短編

シオンのプレゼント

「あのさ、何これ」

 包み紙を開けてシオンがニッコリとほほ笑む。

「誕生日プレゼント」

 人様に贈るプレゼントにもかかわらず自分が欲しいものをガッツリ選んだ私はニッコリと笑顔を浮かべる。

 砂を贈ってきたやつに言われたくない。


「まず、いくつかききたいことがあるんだけど」

「いやいや、そこは『ありがとう』よシオン」

 ドヤと言い切った私の頬にシオンの手が伸びきて掴んで引っ張った。

「ひひゃい!! ひはら、ひはらふおい。ふふうもっほそふほにすふへしょ」

「何言ってるか全然ワカリマセン。それに、こんだけやっても害された扱いにならないってことは、レーナ様やられても仕方ないって自覚があって受け入れてるよね?」

 すごいいい笑顔でいいきられた。

 確かに、思いっきり害されているが私の心の中にはやっぱりイヤリングはまずかったんじゃないかしらというのがあった。



 シオンの手がパッと離れたので。私は両手で頬を抑えた。

「力が強い。普通もっとソフトにするでしょ、一応レディーよ私」

「あぁ、僕男女差別しないほうなんで」

 スッパリ言いきられた。


「まず、質問1つめね。僕誕生日レーナ様に言ってないと思うんだけど。というか、僕孤児院出身じゃん、自分の誕生日自体わかんないんだよね。だからレーナ様に僕の誕生日がいつかって教えようがないんだけど。めっちゃドヤ顔で誕生日だってなんで断定できるの?」

 そりゃ、キャラクタープロフィールに書いてあるし、攻略するうえでキャラの誕生日くらいはイベントも起こるから知ってるとも言えない。

「…………なんでかな、勘?」

 思わず目が泳ぐ。

「僕が学生部に提出した個人書類どうやって閲覧したんだよ。誕生日の欄を記入した書類それしかないんだけど。めちゃくちゃあそこ管理しっかりしてるよね? もう一度きくね。どうして僕の誕生日だと書いた日をレーナ様が知ってんの?」

「…………なんでかな。偶然目に入っちゃったのかなその辺においてあったら」

「その辺に個人情報それも入学した時に提出したのおいてあるわけないでしょ」

「女は秘密があったほうが魅力的よってお母様が言ってたのでノーコメントで」

 困った時のこれである。



「まぁ、孤児院の情報まで洗ったんだから僕の提出書類を何らかのルートで閲覧できたことについてはまぁ詳しく聞かないであげる。次に何を思ってこれを贈ったかについてね」

「何をって……それ石が私の瞳の色と同じじゃない。きれいな緑でしょ。小ぶりので色がはっきりしてるから耳に当ててみたらそれが可愛かったのよ」

「そんなに気に入ったなら僕の用じゃなくて自分用に買えばいいでしょ」

「やっぱり? 最悪気にいらなかったら売りに行くかなって思ったんだけど、それも面倒よね。なにか万年筆とかレポート用紙とかのセット買い直してきます」

 消耗品のほうだったかやはり。



 さてさてと、シオンに渡したイヤリングに手を伸ばした。これは自分でつけよう。

 だけど、シオンが手を引いた。

「もらわないとは言ってないよ。…………ありがとう。でも次はもう僕が使えるやつにしてよ」

 シオンがそう言う。たしかにプレゼントには文句をハッキリつけるが新しく買い直してこいはさすがに言わないわけね。

「砂を贈る奴には言われたくないわ」

「僕のはものすごく気持ちと願いを込めて砂詰めたからレーナ様のと一緒にしないでくれる」

 シレっとそう言われる。

「気持ちでいいなら今いれてあげるわよ」

 ほれほれほれとイヤリングにハンドパワーをおくった。

「うわっ……もうお気持ちは十分」

 あえての敬語で嫌そうにこちらをみる。

「シオンが言ったんじゃない。その引くわ……みたいな顔と敬語やめて。来年はちゃんと欲しいもの贈るから」

 そういって、自分でハンドパワーをやっておいて恥ずかしくなって逃げるようにシオンのところを後にした。









 僕が本当に欲しいものなんて一生贈れっこないよ

「アンタだもん」

 ポツリとシオンは呟いた。


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