300字の独り言(過去分)

森村直也

1回目:星:萬人生相談所

「火星がこの位置にあると強運に恵まれるの。だから大丈夫。チャンスを逃さないで」

 画面の星と師匠の言葉に、気弱そうな少女は顔を輝かせる。しまいには自信に満ちた顔で出て行った。


「今年は水星の位置が悪いの。恋人を追っても逃げられる。行動は慎むべきね」

 どこか焦り憔悴した様子の男は食い入るように画面を見たあと、肩を落として去って行った。


「次の人は?」

「結婚相談です。相手は優良企業の社員を名乗っているそうですが、嘘です。詐欺罪で検挙歴あり」

「そう。じゃぁ、次はこれを使おうかな」

 僕の手元には調査書。師匠の手元にはでっち上げのホロスコープ。

 占い小屋という名の萬人生相談所は、今日も貴方の相談を待っています。

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