第107話フランジェシカ編、中編
「オリバーったら、あとで説教ね。」
「ほんとだな。勝手に個人情報ばらまきやがって・・・。」
「自分は女ばかり追いかけてる変態なくせに・・・。」
「それなのにリタの気持ちには気づかないドン感ぶり・・・。」
「全く救いようのない奴だな・・・。」
「ええ、全くよ。」
僕らが悪態をついていると・・・。
「え、・・・えっと。その、オリバーとは仲悪かったのか?・・・なんか悪いことしたか?」
とレイはオロオロしだした。
やはり悪い奴ではないのかもしれない・・・。
「いいや。すみません。それで?PVPをしたいと?」
「あ、ああ!!いいのか!?」
僕が質問をすると満面の笑みを浮かべて返事をしてくる。
・・・口は悪いが真っ直ぐな人なのかもしれない・・・。
「・・・まぁ一度だけなら。」
「ほんとか!?ありがとう!!」
なんだか調子狂う人だな。
真っ直ぐお礼を言われると照れる・・・。
「ところで「俺」って・・・。女性ですよね?」
フランジェシカは申し訳なさそうに聞いてみる。
「んん?あぁ、俺は女だぞ?昔っからこの口調だから20歳になっても治らなくてな!!あ!!リアルの年は内緒な!!あっはっはっは!!あ、でもため口でいいぞ?俺はその辺ゲームの中ではあんまり気にしないからな!!」
「「・・・・・・・・・・。」」
まさかの年上だった。
まぁよく見れば年上か。
口調が少し馬鹿っぽかったので同世代くらいかと思った。
・・・見れば見るほどこの人は黙っていたら綺麗なおねぇさんだ。
少し肌が黒いからギャル系にみえる。
犬耳をつけていることから獣人だとわかる。
「・・・あ、じゃあやろっか。?」
「おう!!よろしく頼む!!」
まぶしい笑顔だった。
初めにめんどくさいから嘘ついたこと深くお詫びします。
心の中で・・・・。
僕はメニュー画面からPVPを選ぶ。
「今LVいくつ?」
「ん?25だ。だが遠慮はいらないぞ?」
初めて5日で25はすごいな・・・。
これが新規プレイヤーの救済措置効果か・・・。
僕は自分のLVをいじる。
PVPは様々な仕様があってLVを相手に合わせて下げることが出来る。
あげることはできないが。
「おい!?何をしているんだ?」
「何ってLVを下げているんだよ。・・・よし。これで僕も25だ。」
「余計なことをするな!!年下に遠慮されたくない。」
「その年下の可愛いわがままだと思ってよ。」
「む・・・。そうか。年下のわがままを聞いてやるのも、年上の務めか・・・。」
僕の切り替えしにしぶしぶ納得する。
・・・訂正だ。
この人はいい人だ。
きっと・・・。
「でもスキルはなくならないから、ハンデは大きいよ?」
「構わん!!それくらい!!」
「READY」
レイは大盾と片手剣を構え、僕も剣を構える。
ステータスはほぼ五分。
恐らくスピードは僕の勝ち。
パワーはレイの勝ちだろう・・・。
「GO!!」
レイはずっしりと盾を構えたまま、突撃してきた。
・・・それは悪手じゃないか?
僕は側面に走る。
レイは立ち止まらずそのまま横を向く。
僕は姿勢を低くして突っ込み、レイの視線の死角に入ろうと盾の正面に立つ。
「シールドバッシュ!」
レイは掛け声と共に盾を前に突っ込んでくる。
それも悪手だ。
僕は走っていた勢いを殺さず横に飛ぶ。
そのまま腰に掛けてあったナイフを抜き、レイの左腕目掛け投げる。
「ッックッ!?」
刺さる!!
と思った瞬間レイは一度盾を離し、ナイフをよける。
僕は魔力脚で大盾をけ飛ばす。
そのまま切りかかったがレイは転がりながら盾を掴み構える。
・・・反射神経と、目はいいな・・・。
PS(プレイヤースキル)が高い・・・。
LVが上がればかなりの強敵になりそうだ。
「・・・さすが俊足だな・・・。速くてまで追うのがやっとだ・・・。」
「・・・まだまだこんなもんじゃなないよ?」
僕は体を左右に振りながら突っ込む。
「ッックッソッ!?」
レイは今度は動かずに盾をずらしうまく剣を捌くが、攻撃には転じられないようだ。
・・・だが盾の使い方がうまい。
僕も全くダメージを与えられない。
試しに正面から魔力脚で蹴ってみる。
「シールドバッシュ!!」
死角からの攻撃にも関わらずレイは攻撃を返してくる。
僕は体制を崩し、一度後ろに下がる。
が、素早く距離を詰められてしまう。
この人うまいな。
戦いなれている・・・。
「おい!!なぜスキルを使わない!?私をなめているのか!?」
レイが怒る。
「違うんだ・・・。楽しくって。こんな戦い方がうまい人とは家族以外で久々でさ。」
僕は素直にほめる。
「そ…そうか。な、なら仕方ないな!!私も楽しいぞ!!お前は身のこなしと言い、剣捌きと言い素人ではないな!!」
顔を真っ赤にしながらしゃべるレイ。
この人20歳なのに褒められてないのかな?
「ジィジの教わったんだ。」
「そうか!!お年寄りは大事にしろよ!!」
いい人やん。
この人絶対いい人やん。
そう言いながら剣を振るってくる。
今度は剣と剣のぶつかり合いだ。
軽く4、5回斬り合う。
うん。
こっちは素人だ。
なんか鉄パイプ振り回しているように見えてしまう。
「・・・なぁ。楽しいのはわかるがそろそろ本気を出してくれないか?」
・・・見抜かれていたか・・・。
あんまり手を抜いても失礼だしな・・・。
「・・・じゃあお言葉に甘えて。家族にしか見せてない奥義を見せてあげる。」
「奥義だと!?かっこいいじゃねぇか!!是非見せてくれ!!早く!!」
子供か。
はしゃぎすぎだ。
だがこのLVで果たして何秒もつか・・・。
この技スキルLV低いとこっちもダメージあるんだよなぁ・・・・。
「じゃあ行くよ?」
そう言い、僕は「雷神衣威」を身にまとい、かまいたちを出す。
「なっっ!?」
レイは驚きながら、かまいたちを防ぐが盾を伝い、雷で一瞬動きが止まる。
その隙に僕は先ほどと同じように死角に入り右に飛ぶ。
「その手は通じん!!「シールドバッシュ」」
再びシールドバッシユを、今度は斜めにしてくる。
だが僕は素早く逆に飛び、剛力で剣を振るう。
レイは僕を見失っている隙に右腕が飛ぶ。
「・・・・え?・・・うわ!!」
レイはが驚いている隙に足払いをし、転んだ彼女の喉元に剣を突き付ける。
「・・・・まだやる?」
「・・・やるかよ。降参だ。」
こうして僕は勝利を収めたのだった。
「・・・いきなり絡んで悪かったな。でも楽しかったぜ!!またやろう!!」
「PVPはあんまり好きじゃないけど。まぁまた機会があったらね。」
そう言って握手し、僕らは別れた。
もちろんフレ交換はしておいた。
姉妹クラン以外で初めてのプレイヤーのフレンドだ。
大事にしなきゃな。
・・・不良っぽいけど。
そう言って僕らは森に出発するのだった。
「あったあった。これこれ。セージの葉。それと花もね。これを集めて?」
僕はフランジェシカの指示通りのものを集める。
「これを何に使うか聞いていい?」
「もちろんこれでミドルポーションを造るのよ。」
フランジェシカはプレイヤー初のミドルポーションを造るそうだ。
出来たら売ってもらおう・・・・。
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