第42話お披露目
翌日、エリッサちゃんも酒樽を用意してもらい、メイドさん、フェルブスターさん、そしてサースドレイン子爵が見ている前で取得した魔法の行使を披露しました。
エリッサちゃんが、掌を酒樽に向け、えいっ。と可愛く叫ぶと――氷の先が尖ったものが3つ、勢いを付けて酒樽に飛んで行き、着弾すると酒樽を粉砕しました。周囲の大人達もこれには驚き、皆、目と口が開きっぱなしの状態になります。
「どうです、お父様!」
エリッサちゃんが、サースドレイン子爵に駆け寄り自慢顔で見つめます。
「――。あ、あぁ。凄い。まったく我が娘にこれ程の才能があったとは。やはりミカ殿に魔法の教師をお願いしたのは間違いでは無かった様だ」
「ええ。これもお父様がお願いして下さったからですわ」
すると、サースドレイン子爵がミカちゃんに顔を向け、
「ミカ殿、有難う。まさか、昨日の今日でエリッサが魔法を覚えるとは、今でも信じられない思いがするが、こうやって実際に目にすれば最早、疑いようも無い。今後とも、娘をよろしく頼む」
「任せて欲しいにゃ。出来れば、街の外にも討伐に行ければいいにゃ!」
サースドレイン子爵は、少し考えた後――。
「それはミカ殿の方の問題が片付いてからならば許可しよう。今は、まだ王へ文を出した結果が出ていないのだ。迂闊に今、動けば……オードレイク伯爵が良からぬ事を仕出かすかも知れぬ」
まだ、ミカちゃんの件は終わっていなかった様です。いつに成ったら終わるのでしょう。
「分りましたにゃ。それが終わったらお願いしますにゃ」
「あはは、お願いしたいのはこちらの方なのだがね、ミカ殿。今後も娘の家庭教師に留まらず、友人としても仲良くしてあげてくれ」
そう言って、オードレイク伯爵はフェルブスターさんを伴って屋敷に入って行きました。
「お父様も喜んで下さいましたわ。これもミカさんのお陰です。本当に有難う」
そう言って頭を下げます。僕もミカちゃんも、エリッサちゃんだから教えたんです。お礼なんて要りませんよ。
「良かったにゃ。これからもっと覚えるにゃ」
「はい!」
これでミカちゃんの件が終われば、エリッサちゃんも一緒に狩りに行ける様になります。3人でその日を待ち遠しく思うのでした。
∞ ∞ ∞ ∞
――ここはオードレイク伯爵家
「あれから既に7日では無いか。お前達は何をやっておるのだ!」
「もう訳御座いません。サースドレインの街へ向かわせた間諜が3人行方不明になっておりまして……その調査にも人員を裂いておりますれば」
「なに!それは誠か?」
「はい。万一娘と猫に遭遇しても連れ去る事に力を注げと命じてあったのですが――以降、連絡が途絶えまして」
30半ばで神経質そうな優男の伯爵は、手指を握りこみ、親指と人差し指の間の空間に顎を乗せた状態でしばらく考え込んだ。
「よもや、サースドレイン子爵にばれたなどという事はあるまいな」
「申し訳御座いません。間諜が戻らぬ以上。分りかねます」
「ふん。最悪は全て獣人に擦り付けるとしようか」
既にサースドレイン子爵が証拠集めを終了させ、王へその詳細を報告した事を知らぬオードレイク伯爵は、自分の与り知らぬ場所で起きた事件だと言い張る気満々であった。
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