バックナンバーズ 第1話『瞬き』(2/3)

次に日、俺はぼんやりしながら教室にいた。

「おいどうしたんだよ一哲」

友人である安藤が話しかけて来ても上の空だった。

「いやー、昨日いいもの見ちゃってさー」

俺は昨日見た少女の話をした。しかし安藤は怪訝そうな顔をした。

「映画の見すぎで脳が…」

「違う!」

「それとも幽霊でも見たか」

「違うっての!」

「いやー、しかし一哲くんがついに女の子に興味しめすとは…君が相手するのはフィルムの向こう側の人だけだと思ってたよ」

「人をなんだと思ってんだお前は」

しかし、意外とそうかもしれない。

俺が一番美しいと思っているのは吉永小百合だし、石原裕次郎を超イケメンだと思っている。そんな俺が同年代の子に興味持つのは初めてかもしれない。

「で、その子可愛かった?」

「うん?いや、よく見えなかった」

「はぁ!?なんで見てねーんだよ?」

「いや、雨降ってたし…」

「追いかければいいじゃん」

「傘もって無かったし…」

安藤は口をあんぐりしたあと、大きなため息をついた。

「お前さ…そいつが実はブッサイクだったらどーすんの?ただの寒い女だぜー」

そういうもんかね。別にそこまで執着するようなことではない気もするが。

「おそらくそんな女はリストカットしてるね、間違いない」

かなり勝手なプロファイリングが展開されていた。この人こわっ…。

そんな事があって三日後自体は安藤のおかげで急転する事になる。

昼休み。トイレに行こうとすると、突然安藤がタックルをしかけてきた。

「何すんじゃボケっ!」

キレる俺には安藤がニヤニヤした顔で答える。

「おいおい一哲さんよー、見つけちまったぜ俺はよォー」

「なんだきもっ、何の話だよ」

「例の雨の女の子だよ」

俺は一瞬ハッとした。

「…見つかったのか?」

安藤はコクリと首を縦に振る。ちなみに俺は探してくれとは一切頼んだ覚えは無い。

だが、俺の胸は高鳴っているのを感じた。

しかし実際に行くとなると…。

「いや、いいよ俺興味ないし…」

「……」

俺は安藤に引きずられていった。


「いやー、犯人は実に意外だったよワトソンくん」

何がワトソンくんやねん。

安藤が連れてきたのは1年の教室だった。そこから覗き込むように言われ見た先にあったにはカバンだった。

あの時見た黄色クマのキーホルダーだ。

「どうやら当たりだった様ですな。苦労したんだぜー、なにせなかなかプーさんのキーホルダーつけてる女が居なくて…」

安藤の苦労話を流して聴きながら、俺の胸の鼓動はさらに高鳴る。

「おい、どんな子だった?」

「いやぁ、実は顔をまだ拝んで無いんだよ。見つけたのはあのカバンだけ」

相手はどんな子かわからない…鼓動がさらに早まる。

俺は周囲を見舞わたした。栗色のロングヘアーの子…該当するのは数人いる。あの子とあの子だったらいいな…けどカバンに一番近いあの太っちょだったら嫌だな…あとなんか井戸から出てきそうな本読んでるメガネだったら怖いな…。

目をギラつかせて見ている先輩二人に、後輩は怪訝そうな目を向けていた。

どのくらい時が経ったのか。そろそろ昼休みも終わるので帰らなければならないが、席にはまだ相手は来ない。早く…いつになったら現れる…。

と思っていた瞬間、俺は何者かに蹴られ、頭から地面に突っ込んでいた。

「邪魔」

安藤が駆け寄る。

「いってつくーーん!!」

鼻血は出ていないが額を強くうった。何事かと振り向くとそこに居たのは女子だった。

しかも、ゴリゴリのギャルだった。

めっちゃ目つきこえー!人を見下した目は先輩への尊敬の眼差しはなく、着崩した制服は相手を威嚇している。

学校のヒラエルキー的に平均より下にいる俺達には手の余る相手であることは明白だった。

「す、すんません…」

すっかりびびってしまい、後輩相手に敬語を使ってしまった。すごすごとどくと、ギャルはズカズカと教室に入った。

そして、例の席に座った。

「…は?」

俺と安藤は顔を合わせて驚いていた。

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