19回目:別れ:そして僕らは夢の中で出会う

「事象の地平面で量子もつれとなった光子対を想像して欲しい。量子もつれを保ったまま別れた光子の一方はブラックホールへ落ち込み、もう一方はこちら側に残る。従来、ブラックホールは特異点とされ情報は保存されないと考えられていたが、量子もつれ状態の光子は空間を超え情報を伝え得る」

 声を音と感じ始めると現(うつつ)との別れが近い。重くなった目蓋は別れ難いと主張を始め、しばしの別れと断じたはずの優しい闇が手招きする。「ガマンは良くないよ」昔に別れた声まで耳の奥で誘い始めた。


 ――そうだね。ほんの少し。このひとときだけ。

 夢と現の地平面を飛び越えて。

 ――別れるために、また会おう。


 *


「君は単位とお別れしたいのかね?」

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