第53話ミカちゃんと僕の今後?
ミカちゃんからの勝利宣言を受け、僕は駆け足でミカちゃんの元へと戻って来ました。
「流石は子猫ちゃんにゃ。凄い戦いだったにゃ」
満面の笑みで迎えてくれたミカちゃんは、騎士団長が最初に見せた瞬間移動の技を見た時には驚き、僕の身を心配してくれていたようです。
「みゃぁ~」
僕はミカちゃんにお礼を述べると、未だに肩で息をして倒れている騎士団長の下へと向かいます。僕が近づくと、気配で察したのか騎士団長が上半身だけ起き上がり、
「それにしてもとんでもなく強ぇ猫だな!」
苦笑いを浮かべながら、そう言って褒めてくれているのはいいのですが、いいですか?
僕の名前は子猫ちゃんです!
「みゃぁ~!」
僕がそう言うと、何を言われたのか分らずに騎士団長は大口を空けてポカンとしてしまいます。僕の代わりにミカちゃんが説明してくれるようです。
「騎士団長さん、子猫ちゃんは――僕の名前は子猫ちゃんです。と言っていますにゃ」
そう言ってウインクしようとしてまたも失敗し、可愛く両目を瞑りながら説明してくれました。
「あはは、そうなのか……子猫ちゃんが名前なのだな。分った。以後気をつけよう!」
「みゃぁ~」
苦笑いを浮かべ騎士団長が約束してくれます。分ってくれればいいんですよ。でもミカちゃん、こんな奴にウインクは勿体無いです。
「さて、ミカ殿と子猫殿の試合も無事終わりましたし、夕食前に軽くお茶でも如何ですか?」
子爵様がそう言ってくれたので僕達は皆で食堂へと向かいます。向かう途中で子爵様が騎士達に『練習場の石は面白いからそのまま残すように』そう伝えていました。それを聞いた騎士団長が――。
「おいおい、サースドレイン子爵勘弁してくれよ……」
困った表情で騎士団長が子爵様に頼み事をしていましたが、
「この国最強の騎士団長が敗れた名勝負、の痕跡は残しませんと」
そう微笑みながら子爵様が語ると、騎士団長は深く溜息を付き『すきにしろ』そう短く吐き捨てたのでした。
食堂での話題は伯爵の話に移り、ミカちゃんも伯爵の被害者だと知ると、騎士団長もフローゼ姫も大いに同情し、激怒してくれていました。
「調書は読ませてもらったが……実際の惨状を目の当たりにした当人から話を聞くと、言葉も出ないな」
「まったくですわ。お父様を裏切る行動の数々、伯爵家の御取り潰しは免れないでしょうね」
騎士団長は痛々しい者を見るようにミカちゃんを見つめ、エリッサ姫も憤慨しながら伯爵家に対する罰の話を打ち出しました。
「それで、ミカ殿と子猫ちゃんはこれからどうするのだ?」
騎士団長が僕達に尋ねますが――。
「私達はエリッサちゃんと一緒に魔物を討伐するにゃ」
エリッサちゃんと見つめ合いながら、ミカちゃんは笑顔でそう言います。
「そうではなく、それだけの強さを持ちながら、いち冒険者でいいのか? と聞いておるのだ」
何故か真剣な表情で僕とミカちゃんを交互に見つめ騎士団長がそんな質問をしてきた。その気に成ればミカちゃんは先代の最高魔導師のエルドーラ様の後任に着く事も出来るし、僕は特別待遇で王の近衛に着く事も可能だとか……。
「伯爵の暴挙を見ても分るが、このアンドレア国は内外に敵が多い。ミカ殿と子猫ちゃんに王城に入って貰えれば、これ程頼もしい事は無いのだがな」
フローゼ姫からも真剣な面持ちでそんな事を言われたが、僕達はもっと強くなりたいのです。僕とミカちゃんはお互い見つめ合った後、ミカちゃんが代表で答えてくれます。
「私達はオーガと戦った時に、まだまだ弱いと思いましたにゃ。だからもっと色々な魔物を倒して強くなりますにゃ。だからしばらくは無理にゃ」
そう相好を崩しながらミカちゃんは説明してくれました。
その返答を聞いた騎士団長、フローゼ姫は落胆し顔を下げ少し思考した後で、ミカちゃんが語った、しばらくは、という部分に着目し――。
「しばらくは、という事はもっと強くなったら考えてもいいという事なのかな?」
最初に声に出したのはフローゼ姫でした。そして続いて騎士団長も、
「納得出来るまで精進出来たならいつでも王城にきてくれ。俺達はいつでも大歓迎だ!」
強面の顔を最大限に緩め、いつになっても構わないからと誘ってくれたのでした。
そして食事の時間になり、テーブルには豪華な食事が並べられ、ミカちゃんも僕も眼の色を変えてそれらの料理を食べている時に、明日からの伯爵捕縛に同行して欲しい旨を騎士団長から伝えられました。
この街に差し向けられた兵の数が1000を超えて居た事を警戒し、特に今回はフローゼ姫もいる事で彼女の護衛という立ち位置での提案でした。
特に僕達に異論は無かったのでその依頼を受ける事にします。報酬はちゃんと支払ってくれると言っていましたしね。
お腹が一杯になるまで夕食を食べた僕達は早々に寝室に戻り、明日の事もある事から簡単に湯浴みをし、早々に就寝しました。
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