第17話 旅立ち
「子供がお腹にいます」
夕食時。
あたしは席を立ちあがり、テーブルについている皆に言った。
いきなり告白したあたしに驚き、トーラ先生と
そうなのよ。
出来ちゃったのよ。
アレがこないし、だるくて眠くて仕方がないし、そうしたらだんだんムカついてきて……。
「聖職者が子を孕むなんて、あるまじきことです。あたしを破門にしてください」
兄さんたちがどよめいた。
「何を言うんだアネッテ! 君のせいじゃない!」
立ち上がって叫んだのは、あたしと一番近い年の兄さん。
「何もかもギールのせいだ。君が悪いんじゃない。君がここを去る道理はない」
ありがとう兄さん。
あたしのためにそう言ってくれるなんて。
「ここに居なさい。その子供は、私たちで育てよう。心配しなくていい」
「ここを出て、一人で育てるなんて無理だ。親子二人で路頭に迷うのか? 」
「君には親族がいない。何処に行こうというんだ」
口々にあたしに言葉をかけてくれる兄さんたち。
本当に、いい兄さんたちを持つことが出来てあたし幸せよ。
「アネッテ」
トーラ先生が言った。
「その子は、神の子供だ。私たちの子供だ。恥じることはない。君が望むなら、末席から君の名を外そう。だが、去ることは許さない。ここに居なさい。私たちと共に」
トーラ先生。
あたしは思わず涙が出そうになった。
兄さんたちは先生の言葉に頷く。
ありがとうございます。先生、兄さんたち。
でも。
あたしはトーラ先生の右隣に座るメイヤ兄さんを見た。
兄さんは黙ってうつむき、テーブルを見つめていた。
そうよね。
罪悪感に苛まれるわよね。
もしかしたら、自分の子なんじゃないか、て。
……100パーセント、兄さんの子、なんだけどさあ。はは。
……ごめんなさい、笑いごとじゃないわよね。
……参ったわ。
私もまさかあの一回で出来ちゃうなんて思ってもみなかったし。
あー、あたしも罪悪感たっぷりよ。
兄さんに余計な憂いを与えちゃうなんて。
考えが足りなかったわよね。ごめんなさい。
兄さんにのせいじゃない。あたしの責任、よ。本当に、やっちゃったわ。
腹くくんないとね。……
あたしは背伸びして声を張り上げた。
「ありがとうございます。でも、私にはこの神の家にいることが耐えられそうにありません。どうか」
あたしは頭を下げた。
「破門にしてください」
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