水瀬との登校

 朝、目を覚ますといつも見ていた天井ではなかった。そういえば水瀬が泊まっていたから俺はリビングで寝てたんだな。どうりで腰が痛いはずだ。そう思っていると、誰かが下に降りてくる足音が聞こえてきた。誰だろう?と思い見てみると、水瀬だった。水瀬はそのままトイレに向かった。なんだ、トイレだったか。まぁこんな早く起きるわけないよな。普段の俺だってこんなに早く起きないからな。なんて納得していると、後ろから不意に声をかけられた。


 「野雫目くん、ここで寝てたんだ」


 「ま、まあな。水瀬と咲久野が寝てる所に俺が寝ても困るだろ?」


 「なんかごめんね。私が泊まったお陰で野雫目くんがここで寝るはめになって」


 「いや、むしろ俺は嬉しいぞ。そもそも、泊まってくれって言ったのは俺だし、水瀬が負い目を感じる必要はないぞ。むしろ咲久野の世話をしてくれてありがとな。そのお陰で俺はなんもしなくてすんでラッキーだった」


 俺は笑いながら言った。それにつられて水瀬も笑っていた。


 「そうだったんですね。納得しました」


 「俺は働きたくないんでな。出来ることなら毎日咲久野の世話をしてくれたら助かるんだがな」


 「そんなこと思ってるんですか。あきれますね」


 笑いながら言っていたが、目が本気だった。冗談であってほしい。水瀬に嫌われたらおしまいだ。

 はたからみても落ち込んでいるのがわかる位落ち込んでいた。


 「大丈夫だよ、冗談だから」


 ふぅ、一安心だ。嫌われてなくてよかったわ。嫌われてたら死んでるレベルだわ。

 ほっとしていると、咲久野が降りてきた。水瀬と話してると結構時間がたっていたみたいだった。もう朝飯の時間だったみたいで、他の人も降りてきたみたいだった。


 「その子、誰?自己紹介お願いできるかな?」


 国見先輩はそう言っていた。


 「その可愛い子、捕獲します。さあいくぞ、おー! 」


 綺羅星先輩にいたってはまた意味不明なことを言っている。水瀬も困っているみたいだった。

 そんな空気のなかで、水瀬は自己紹介を始める。


 「私は水瀬梨花っていいます。咲久野と同じで芸術科です。また、咲久野とは友達です。よろしくお願いします」


 緊張していたのか、少し震えていた。


 「昨日、泊まってほしいって言ったの俺なんですよね」


 「もしかして、大人の階段上ったの?青春してるな」


 いつもならそんなことを言わない国見先輩がそんなことを言っていた。

 珍しいな、国見先輩があんなこというなんて。それよりも誤解を解かないとな。


 「違いますよ、昨日打ち上げに行ってたみたいで、咲久野と帰ってきたんで、少し話してると遅くなってしまって、ならいっそのこと泊まっていけばいいじゃん、みたいなことを言ったんですよ」


 自分でも訳のわからないことを言っていた。


 「......よし、野雫目は放っておいて、朝飯食べるぞ。水瀬さんもこっちにきて食べてくれ。遠慮しなくていいからな」


 俺は少しの間恥ずかしくてフリーズしていたが、我に返り、皆と同じく朝飯を食べる。食べ終わった順に学校の準備をしに部屋に戻る。

 俺も水瀬たちより早く食べて部屋に戻んないとなと思い、急いで食べた。


 部屋に戻り着替えをして学校に向かった。今日は咲久野に加え水瀬と学校に向かった。今日も今日とて騒がしい一日になりそうだ。

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