楽天地から徒歩一分。花壇街とは何ぞや ①
東西に延びるJR総武線と南北に延びる四ツ目通りの交点に位置する錦糸町駅。
駅を原点に、総武線と四ツ目通りを座標軸とすると、錦糸町を四つの領域としてきれいに分けることが出来ます。
地図のルールと同様に北を上とすれば、以下のようになります。
①第一象限(駅の北東) : 「錦糸公園」、駄菓子製造
②第二象限(駅の北西) : 小規模店、駄菓子問屋
③第三象限(駅の南西) : 競馬と歓楽街
④第四象限(駅の南東) : 「楽天地」と「花壇街」
万が一、書籍化された暁には挿絵により図示しますが(笑)、地図と数学の教科書を見比べながら、位置関係を把握してみて下さいね。
ちなみに、今までご紹介したオリナス、ロッテシティホテル錦糸町、西島商店、鍵屋製菓、やおきんは第一象限に、アルカキット、乳糖製菓、エワタリ、ミサキは第二象限に、マルイ、山田屋は第三象限に、東京トラフィック錦糸町ビル、力屋が第四象限に属します。大規模な開発は偏りなくそれぞれの地域で行われ、かつ昔ながらの地域としての特色もあるのが何となく分かって頂けるかと。
線路や道路を超えるだけでガラッと雰囲気が変わるのも、錦糸町の面白さのひとつなのです。
それでは、この中の第四象限、謎の楽天地・花壇街をご紹介しましょう。
楽天地、花壇街を知らない方ならば、その文字を見ただけではどんな所なのか当てることはできないはず。
つい数日前、駅前で信号待ちをしていると、隣にいた六十代くらいの老夫婦の、
「あそこに楽天地って書いてあるけれど、楽天のビルなのかな」
「違うんじゃない。楽天のマークじゃないから」
という会話が聞こえてきました。
年配の方でも知らないのは少し驚きでしたが、この辺り出身でなければ当然かもしれません。
当時、下町の娯楽の中心は浅草でした。浅草に負けない娯楽施設を作ろう!とグループ創業者の小林一三氏の発案で、国鉄・都電という公共交通の要所であった錦糸町に白羽の矢が立ち、約五千坪にも及ぶ汽車製造工場の跡地を買い取って作り上げられたのが、大衆娯楽の聖地=楽天の地である「楽天地」です。
この小林一三氏、関西経済界のレジェンドとして有名であり、NHK朝のテレビ小説「わろてんか」の(高橋一生さんが演じた)伊能栞のモデルになったと言われています。既に関西では阪急電鉄を成功させ、宝塚劇場を立ち上げていた小林氏には、錦糸町を関東の拠点に、という思いがあったのかもしれません。
東京楽天地のホームページには、現社長のモットーとして、タカラヅカと同じ「清く、正しく、美しく」が掲げられています。
立ち上げ時は四つの映画館を中心に食堂や、吉本興業と提携した劇場を設置。その後、キャバレーや場外馬券売り場を誘致しました。1953年にはスポーツランドと観覧車を開設すると共に、スポーツランド屋上と屋外遊技場を結ぶ空中ケーブルカーも設置するなど、現在のレジャー施設の先駆けとなっています。
その後も映画館を増設しながら、湧出した天然温泉を利用した楽天地温泉会館(室内プール付き)を1956年に開設。当時のキャッチフレーズが「映画と温泉!娯楽のデパート 江東楽天地」です。辻元議員を思い浮かべてしまったのは私だけ?(笑)
翌1957年にはプールを閉鎖して、噴水キャバレー(!)「グランドフォンテン」を開業。元々がプールだったので、店の真ん中に大きな噴水があるという斬新さ抜群の人気店だったらしいです。
京葉通りに面した噴水のネオンサイン(確か建物の二~三層に渡る大きなものだったと記憶しています)を見ながら、中が何かも分からずに「すごいなぁ、噴水見てみたいなぁ」と当時は思っていました。
ケーブルカーがいつまで稼働していたのか調べてみましたが記録が見つからずじまい。私が物心ついた時には既になかったので、恐らく1961年の増改築時には撤去していたのでしょう。
ケーブルカーにしろ室内プールにしろ、目新しいアイデアを出して実現させる実行力と、スパっと見切りをつける決断力には感心しました。すべてが小林一三氏の判断ではないかもしれませんが、素晴らしい経営陣だったことがうかがえます。
1965年には温浴施設にダンスホール「ブルースカイ」がオープンし、最盛期には九館あった映画館も、1971年には一館をボーリング場に改築。
キャバレー、ダンスホール、ボーリングと聞くと、昭和における大人の娯楽の王道を感じますね。
そんな楽天地も娯楽から生活にシフトしていくことになります。
1986年には全面改築し、西武系の「LIVIN錦糸町店」を中心とした複合施設が出来ました。それでも映画館やグランドサウナ、ゲームセンターなど娯楽施設も残しつつ、2017年から全面リニューアル中。LIVINからパルコに生まれ変わって2019年・春にオープン予定です。
実家が楽天地を抜けてすぐの所にあり、子供のころから楽天地を見て育ってきたので、移り変わりには感慨深いものがあります。
次回から、昭和の楽天地の姿を私の思い出と共にご紹介します。
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