ちいいくらいサクサクと逝きます。

 短い文章で連続した生き死にのやり取りが交わされる様は見事の一言です。

 なんというか、手慣れてる感があります。作者様が恐ろしい……!


 そしてシヴァの復讐は第2話で一旦の終わりを迎えます(はやっ!)


 そこから彼が身を寄せることとなるメッツァルナ傭兵団を中心に物語は進みます。ヒトと亜人のごった煮の傭兵集団、メッツァルナ。彼らを率いいるのは魔女。金にガメつい領主な娘。

 彼女は苛烈に傭兵たちを操り依頼人を手玉に取り躍進を続けます。

 その手腕たるや、魔女です。人心に精通しているからこそ相手を自らが描く未来のピースに変えていくさまはまさに魔女です。彼女の洞察力やカリスマ性も生き生きとした迫力があります。作者様が恐ろしい!!



 この物語の骨太さは種族間の違いをキチンと考えた上で物語が紡がれていることにあると思います。

 

 エルフには『精霊が見える』

 ワーウルフは『身軽だが、パワーがない』


 外見ではなくこういった『違い』を各種族が持っており、差別も当然存在する。

(本作のソレを現代人の感覚で差別と言うのは憚られますが)


 そんな亜人種とヒトがまとめ上げられ進み征く様は血に彩られたオーケストラのようで胸がざわつくのです。


 

 読んでいて私は想いました。


 ヒトが一番怖いじゃないか!!! 

 

 なんやかんや亜人たちは純朴でイイヤツら揃いです。

 一方、ヒトは、うん……


  

 そしてその技量に舌を巻くとともに私は想いました。


 作者様が恐ろしい!!!


 あらすじもキャッチも淡々としているのに(失礼!)この密度!

 もしかして……あえて、ですか?

 まるで一流のオーケストラを従えたコンダクターのような指揮。

 私は読んでいて恐怖を覚えました。


 もし、この方が地獄を奏でよと指揮棒を振ったのなら……と。



 以下に私が作者様に恐怖したシーンを載せます


--- 以下引用 ---


「なぁ、ジルナルド。シヴァの様子はどうだい?」


 ジルナルドは真面目に働いているといったような事を言い。最後に優秀な兵士だと付け加えた。


「ふーん。本当に彼はつまらないよねー」


「と言いますと?」


 ミルタは机に突っ伏したまま語り出した。


「ヒトを憎みヒトを絶滅させる……。くらいの復讐心があるかと思ったらさー、当事者50人殺して虚しくなって、自分の人生何だったんだろうって、悲観して死にたがってた。復讐を果たした俺に生きる意味はないって感じ? で、ヒトであるアイミーが道を示すと、その道にすがり始めて。全ての人間が悪じゃない。みたいな悟った顔して従順に働いてる。つまらない生き方」


ジルナルドも穏やかに話す。


「彼はヒトの思春期となる大事な時期を孤独感と復讐心で塗りつぶしてしまいました。復讐心は次第に消えていくのに対し、孤独感は色濃くなっていく……。そんな中、差し伸べられた他者との繋がりにすがるのは必然ではないですか?」


 ジルナルドはそう言うとミルタの前にお茶を出す。


「必然だよ。だが、時折彼の瞳に憎悪の色が現れる。彼はまだ復讐するべき人間がいる事を察してるんだよ。本人は気づいていないふりをしているけどね」


 ミルタはお茶を一口啜る。


「繋がりと復讐どちらを追うのか……ですか。ここにいればどちらも叶うような気もしますが……。」


 ジルナルドの言葉にミルタは笑って言い返した。


「それは無理だよー。彼が今憎んでいるのは僕やアイミーみたいな支配層と、弱者を貶める略奪者だからねー」

 

--- 以上引用 ---


 作者様、

 私は魔人と亜人の行進、

 魔女が指揮する狂想曲を

 愉しみにしながら震えて待ちます。

(ただのファンじゃねーか!!)


 

○●○●○●


 

 あー、濃密だったぁ!

 骨太な屋台骨があることで物語に説得力が生まれてるんだよなー!

 その世界観の厚みに頼ることなく亜人たちを縦横無尽に駆け回させてるんだから贅沢な物語だよ~

 

 第12話で舞台設定的な話が挿入されるんだけど、

 その歴史の流れが目に浮かぶようで!

 設定話を読んでて膝を叩いて『ヒャハッ!』と笑ったのは久しぶりだったなぁ!!


 残酷描写が嫌いでなければホントお勧めです。



 次回!


 未定。

 多分レビューじゃなくて企画そのものの話をすると思うよ!

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