翼がある

とても軽い翼だ

だから初心者でも空を飛ぶことが出来る

値段もとても安い

通販で購入することも可能だ

未成年は保護者の許可を予め得ておく必要がある

誰もそんなことを守ってはいないが

翼がある

本来、人間には備わっていない部位である

そのため工場で生産された物を後から取り付ける必要がある

かつては職人が一つ一つ手作りしていたが

今ではほとんどが機械で生産されているし

言われてもどちらが人の手によるものなのか解らないほどなのだ

翼がある

人間は本能的に空を飛ぼうとする習性がある

恐らく昔は空を飛んでいたのだろう

欲望がある限り翼への需要が途絶えることはないだろう

翼がある

無責任に翼ばかりが溢れ返る

機能性よりもその見た目が重視される

人々はこぞって翼を装着して空を飛ぶ

それはずっと簡単なこと

説明書を読む必要すら無かった

うまい具合に風に乗れば誰でもふわりと勝手に身体が宙に浮かんだ

だが空を一瞬、飛ぶことは

空を飛ぶとは言わないのだ

誰も教えてくれない真実がそこにある

不都合な情報は隠蔽されて陽の目を浴びることは無い

翼がある

それを手にし大空を駆け上がる

昨日のうちに落下して今朝は血塗れの肉塊が転がっている

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