白と華と魔王と神と
アルマジロ
プロローグ
プロローグ
「うぅー寒いなぁー」
しんしんと降り積もる雪の中耳あてにマフラー、コートに手袋と完全防備で俺はぼやきながら歩いている。
「おかしいだろ!ここ愛知県だぞ!?しかもまだ12月だぞ!」
おそらく-10℃を下回っているであろう気温のなかこのセリフを叫ぶのも何回目だろうか。
俺...
「寒すぎんだよ!」
「叫んでも仕方ないでしょ。ばかなの?」
「叫べば暖かくなんねえかなって」
「あほなの?」
「へーへーホーホー」
そう、時代は2〇世紀。
地球な氷河期に突入仕掛けていた。
年々寒くなっていく冬。
年々涼しくなる夏。
様々な専門家が氷河期についての討論をしている。
まぁこの二人はそんなものに興味など微塵もなかったのだが。
「ハァ...ほんとハクは馬鹿なんだから...」
「俺これでも高校2年生で全国2位なんですけど~頭いいんですけどぉ~馬鹿じゃないんですけどぉ~」
「あたしより下じゃ~ん!あんな模試満点取れないやつは馬鹿ですぅ~」
ばーかばーかと言いながら俺を馬鹿にして隣を歩くこの女子は
まぁいわゆる幼馴染というやつである。
俺ら2人は一時期、超難関大学への五年連続受験者100人以上全員合格を叩き出した超進学高校へ通っている。
俺は中学2年まではいわゆる引きこもりで勉強と運動はからっきしの人間だった。
華音は俺を部屋から引っ張り出しその上勉強させて超難関校に合格させるという荒業をやってのけたのである。
俺は親が共に高学歴でDNAの出来がよかったためか猛勉強した(させられた)お陰か今では華音に次点で学年で2位の成績を納めていたりする。
来年になったら2人でまたどこかそれなりに頭の良い大学を目指すのだろうと思っている。
「華音は大学どこ行くんだ?
俺はまだ決めてねえけどさ」
「んーあたしもまだー」
「だよなー
まぁ俺らならどこでも行けるだろ」
こう言うと華音はふふっと笑って確かにと頷いて
「なんせ全国トップ2だもんね」
「そーゆーこと」
2人で静かな銀世界の中帰り道を歩いていく。
すると突然華音が
「あ、ねぇ!久々に
「はぁ?あそこって秘密基地のことか?アホか!断る!」
「いいじゃんか!絶対綺麗だよ!」
「大体、最近の通り魔事件知らねえのかよ!殺されんぞ!」
「その時はハクが守ってくれるでしょ?」
上目遣いで目をうるうるさせてこちらを見てくる。
俺は昔からこの目に弱かった。
「...っ!ハァァァ~仕方ねえなぁ...」
そうボヤきながらも口には笑みがこぼれていたと思う。
そして多分俺はこの日、無理やりにでも家に帰らなかったことを一生悔やんでいただろう。
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「着いたぁ!うわぁ!真っ白!すごい!」
「すごいね!最近でもこの辺じゃ見れないくらいに綺麗に1面雪景色だね!」
「ねぇ!見て!滑り台が雪で滑れなくなってるよ!すごいね!」
秘密基地のある公園で華音が興奮したように喋っている。
「なにいまさらこんなもんで興奮して...」
なにをいまさらと華音にツッコミを入れようとした時だった。
不意にこちらへものすごいスピードで走ってくる怪しい人を見つける。
そして見てしまった。見えてしまった。
男は両手で包丁を腹のあたりに構えていた。
「華音あぶな...」
ぶしゃっ
危ない、避けろ、逃げろと。
そう言い終える前に真っ白な地面にに赫い華が咲いた。
「............は?」
思わず間の抜けた声が出る。
「んっ!?くぁっ...はや...に...て...ハク...ゲボッゴボッ」
華音が血を吐きながらこちらへ何か伝えようとしている。
そして動かなくなった。
おそらく息絶えてしまったのだろう。
「あはっあはははははっシンダ!シンダッ!あひゃひゃひゃ%+♪€\°#%」
男は変な笑い声を上げながら華音だった身体を切りつける。
目の焦点がまったく合っていない。
薬物でもやっているのだろう。
あまりに突然過ぎて華音が目の前で刺されたという現実を受け止められない。
切りつけるのを止めさせようと動き出すもガクリと膝から崩れ落ちた。
頭の中を絶望が埋め尽くす。
嘘だ。
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ 嘘だ
嘘だ。華音が刺されるなんて。
さっき言った通り魔だって9割冗談だ。
分かってたから華音も守ってくれなんて言ったんだ。
守れなかったじゃないか...この嘘つき...
突然、現れたあまりに理不尽な現実は絶望しきった僕にも刃を向ける。
「オマエ、、モ、シネェッ!」
ドシュッ
強い衝撃と顎部への鋭い痛みに僕の意識は暗転した。
最後に目に入ったのは青い空とそこへ飛び散る自分のものであろう血であった。
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