子猫ちゃんの異世界珍道中
石の森は近所です。
第1章 はじまり編
第1話はじまり
僕の名前は子猫ちゃんです。
たまに間違えて『猫ちゃん』とか『タマちゃん』とか言われます。
でも。僕の名前は子猫ちゃんです。
僕が物心付いた時には、もう橋の下の箱の中に居ました。
そんな僕を寒空から、
温かい床下に誘ってくれたのは――。
真っ白な髪の毛の優しいお婆さんでした。
お婆さんはいつも僕を呼ぶ時に『子猫ちゃん』と呼んでいました。
だから僕の名前は子猫ちゃんです。
間違えて貰っては困ります。
そんな僕の毎日の日課は、
お婆さんと初めて会った橋の下に何か置いて無いか?
見に行く事と、
お婆さんの家の縁側での日向ぼっこです。
たまに近所の子が、
「タマちゃん遊ぼう」
と言って来ますが、子供の相手は疲れるので無視します。
中には、僕の尻尾を力強く握る不届きものも居ます。
だから子供は嫌いです。
今日も、橋の下に行こうとお婆さんの家の前の道を歩いていると、
目の前で人が乗った箱が大人の猫を踏んづけているのを目撃しました。
あれはもう助からないでしょう。
お婆さんはいつも言います。
「子猫ちゃん、道を歩いたらあの車には気をつけるんだよ」
僕は賢い子猫ちゃんなので、お婆さんの言っている事が分ります。
毎日の僕のご飯はお婆さんが用意してくれます。
散歩していると近所の犬の餌を狙って、
犬に懲らしめられている大人の猫をよく見かけます。
あれは間抜けな猫です。
あの餌は犬の為の餌ですから。
お婆さんが僕に出してくれる餌を狙って来る猫もたまに居ます。
でもこれは僕の餌です。
僕が威嚇すると逃げていきます。
だから僕は強い子猫ちゃんです。
お婆さんは言います。
「子猫ちゃんはかわいいわね」
と――。
だから僕は強くて可愛い子猫ちゃんです。
僕の毛並みはお婆さんがブラッシングしてくれているので、
艶々です。
僕の自慢の毛並みです。
他の猫は茶色と黒の毛で虎猫と言われています。
僕は白に灰色の毛なのに虎猫と言われる事があります。
まったく失礼な話です。
僕は、強くて可愛い子猫ちゃんで、毛並みは艶々で綺麗な色なのです。
そんな僕に転機が訪れました。
僕が橋から戻ると、お婆さんの家にたくさんの人が来ていて。
お婆さんは寝かされたまま、黒い箱に乗せられて出かけてしまいました。
僕の夕飯はまだなんだろうか?
心配です。
所が、いつまで経ってもお婆さんは帰ってきません。
僕はいい子にしてお婆さんの帰りを待っているのに……。
その次の日も、次の日も帰ってきません。
とうとう僕はお腹が空いて仕方が無くなったので探しに出かけます。
出かける先は当然、橋の下です。
たまにここには鼠が出ます。
お婆さんのご飯と比べると不味いです。
でも僕はそれだけお腹が空いていたのです。
鼠を追いかけて居るときに穴の中に入ってしまいました。
明るくなったと思ったら、辺り一面が花畑でした。
あれ?
こんな場所知りません。
初めて来ました。
おうちに帰りたい。
お婆さんのいるお家に……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます