巫女さんえにしさま《ワンライ》

うらひと

001: 2017/10/07『傘』

 雨が降ることを思い出したのは、大学に向かうため電車に乗った直後だった。

 れんが周りを見れば、手首にかさをかけ、あるいはりたたみがさがカバンからはみ出ている人もいた。

「失敗したなあ」

 大学のコンビニでビニールがさが売れ残っていることを願いながら、り駅で降りた。

「げっ」

 しかし、学生たちも思うことは同じらしく、朝も早々に売り切れてしまっていた。

 さらには、せんたくものをベランダに干したままにしていたことも思い出す。

はくに電話する? いや、風邪かぜんでるのにちやさせたくないなあ」

あきらめるか……』とつぶやきながら、講義室へと足を運ぶことにした。

 と、そこでメッセージがスマホに届いた。

 ――洗濯物、部屋干しにしとくよ

 ――あと、サークルの部室にがさしてるから、それ使って

「……無理しなくて良いのに」

 それでも、表情はゆるんでしまう。

「帰りのお弁当は、少し良いものにしてあげよう」

 そう言って、蓮はまた歩き出した。

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