イベント「サバイバル島」

第118話イベントまで・・・。その1

「しかしアイテム50個かぁ・・・。何にする?」

「とりあえず回復役が2人いるからポーションは少なくていいんじゃない?」

「マナポーションは多めに持っておいた方がいいよねぇ。」

「ん。MP残量管理は大事。」

「となるとハイポーション10個のミドルマナポーション20個かしら・・・。」


月曜日。

装備のない僕らはラフな格好でホームでくつろいでいた。

今日からはイベントに向けての準備だ。

LV上げはしない。

僕はLV70になり、皆も似たようなものだ。

現在攻略組で一番進んでいる「悪魔結社」でさえLV60になったばかりだ。

まだまだ焦る段階ではない。


「あと20個かぁ・・・。」

「フランジェシカに相談してみる?」

「さんせー!何かいいアイテムがあるかもしれないし!」


ということで、地下にある生産所、錬金術部屋に行ってみた。


部屋に入ると小さな本棚にきれいに本が並び、その隣にある小さな机で、フランジェシカは何か作業をしていた。

部屋の中心にちゃぶ台のような丸テーブルがあり、そこでスノウがゴリゴリと何かを削り、その横でノエルが丸まっていた。

しかしこの部屋に入るのは初めてかもしれない。

委員長らしく綺麗な部屋だ。

とりあえずスノウとノエルを撫でておこう・・・。


「くま~~。」

「にゃ~。」

「うりうりううり・・・。今日も二人は可愛いのぉ。」


僕が撫でていると皆も近寄ってくる。

「ん。ノエルにゃ~。にゃ?にゃ~~。」

「ノエルのこの尻尾モフモフだ~~。」

「スノウ~。あ~~この全身モフモフたまらないクマ~。」

「ふふっ。ノエルと戯れてるウィルとエリーゼ。よだれ出そう・・・。」

皆各々に楽しんでいる。

幸せな時間だ・・・。

リアルでは動物は飼えないし(面倒見ている時間がないから。)クマなんて抱き着いたりできないからなぁ・・・(一撃で殺されてしまうから。)。

うりうりうりうり・・・・・・。


「ねぇちょっと。私に会いに来たんじゃないの?さすがに少し寂しいのだけれど・・・。」

フランジェシカが僕らにしびれを切らして話しかけてくる。


「ん?あぁ、ごめんごめん。ついつい二匹が可愛すぎてつい・・・。」

「もう・・・。まぁいいわ。それで?何の用事?」

「それがね・・・。」


フランジェシカは少し感があた後、あるわよ、と答える。


「この前ウィルにもらったレシピ本から開発したのがいくつか形になったからそれを持っていきなさい。」

「助かるよ。何があるの?」

「といってもあまり量と種類はないの。まだ時間が足らなくてね。あと条件があるわ。」

「条件?」

「そう。条件。ウィルの髪の毛を一本頂戴!!」

「・・・は?髪の毛?」

「そ。髪の毛。」


何に使うんだ・・・?そんなもの・・・。」


「あと薬の実験台になって!!」

「それは却下「いいよー!!」おいっ。」


僕が嫌な予感がして断ろうとしたとき、アイリスが元気よく了承する。

こいつまだフランジェシカの危険性をわかってないな・・・。


「ふふっありがとう。じゃあまずアイテムからね。この前見せた「スパイダーネット」と小型爆弾が完成したのよ。といってもそこまでの威力はないけどね。」

「おぉ!!それはすごいねー!!試しに使ってみていい!?」


アイリスが大げさに両手を上げながらピョンピョン跳ねて、喜んで見せる。

・・・ったくまだまだ子供だな・・・。

まぁそこがまた天使みたいに可愛いんだが・・・。


「ふふっいいわよ。地下二階の鍛錬場に行きましょう?」


とりあえず、鍛錬場にみんなで移動する。


鍛錬場には藁でできたかかしがいるだけの簡単な部屋だ。

サッカーコートの半面くらいの大きさの部屋の中心に集まる。


「ウィルには見せたけど、まずは「スパイダーネット」ね。使い方は簡単。この玉に魔力を流して3秒後には網になって広がる仕組みよ。えいっ!!」


テイラーが玉を投げるとボンという音がし、人4人ほどが捕まえられそうな大きさにまで広がった。


「おぉ。前より大きくなったね。」

「ふふっ。でしょう?頑張ったんだから。」

眼鏡を片手で上げながら、フランジェシカは自慢げな顔をする。


「そしてこれが「プチボム」。使い方は一緒よ。えいっ!!」


今度は先ほどよりも大きな音がし、藁のかかしを破壊した。


「「「「・・・・・・・・・・・・・。」」」」


あまりの威力に僕らの開いた口が塞がらない・・・。


「ふふっ。大成功ね。そのリアクションが見たかったのよ。でも見た目ほどダメージはないのよ。」

「いやいやいや。かかしが吹き飛んだけど・・・。」

「あれはすごく脆くできているの。ダメージ的に言えばウィルの本気の一撃の方がはるかに高いわ。割と見た目だけの武器なの。それに爆発から半径3mまでは一律のダメージを与えられるけど、そこから離れるにしたがってダメージが小さくなるのよ。やっぱりそこはシステム的なダメージしか入らないみたい。まぁゲームだから仕方ないんだけどね。」


フランジェシカはわざとらしく肩をすくめる。

・・・しかしそれでも十分な威力はあると思う。

攻撃だけでなく、牽制などにも使えるみたいだし・・・。


「すごい!すごいよフランジェシカ!!アイリスインペントリいっぱいにそれにしたいな!!」


お前は何を破壊する気だ?

爆弾50個って、テロでも起こす気か?


「ありがと。でも残念ながらこれは一人10個が限界ね。作るのに結構時間かかるのよ。それに私たちの分が足らなくなってしまうしね。」

「えっ?フランジェシカもサバイバル参加するの?」

「もちろん。カンパニー生産組も皆参加するわ。まぁあなた達とは楽しみ方が違うと思うけど。」

「楽しみ方って?」

「あなた達はきっとフィールドを駆け回って攻略を目指すと思うの。それに対して私たちは、素材採取や、キャンプなんかをしようかと思ってね。」


なるほど・・・。

確かにイベント限定の素材なんかも多くあるだろうし、そんな楽しみ方もあるのか・・・。

しかしキャンプかぁ・・・。

楽しそうだな。


「キャンプ!?いいなぁ・・・。アイリスたちも参加したい!!」

「そうね。夜疲れたら集まってやろっか。でも生産組だけいたら危険なんじゃないの?PKとかもありそうだし・・・。」

「そこは大丈夫よ。レヴィの知り合いの「鏡花水月」の生産組も一緒にキャンプすることになっているの。」

「「鏡花水月」?」

「あら。ウィルは知らなのね。「鏡花水月」は「カンパニー」クランや「青龍騎士団」クランに続くトップクランよ。そこのクランは変わってて、皆和装なの。」


和装か・・・。

刀とか浴衣とかなのかな・・・。


「確か「鏡花水月」のリーダーて鬼人って言われている人よね。」

「そうよ。だけど女の人なのよ?自分でそう呼ばれたいからって。」

「変わった人ね。」

「まぁでも戦闘狂らしいけどね。あと最近新しいサブマスターが決まったらしいわよ。」

「それは「鬼の副長」じゃなくて?」

「ええ。「炎の九尾」って言うらしいんだけど、私もまだあったことはないわ。」

「九尾!!狐さんだね!!モフモフさせてくれるかなぁ・・・。」

「優しい人だからさせてくれるんじゃないかしら?」

「でも和装かぁ。私たちも欲しいわね。」

「作ってもらいましょうよ。何色にする?」

「ん。私は・・・。」


ガールズトークが始まってしまった・・・。

完全に僕は蚊帳の外だ・・・。

話が始まったら静かに見守るのが男の仕事だろう・・・。

とりあえず素振りでもしているか・・・。


ヒュ・・・ヒュ・・・。


「でねぇ~・・・。」

「だよねぇ・・・。」


ヒュ・・・ヒュ・・・。


待つこと30分。


「わかるわかる!!」

「でもさぁ昨日ね・・・。」


ヒュ・・・ヒュ・・・。


待つこと1時間・・・。


「・・・だね!あれ?お兄ちゃんは?」

「あそこで素振りしてるわよ?」

「真面目ねぇ。じゃあウィルも飽きてきたみたいだしアイテムの話にしましょうか。」

「ん。そうしよう。」


やっと終わった・・・。

だが話が長かったという風な顔をしないのも男の仕事だ。

きっと彼女たちからしたら、今の会話は5分くらいにしか感じていないのだろう・・・。

何せ「飽きてきたみたいだから」と言っていたしな・・・。

こっちは1時間も前から素振りしていたのに・・・。

男はつらいよ・・・。


「ごめんごめん。話についていけなくて・・・。」

「こっちこそごめんね。話が盛り上がっちゃって・・・。」

「ん。お待たせ。」

「じゃあアイテムを決めてしまいましょうか。」


結局他のアイテムも見せてもらったが、実用性はあまりなく、ボムとスパイダーネットを10個ずつもらった。


これで回復薬系30個に補助アイテム20個になった。

「さてさて、ここからが本題です。はい。ウィルこれ飲んで?」


フランジェシカが黄緑色の玉を僕に渡してくる。

その顔は確実に何か企んでいるような顔だったことから、僕は躊躇してしまうがアイリス達の期待のこもった眼差しに負け飲んでしまう。


「・・・がっ!?体が・・・。これって・・・。」


以前感じたことのある体の熱さ。

高熱を出した時の体のだるさと、熱っぽさに思わず座り込んでしまう。

きっと頭脳は大人で、体は少年の子もこんな感じで小さくなったのだろう・・・。


「・・・どうなった?」


「きゃぁああ!!お兄ちゃんが、おねえちゃんなった!!」

「ん。とりあえず抱き着くね。むぎゅ。」

「やーちゃん可愛いわ!!すごくいい!!」

「あら。これはこれでいいわね・・・。男の娘ね・・・。」


・・・みんな何を言っているんだ・・・?

と思っていた時エリーゼが抱きしめてくる。


・・・あれ?

僕は違和感を感じ下を向く。


「・・・はぁああああ!?・・・あ、でもある。」


そこにはなかったはずの膨らんだ胸があり、だが股間にはしっかりと息子はぶら下がっていた。


「ん~~。やっぱり下はまだ無理か・・・。ウィル。少し触らせて?」

「何をだ。やめなさい。息子が怖がっているだろ。」

「後学の為よ。観念しなさい。・・・あら?結構大きい・・・。それに柔らかい・・・。」

「揉むな!!ん・・・。エリーゼも・・・。あっ・・・。胸を揉むんじゃない!!エリザベスは離せ!!」


僕は逃げようとしたがエリザベスに背中から抱き着かれ逃げられないでいた。

その後アイリスが抱き着いてきて僕と、僕の息子はもみくちゃにされた・・・。


「はぁ・・・・はぁ・・・。二度と・・・。二度とこんな薬飲まないからな・・・。」


10分後。

何とか胸は元の大きさに戻る。

その時気づいたが、髪の毛も伸びていて、肩幅も少し狭くなっていたようだ。


「ふふっ。男の子ってそうなってるのね。いい勉強になったわ。」

「リアルだったら完全に逮捕されてたぞ・・・。」

「あら。こんなきれいな女の子たちに触られるなんて幸せな事じゃない。・・・っと。次は私ね。」


フランジェシカはそう言い、自分も何かを飲み込む。


「ん・・・。体が・・・。あ・・・・。きついわねこれ・・・。」


苦しみ悶えたフランジェシカはどこか色っぽかった。

・・・じゃなくて、だんだんと肩幅が大きくなり、胸もだんだんとしぼんでいった・・・。


「・・・ふう・・・。結構きついわね、これ。・・・でもやっぱり下の方は生えないか・・・。声も全然変わってないし・・・。」

「女性が自分の股間をまさぐるんじゃない。」


フランジェシカは男とも女とも取れない体系になった。


「・・・まだまだ全然だめね。大事なものがないもの。」

「フランジェシカ・・・。やっぱりそこを目指していたのね・・・。」

「男の子になる薬かぁ・・・。ちょっと興味あるな・・・。」

「ん。立っておしっこしてみたい。」

「確かに面白そうね。完成したら一個頂戴ね?」


皆何となく興味が出始めていた。

フランジェシカ怖い子・・・。


「なぁ・・・。それってもしかして僕の髪の毛が入っていたりするのか?」

「あら、よくわかったわね。そうよ?これはなりたい相手の毛を入れて飲むことで完成する薬なの。」

「ん。私猫になれる?」

「猫にはなれないけど、猫族にはなれるわ。やってみる?」

「ん。やる。」


やるんかい。

まぁエリーゼならやりそうだな。


他の皆も興味を持ったのか、皆で薬を飲むことになった。

・・・何故か僕は二回目だが・・・。


「アッツ・・・!!お兄ちゃん・・・熱いよぉ・・・。ん・・・。」

「あ・・・。これキッツ・・・。ん・・・。あ・・・。」

「ん。・・・あっつい・・・・。焼けるみたい・・・。」

「確かに・・・これは・・・くるわね・・・。」


皆もだえ苦しんあと、それぞれ違う症状が出始めた。


アイリスは白い犬の耳や尻尾が出て、パーカーを着た犬族が出来上がった。

クリスは何故か被っていたキャップからクマの耳が出てきて、ショートパンツからもしっぽがでてきた。

エリーゼは白いワンピースだったので猫耳や尻尾はそのまま生えてきた。

エリザベスはジーンズから狐の尻尾と頭に狐の耳が生えてきた。


「お兄ちゃん!!わん!!見てみてワン!!ワンちゃんだワン!!」

「はぁ~~。私はクマよクマ。ずっとこのままでいたいクマ。」

「ん。にゃ~。にゃ~。」

「ふふっ。不思議ねコン。ちゃんと尻尾まで感覚があるなんてコン・・・。」


「何で僕まで・・・。」


僕は・・・犬とは違うし・・・。オオカミみたいだ・・・。


「お兄ちゃんワン!!ちゃんと語尾に「ガウ」ってつけなきゃだめワン!」

「オオカミはガウなのか・・・ガウ?」

「ん。にゃ~。にゃ~。」

「エリーゼ。何言ってるかわからん。」

「クマ。じゃあみんなで動物園ごっこしましょうクマ。」

「姉さん・・・がう。何その茶番ガウ・・・。」

「ふふっ。いいじゃないコン。やりましょうコン。」

「そもそも狐の毛をどこから持ってきたんだ?」

「はぁはぁ・・・。ケモミミがいっぱい・・・。」

「何でフランジェシカは薬飲んでないんだ・・・。」


その後僕らは10分間よくわかんない動物ごっこをする羽目になったとさ・・・。

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