第26話 降りられない
学園の水路の入り口探しが始まった。
「ふーん、で?」
あれ、おかしい。私はご主人様のはずである。
「ですから、シオンも一緒に探すのを手伝って」
「やだよ、もう水路入ってうろつくの」
そうだ、シオンは一つ残らず魔核を拾ったのだからリオンやフォルトより長い時間水路にいたのだろう。
「そこをなんとか」
下手にでてお願いするけど。
「ヤダ」
小首をかしげてきっぱりと断られた。
「すまないが俺からも頼む」
「もう、魔法省の職員が水路に入ってるんだからなんとかするでしょ。ほっとけばいいじゃん」
私に対してはヤダの一言で終わらせた癖に、フォルトが頼むと渋々ながら歩き出す。
この差は本当になんなのだ。
「ほら、こっち。まずはアンナ様を探すよ」
シオンは場所を知っているようだ。
流石隠し通路のこともある程度知っているだけある。
入り口探しを頼んだ相手としては間違ってなかったわけだ。
でも、何故アンナをまず探すの?
アンナは寮近くの人だかりにミリーと一緒に立っていた。
「レーナ様!」
私に気がつくとミリーと共に駆け寄ってきた。
「レーナさま、姿が見えないので心配しました」
「爆発した噴水の近くにおりまして、怪我はないのですが念のためフォルトにリオンの所に連れていってもらっていたのです。ところでこの人だかりは?」
嘘はついてない。
「爆発の原因がわからないので、寮が倒壊したら危ないと寮から出るように言われたのです」
アンナに言われて周りを意識して見ると、外にいるのは生徒だけではなくメイドや従者もいた。
「お話し中ごめんだけど。アンナ様お力をお借りできませんか?」
話に割って入られた。
「えぇ、構いませんが。何事ですか?」
「細かいことは後でレーナ様に聞いて」
アンナとミリーも一緒にどこへいくと思えばたどり着いた所は爆発した噴水の所だった。
二次被害に合わないためだろうか近くには誰もいなかった。
危険だから人が入らないように簡易な柵で囲ってある壊れた噴水があった。
それらしい入り口なんかない。
「えっと、入り口らしき場所などどこにも」
瓦礫となった噴水の残骸を避けながらシオンは壊れた噴水を調べている。
「この辺かな」
「まさか、入り口はこの噴水で爆発で壊れてしまったの?」
「あー、違うよ。これ結構な水を使用する大きな噴水だったから、水を組み上げるために水源の近くにあると思うんだよね。丁度壊れてるし、水路にぶち当たるまでアンナ様に爆発してもらったほうが水路の入り口を探すより早いよ」
サラッと水路の入り口を探すより、水路に到達するまで壊せばいいじゃんと大胆なことを言われる。
「待ってちょうだい。そんなことして大丈夫なの?」
まるで、平気みたく言ってるけど本当にそんな大胆なことをしてしまっていいの?
「これ、組み上げるシステムも壊れてるだろうしまた噴水を設置するならどうせ大規模に直すことになるし。壊れてて直すんだから後何回か爆発させても大丈夫でしょ。幸い咎めるような人は水路に既に入ってるし」
ニッコリとシオンは微笑む、本気だ。
「あの、レーナ様。いかがいたしましょう」
アンナが私に判断を委ねた。
「…………緊急時です。シオンの言うとおりに、何かあった際の責任は私がとりましょう」
今必要なのは誰が責任をとるかということだけである。
私の返答にアンナは頷く。
「じゃあ、手っ取り早く噴水のあった真上がいいかな。この辺にお願いしますアンナ様」
シオンが離れてからアンナがぶっぱなした。
まさにドーーーーーンとしか言いようがない。
読み通り水路に続く大穴が空いた。噴水の破片や土もごっそりと水路に落ちているけれど、目的である水路にはここから行けそう。
「ここから降りるよ」
そう言うやいなやヒョイっと穴にシオンが飛び込んだ。
4~5mはあったし、足場も悪いのに。
フォルトもシオンに続き飛び込んだ。この高さをよく躊躇なしにいけるもんだ。
私も下へ降りなきゃ……って飛び込めないよこんなの。
「レーナ様、先に魔核の袋を落としてよ」
そうね、持っていないほうが降りるときに便利ね。
シオンに言われるままに袋を落とす、フォルトが袋をキャッチした。
よし、これで両手が使えるから足場を確保しつつなんとか降りよう。
「二人とも、レーナ嬢を頼む」
フォルトが見上げそう言った。
「えっ?」
「「かしこまりました」」
一緒に行くつもりだった私の両サイドにアンナとミリーやってきて穴から私を引き離す。
なるほど。この水路の入り方なら私はついていけない。
水路への入り口もわからないし、公爵令嬢レーナは学園で待つことになるってわけか。
打ち合わせなしでよくもまぁ、前回に引き続き私を蚊帳の外にできるものだと感心してしまう。
まぁ、行かなくていいなら行かなくてもいいんですけどね。
危険な目にはあいたくないし。これまでは不本意ながら巻き込まれる形だったわけだし。
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