第169話緊急クエストの結末
モンスターはオークにゴブリン黒い牛に大きな鳥と様々いた。
「・・・はぁああああ!!「乱れ切り」「かまいたち」!!」
僕はモンスターの群れとぶつかる直前にスキルを放ち正面にいたモンスターを攻撃する。
「・・・は?」
しかし全てモンスターに当たったというのに一匹も倒れなかった。
ゴブリンは弱いモンスターのはず。
その疑問を残しながら僕は正面にいたオークの攻撃を躱し足を斬りつける。
オークの悲鳴を聞きながら僕は左右にいるゴブリンの首を跳ね、次に来た牛の足の下に滑り込み腹の下から縦にに切り裂いていく。
牛が光となって消え僕が立ち上がる時に左右で爆発があった。
恐らく街の方からの援護射撃だろう。
僕は街に近づく魔物を一体でも多く減らそうとその場のモンスターの中央で踏みとどまり剣を振るい続けた。
止まることのないモンスター、斬っても斬っても現れるモンスター歯を食いしばりながら無心でひたすら戦っていく。
一瞬後ろを振り返るとモンスターはちょうど街の外で待機していた住人とぶつかった所だ。
が、モンスターは皆が守っている入り口だけでなく横にそれ、他の入り口の方からも街に入ろうとしていた。
今冒険者が固めている入り口は一つで、他は無人のはず。
小さな城壁と小さく薄い木の橋で守られている扉はあの大群のモンスターがぶつかればひとたまりもないだろう・・・。
「・・・くそ!!」
僕は近くを通りかかった牛の背に乗り一気に他の城門に近づいていく。
牛は僕にかまうことなく走りつけたためすぐに門に近づくことが出来た。
僕は牛を切り裂きながら降り、木のでできた上がった橋の壁にぶつかってるゴブリンたちを一気に切り裂いていく。
が、ここにいるのは僕一人だ。
見渡す限りのモンスター相手にいったいどれだけ持つのだろうか・・・。
モンスターの半数は街を通り越してそのままどこかへ走っているようだ。
しかしそんな事に気を回している余裕はない。
僕は目の前で大きなこん棒を振り回しているオークの足を切りつけ思いっきり足を蹴る。
するとオークは倒れて道をふさいでくれ、僕は腰にかけていたナイフでオークの肩を思い切り刺し地面に固定した。
・・・これで何秒持つは分からないがとにかく今は時間が欲しい・・・。
オークを避けながら走って来るモンスターたちを全て切り裂いていくがだんだんと僕は壁際にまで追いやられてしまった。
気づけばすでに先ほどのオークは立ち上がり怒りのままにこん棒をぶん投げてきた。
「・・・な!?・・・がっ!!」
何とかそれを受け止めようとしたがあまりにも大きなこん棒を受け止めきれず僕はこん棒と共に木の橋を突き破り街の中へと吹き飛ばされてしまった・・・。
「・・・しまった・・・。門が・・・。」
HPは残り半分となり、モンスターが街の中へとなだれ込んでくる。
後ろを振り返ると反対の門からはすでにモンスターの群れが入り込んでいて、逃げ惑う人々、モンスターにやられて光となっていく人々・・・。
そこはまるで地獄絵図のようになっていた。
僕は歯を食いしばり今度は協会の方へと走っていく。
そこには沢山の人が避難しているはずだ。
そこの入り口だけでも死守しなくてはならない。
急いでいる為自分を回復することが出来ず、道行くモンスターを斬りつけながら必死に走る。
が、目の前でどんどん人々がモンスターにやられていき、僕は気づけば泣いていた。
何のできない無力さ、悔しさ、助けられない歯痒さ・・・。
それでも前を見て僕は協会の入口へとたどり着く。
子供たちや、女性、老人などが必死に協会の中へ入ろうと押し合いをしながら入っていって行ってるのをノアが一人で誘導をしていた。
「・・・ウィル君後ろ!!」
僕に気づいたノアが叫び、僕も「空間把握」により気づいたオークの攻撃をしゃがんで躱し、「ジャンプ」しながら振り向き首を切り落とす。
そのままこちらに向かってくるモンスター達と戦っているとその群れの中から沢山の人たちが現れた。
その中にフライパン片手に戦っている女性がいることから門の前で戦っていた冒険者たちだとわかる。
すでにその人数は3分の1ほどになっていたが・・・。
「・・・坊や!!協会だけは何としても死守するよ!!」
「・・・!!・・・はい!!」
よく見ると女性は戦いながら泣いていた。
その表情と言葉から何が起きたかは想像できた。
すでにこの町で守るべき場所は、守るべき人々は、教会しか、教会の中にいる人々しかいないのだろう・・・。
僕らは協会を囲うように円になりながら戦っていく・・・。
「・・・くそ!!??」
「が・・・助けて・・く・・・。」
「・・・がはっ・・・畜生・・・。」
「・・・あとは・・・まかせた・・・。」
一人、また一人と冒険者たちはモンスターにやられ光となって消えていく・・・。
それに対してモンスターの数は数えきれないくらいそこら中を動き回っている。
くっそ、悔しい・・・。
僕はもう何もできないのか・・・?
僕は家族を守るために、大切なものを守るために小さいころからジィジに鍛えてもらってきた。
今回は家族ではないけど、それでも目の前にいる人々、周りにいる人くらいは助けたいと思っている。
それなのに・・・。
消えていく・・・。
また一人・・・、また一人と・・・。
手を伸ばせば届きそうな距離にいるのに・・・、僕は彼らを助けられない・・・。
それが悔しく、自然と涙が溢れてくる。
今は涙は邪魔なのに・・・、止めることが出来ない・・・。
無力・・・。
その二文字が頭をよぎる・・・。
「・・・くそ・・・!!・・・がっ・・・!?・・・なん・・で・・・?」
「・・・すまない。君だけでも助かってくれ。指輪を持つ君たちなら・・・。」
目の前のゴブリンを倒した時、突然後頭部に衝撃が走り目の前に「気絶」の文字が浮かぶ。
倒れ薄れ行く中でゴブリンの剣によって腹を貫かれているサンドイッチの女性アッシェと目が合い、次に僕の後ろでこん棒をもって立っているノアと目が合う。
ノアが僕の頭を殴った張本人という所まで理解し・・・、目の前が真っ暗になってしまった・・・。
・・・頭が痛く重い・・・。
がちゃぐちゃ、と何か音がするのは理解したが・・・、僕はまだ目を開けることが出来ないでいる・・・。
・・・もういっか・・・。
・・・少し疲れたな・・・。
・・・僕はなんでここで寝てるんだっけ・・・?
・・・まぁいい・・・。
・・・もう少し眠ろう・・・。
・・・ゆっくりと頭がクリアになっていき、ゆっくりと目を開ける・・・。
・・・目の前には沢山のワインが並んでいた。
この光景は知っている。
僕らが村長とノアに貸してもらってる家の裏庭にある地下の倉庫だ。
・・・なんで僕はここにいるのか、しばらく頭が回らなかったが突然現在の状況を理解する。
・・・ノアが僕を助けるためにここまで運んできたのだ。
・・・戦えないくせに無理して・・・。
僕は最後に見たアッシェの顔と、ノアの顔を思い出す。
・・・僕は頭を振り考えを振り払い、立ち上がり地下から出る。
そこには4匹のゴブリンが何かを食べているところだった。
・・・そしてその中央には血と砂で汚れた神官服が落ちていた。
・・・誰かの叫び声が聞こえ、ゴブリンは驚きこちらを見て固まっている。
・・・そう、そこ声は僕が無意識に叫んでいる声だった。
・・・ノアは僕を運んだ後、ゴブリンに殺されたのだ・・・。
そこからはあまり覚えていない。
兎に角町中を走り回り、モンスターを殺して回り、探した。
誰かを、誰か知らないけど誰かを探し回った。
・・・誰もいない、モンスターだらけの道を僕は剣を振るいながら走り回る。
街を一周して、教会にたどり着き僕は絶望する。
協会の扉は破られ中にはモンスターが溢れていた。
僕は叫び協会の中のモンスターを殺して回った。
そして見てしまった。
地下へと続く扉が開かれ、その中にも魔物がいるのを。
僕は再び中に入り全ての魔物を殺した。
が、そこには人は誰もいなかった・・・。
僕は絶望に駆られ、気づけばしゃがみこんでしまっていた。
・・・あんなに楽しい毎日だったのに・・・。
僕の中で何かが崩れてしまった。
・・・その時僕の腹に違和感を感じる。
後ろからゴブリンに剣で貫かれたようだ。
・・・だがそんなことはどうでもよかった。
僕は結界破壊魔法を練習したこの部屋をゆっくり見まわし・・・、そして僕は死に戻りした。
・・・戻った場所は始まりの街だった。
僕はすぐさまダイブアウトした・・・。
・・・僕はベッドの上で何も考えられず、そして気づけばこちらでも泣いていた。
・・・爺さんはなんでこんな辛いクエストを造ったのだろう・・・。
・・・こんな想いを何でしなくてはならないんだ・・・。
・・・何度も考えたが結論は出なかった・・・。
「・・・お兄ちゃん~~?帰ってきた~~?ユイお腹すいた・・・。お兄ちゃん泣いてるの?」
部屋に入ってきたユイの声。
なんだかすごく懐かしく感じる。
僕を心配してこちらに来たユイを僕は無言で抱きしめる。
「ちょ!?お兄・・・ちゃん?・・・よしよし・・・。」
ユイはわけも聞かずに僕の頭を撫でてくれた。
妹に頭を撫でてもらうなんて・・・とも思ったがここは素直に甘えさせてもらう。
気づけば僕はユイの胸の中で大きな声で泣いていた。
僕の声が聞こえたのか部屋には皆集まってきていた。
・・・みんな何も言わず僕の事を抱きしめ、撫でてくれた。
・・・気づけば僕は眠りについてしまっていた・・・。
次の日の朝はいつものランニングにはいかずに、皆も早起きしてしてくれてテーブルで昨日の話をした・・・。
「・・・・・・・つまりもうアニの街は・・・。・・・ごめん・・・。」
「お兄ちゃんが謝ることじゃないよ・・・。」
「そうね。やーちゃんが謝ることではないと思う。」
「うむ。AOL最強の弥生が何にもできなかったなら他の誰にも何もできなかったと思うぞ?」
「ん。でもおじいちゃんはなんでこんなクエストを・・・?」
「・・・そうね・・・。でも私はいつかはこういったクエストがあると思っていたわ・・・。」
優しい朝日がカーテンから差し込みクーラーの効いた部屋は涼しく快適だった。
すでに7月に入っておりもうすぐ夏休み。
外からはどこにいるのかわからないが蝉の声が鳴り響いていた。
「香織、予想してたの?」
「予想と言うか・・・。まぁそうね。「人生」において戦争や内乱、・・・特に誰か死んでしまうことはあるはずなの。そう言ったことが苦手でも人はいつか死ぬ。そしてその事を避けては通れないの。だからいつかは重要キャラが死んでそれに立ち向かわないといけないとは思っていたわ。・・・でもその時に弥生一人にしてしまっていたことは・・・。悔しいわ・・・。」
「・・・そうなんだ・・・。でも確かに「人生」を考えるゲームなら避けては通れないクエストだったのかもしれないな・・・。でも・・・。助けられたんだ・・・。きっと・・・。何か方法はあったんだ・・・。」
「・・・お兄ちゃん・・・。」
「・・・それは違うと思うぞ?恐らくそう言う句エスタだったのではないか?」
「・・・ん。私もそう思う。」
僕の言葉に千沙と絵里奈が異を唱えた。
他の皆も頷き同意を示している。
「クエストの条件が「生き残ること」・・・。そして弥生を叩いた相手がノア本人だったこと・・・。つまりある程度生き残ったらノアが助けてくれる仕様になっていたのではないか?」
「ん。同意見。ノアが「指輪を持つもの」に何かを託したんだと思う。」
「・・・ねぇ。今日もう一回アニの街に行ってみない?何か見つかるかもしれないし・・・。」
「確かにねー。ノアは何か隠している気がする。」
「私もそれには賛成。何かあるわきっと。」
それからも僕らは学校の時間までノアの事、アニの事について色々な意見を言い合った。
・・・僕は本当に運のいい男だ。
僕の周りにはこんなにも真剣に話を聞いてくれて、支えてくれる家族がいる。
そのことがうれしくて僕は少し心が軽くなった気がした・・・。
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