第12話"きょうのにゃんこ"

 どてらねこのまち子さんは今日のにゃんこに取材されていました。今日のにゃんこは朝の情報番組で流れるねこの動きに密着した1コーナーです。その1コーナーにまち子さんが出ることになったのでした。

 まち子さんはいつも通りアパートを出ます。

「カット!」と監督から声がかかります。

 まち子さんは「うみゃみゃみゃみゃ・・・」と嘆きます。

「あのさ、猫なんだから、4足歩行で出てこないとさあ~」と監督は言います。でもまち子さんは二足歩行で歩く猫なのです。そしてどてらを着て、なんなら日本語を喋る猫なのです。それはどだい難しい話でした。

「あの・・・いつも通りって聞いたのですが・・・」

「それがまち子ちゃんのいつも通りなの?」

「はい・・・」

「やらせじゃない?」

「やらせじゃないです・・・」

「じゃあ、OK!」途端にOKになりました。テレビマンとはいい加減なものです。


 そしてまち子さんはいつものように商店街を歩いて行きます。すると、お肉屋さんに話しかけられました。

「あ、お肉屋さん」

「まち子ちゃん、いつものやつよ」とまち子さんはあつあつのコロッケをもらいました。すると「カット!!」と監督から声がかかります。

「うみゃみゃみゃみゃ・・・」

「まち子ちゃん、これ仕込んでない?」

「仕込んでないです・・・」

「あのさ、やらせとか今うるさいんだよね」

「仕込んでないです・・・」

「じゃあ、OK!!」途端にOKになりました。テレビマンとはいい加減なものです。


 まち子さんはそのまま河原に行って、先ほどのコロッケを食べ始めました。商店街から河原に向かっている途中でコロッケはいい感じに冷めていました。それをほくほくと食べていました。

「おいしい・・・」

「カット!!」と監督から声がかかります。

「うみゃみゃみゃみゃ・・・」

「そういえば、まち子ちゃん、ずっと語尾がにゃ、とかみゃじゃないね」

「あの、わたし、あんまり語尾がにゃとかみゃじゃないんですよ・・・」

「仕込んでない?」

「仕込んでないです・・・」

「今、やらせとかうるさいからね!」

「やらせじゃないです・・・」

「じゃあ、OK!!」途端にOKになりました。テレビマンとはいい加減なものです。


 するとでした。河から、ざぱーんと巨大な半漁人が現れたのでした。

 巨大な半漁人はずしーんずしーんと歩きながら、河原に向かってきます。

「うみゃみゃみゃみゃ・・・逃げなきゃ・・・」

「カット!!」

 監督が声を巨大な半漁人にかけます。

「うが?」

「誰よ!巨大な半漁人仕込んだの!?」

 監督がスタッフを見回しますが、スタッフは誰もうなずきません。そうです。巨大な半漁人は仕込みでもなんでもありませんでした。巨大な半漁人族はたまに人肉が食べたくなります。それが今日その日でした。

 巨大な半漁人は監督を掴みます。監督は「カット!!カット-!カットだって言ってるだろー!」と叫びますが、巨大な半漁人には伝わりません。

 そのまま、監督は巨大な半漁人に丸呑みされました。

 まち子さんは「うみゃみゃみゃみゃみゃみゃ・・・」と恐れ戦いています。

 その顔がドアップのまま、12月17日の今日のにゃんこは終わりました。

 その日の放送はクレームの電話がしゃんしゃんとなったそうです。

 内容は「やらせじゃないのか」ということでしたが、やらせは一切入ってなかったそうです。なんとも、世知辛い世の中ですね。

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