第11話 最近の家くんの過ごし方 2
笑ってばかりの毎日―――笑ってばかりの、高校二年生。
そんな日々に、なってしまっている―――。
そこでクラスに目を向ければ、いろんな奴がいることがわかる。
いろんな、
もう行く大学をきっちり決めているらしく、勉強にのめりこんでいるやつがいます。
文化祭の準備頑張って―――仲間と顔を見合わせて、声上げてるやつがいます。
秋だからまだ先の話ではあるけれど――—もう夢中になってやっている。
それと、部活で、剣道だったと思うけれど―――県大会選ばれたヒトもいたな、先生が朝礼で言ってたんですけど。
賞状もらった人もいたような―――。
まあ、他にもいろんな……いろんな奴がいます。
クラスにはいろんな、生徒がいる。
クラスで、まあ楽しそうに?
いる………生きてる。
まあ、何がしたいのかわからないヤツもいたけど。
みんな、それぞれに目指している。
見つめている……未来を。
俺はね……マンガを、読んでいるだけです。
好きですからね―――あと、
コンビニでマンガ談議してるだけ。
ほんとう、楽しているように見える……かもしれないです。
周りからは。
もともとそんな予定じゃあなかったから、俺が狙ってそれをやってるって思われたくないですが。
違和感。楽をしている。
で………いいのかなって。
こんなに楽しくていいのかなって。
クラスにはいろんな奴がいます。
でもその誰といるよりも、なんかコンビニに行きたい。
日中も教室で、そんなことをふと思って……。
なんの努力もなく―――何かを頑張るでもなく。
……まあ、努力すればいいってものでも、ないですけど。
努力したことくらいそりゃあ、ありますよ―――俺だって。
そういえばそんなこともありました。
俺だって人間ですから。
……とにかく、こんな毎日になるなんて思わなくて。
だから俺が狙ってやっているみたいに思われても困るんスけど。
予定になくて、予想してなくて。
今、学校にいるどの瞬間よりもマンガの話が好きで。
これだけやってれば、その他のことって、実は全部……無駄だったんじゃないのかなって。
じゃあ、教室のやつらと話している時間は全部無駄だったんじゃないのかな。
とか思っている。
そんなふうに思ってしまう。
俺が、ここに………いま中庭にいる理由ですけど、なんか気まずくなったから。
気まずくなったのか……?
どういうことだ……だって、これおかしいじゃあないですか。
こんな……その、高校生が、学校に来ている人が。
ただ授業受けてるだけだったはずなのに。
今日はね?
コンビニまで、行って―――なんか、見つけて。
あいつを……確認して。
で、なんか引き返したくなった。
一旦、それで……戻ってきたんです。
違うみち通って、帰るのもできたけど……。
なんで。
なんでかっていうと………さあって感じですけれど。
違和感、不自然。
思っちまって。
何かおかしい気はする。
彼の話を聞き終わった中庭では、一陣の風が吹き抜けた。
流石に夕方ともなれば、三方が校舎に囲まれたこの中庭には、日差しが差し込まない。
涼しさを感じる。
彼が中庭を眺めながら……もう話し終えたのだろうか、語り終えたのだろうか。
全てを。
彼は草をむしる、環境係としての仕事を手伝う。
何をすればいいのかわからないから、とりあえずという動きだ。
向地性粘り強い雑草たちは、相も変わらず、探せばいくらでも見つかるのだった。
「なんでだろ……」
視線を落とす彼。静かな話であった。
彼は口端泡を飛ばし、まくし立てるタイプ……そんな性質と決めつけていたが。
正直言って、私に彼の気持ちはわからない。
若者の心を、すべてを把握できるほどのことは出来ない……何年この仕事をやっていても。
それが私だ、私の能力と、その限度。
彼自身もまた、自らの心境全てを、うまく話せなかったようではある。
ただ、彼は言いたいこと、あるいは今言えることを言い終えたようだ。
言いたいことはあったようで、しかし想いは纏まりがない。
私は。
それを確認してから、彼にこう言ってやった。
「君は……とても素敵なものを見つけたんだね 」
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