第27話お腹いっぱい!
――ここはオードレイク伯爵家――
「例の猫獣人の娘と、猫は見つかったのか?」
「いえ。申し訳御座いません。村からの街道に見張りを立てておりましたが、街道を通った形跡が一切御座いませんで……」
「我が領内は隈なく探したのであろう、それで居ないなら、サースドレイン子爵領に逃げたのでは無いのか」
「街道は、サースドレイン子爵領方面も見張って御座いました。これで、もしサースドレイン子爵領へと逃げたとなると、スライムの巣を通って潜入した事になります」
「では、スライムの巣を通ったのでは無いのか?」
「旦那様もご承知の通り、あの林はスライムの他、ゴブリン、オークの巣となっている為、一般兵士でも林の中へは入れません。あそこを通れる者が居るとすれば――それは最低でもCランクの冒険者で御座います。とても小娘と猫で通れるとは思えないので御座います」
「うむ、確かにそうじゃのぉ」
オードレイク伯爵は、鋭い眼つきの下の顎に手をやり、しばらく思考した後、
「既に他領へと逃れたとして、一番近いのはサースドレイン子爵領か……厄介な」
「サースドレインの街までは村から、街道を使えば2、3日の距離で御座います。万一、林を抜けられたとすれば――1、2日でしょうか」
スライムの巣を迂回する形で、街道がある為に、伯爵達の計算にずれが生じていたのである。
また、話に出ていたサースドレイン子爵は、この国で無難な国王派の派閥に入っており、オードレイク伯爵は野心からか、貴族派の勢力に属していたのである。
万一、事が国王派の派閥に知られれば、陛下よりお咎めが来る。今生陛下は民があってこその国であると常々配下の者に伝え善政を敷く王である事から、オードレイク伯爵の様な、村人を殺戮し、私腹を肥やすやり方を殊の外、嫌っていたのである。
「何とか成らんのか!」
「サースドレイン子爵領にも諜報は放っておりますれば、連絡が来るまで後、2、3日は掛かるかと……」
「今は時間が全てだと言うに――」
もどかしく思う、オードレイク伯爵であった。
∞ ∞ ∞ ∞
ミカちゃんと僕は、宿屋へと戻ってきました。
「おかえり、今日も晩御飯は大盛りでいいのかい?」
「はい、沢山おねがいしますにゃ~」
ミカちゃんも、今日は沢山歩いて疲れたのでしょう。食欲が旺盛な様です。
「子猫ちゃんも今日も沢山、食べるにゃ!」
「みゃぁ~!」
今日は怖い思いもしましたから、それを吹き飛ばす位、沢山食べましょう。
「はいよ、今日はオーク肉のステーキと野菜炒めだ。パンとスープの御代わりは自由だからね」
「有難う御座いますにゃ」
僕とミカちゃんは、時間をかけて沢山のお肉と野菜を食べます。僕は、スープは冷めないと飲めないので、後回しです。
ミカちゃんも、僕も笑顔でいっぱい食べました。
やっぱり、骨と比べるとお腹に溜まりますね。
お皿の上にあった料理は昨日よりも多く、食べ終わると――僕のお腹もミカちゃんのお腹もポッコリ膨らんでしまいました。
「子猫ちゃんのお腹凄い事になっているにゃ~!」
「みゃぁ~みゃぁ~!」
何言っているんです!ミカちゃん、自分のお腹を見てから言って下さい!
どっちもどっちなのですが……2人でそれぞれのお腹を突っついて、遊んでいました。
「おや、今日も沢山食べたねぇ~もっと食べられるかい?」
流石に、これ以上は無理そうです。
「子猫ちゃんも、私もお腹がこれですにゃ~。今日はもう食べられないにゃ!」
「あははは、若いのに、あたしみたいになったら大変だね!」
おばさん、ミカちゃんは大きくなっても、おばさんの様にはなりませんよ!ちゃんと毎日、運動していますから。
今日も、美味しい料理をお腹いっぱい、食べられて幸せな気分で、宿屋の階段を上がっていったのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます