鍋を洗えば
鋼鉄の巨大な胴体と
それを満たす熱湯
鍋を傾け、湯を捨てると
地獄の底を覆うかのような湯気が
朦々と天井へと立ち上る
鍋に残った大小数千の骨のかけらを捨て
鍋に20℃のシャワーをかけながら
金束子で表面の油膜を一掃する
酸性の洗剤が揮発して
むせ返る空気が辺りに充満する
鍋底に根を下ろしたように焦げ付いた肉片を
金属の板で削り取る
変拍子を刻みながら削り取る
手を切らないように注意を払いながら
鈍く痛む右手親指を感じながら
徹底的に削り取る
白い腕に汗が流れ
強情な油汚れは洗剤によって乳化し
情熱的な研磨の前に跡形もなく
排水溝へと敗走する
もう一度水を掛けると
鍋は突如初々しく眩い金属の光沢を取り戻す
実はこんなにも美しいものか
ただの大きな鍋が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます