無敵だった頃

かつて

自分の利き腕が

無敵だった頃

怖いものなんて

何も無かった

冷蔵庫が歩いている道を塞いだ

「邪魔だ」

速攻で吹っ飛ばして消した

今も誰かの上空を飛び交っていると思う

だから落下した時には

気を付けてね

かつて

かつてか

ああそうだな

今ではない

あれから随分と時は流れ

この場所は

あの頃の続きである筈なのだが

どうにもそうは思えなかった

何処かで

切断されているように思えるのだ

かつて

自分は

無敵だった

そう確信していた

今となってはその真偽は定かではない

どうでも良い

重要なのは

狂信的に信じていられた

そういうことだ

今は視界に映る全てが怖い

自分にはもう

自分の利き腕を信じることが出来ない

花瓶が黙ってこちらを見ている

許してください

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