第87話谷底にて

「おに~ちゃん~!!何とかして~!!あ~~れ~~。」

「下に川があるわ!!何とかなるんじゃないかしら?」

「ん。ウィル。最後に抱きしめて?」

「下に岩があったら私たちぺしゃんこね。」


皆音てる最中なのに意外と余裕だな・・・。

あとエリザベス止めてね?

それシャレにならないから・・・。


現在僕たち落ちてます。


現在僕たち落ちてます。


現在僕たち落ちてます。


山と山の間にある谷に落ちてます。


天龍山脈の谷底ではありません。

ただの山です。

ただの山の間に落ちてます。


「あのクソ猿ただじゃおかブォフォ!!」


冷たい川に落ちました。

とても寒いです。

とても流れが早いです。


泳ぎスキルが役に立ちません。


取り合えず頑張って一緒に流されている、何故か楽しそうに流されているアイリスと、すでに諦めて目をつむって流されるクリスを回収、僕に抱き着いてなんか幸せそうなエリーゼとそれに嬉しそうに抱き着くエリザベスはそのままほっとく。


一瞬水から顔を出すが掴めるものが何もない。

行きつく場所がどこかも分からない。

ゲームなのに苦しい。

何でこんなとこまでリアルなんだ・・・。

やば・・・意識が・・・・。


掴まれ!!


頭の中に声が響く・・・・。


とっさに手を伸ばす。

すると何かに捕まり・・・・・僕らは空を飛んでいた。


「ッッふん!!」


僕らはそのまま近くの谷底にある陸まで運ばれる。


「げほっげほっ・・・・。いったい何が・・・・・・。」

僕は辺りを見渡す。


そこには幸せそうに眠るみんなと・・・・一人の老人がいた。

黒いローブを着て木で出来た杖の先には大きな赤い宝石が一つついていた。


明らかに何かの達人だ・・・・。

放つ魔力がそれを物語っていた。


老人はこちらをじっと見て見定めているようだ。


・・・・・・・・・・。


数秒の時間が長く感じ、僕は息を飲む・・・・・・。


「・・・・・・・・・ふあdhfはうdhふぁ?」


「・・・・・・・。は?」


なんて言ったの?

全然聞き取れない・・・・・。

もしかして人間ではないのか・・・・・・?



・・・・・・・・・・・・カプリ。


「・・・・・おぉ!すまんすまん!!入れ歯を入れ忘れて追ったわい!ふひゃひゃひゃ!!」


……ただのボケた爺さんだったようだ。


「しかし、お主らはこんなところで何しておる?自殺願望者か何かふぁ?あ、いrふぇううwwf!!」


入れ歯が落ちて最後が聞き取れなかった・・・・・。

この爺さん大丈夫か・・・・・?

というか自殺願望者に自殺願望者か、なんて聞くか?普通。


「えっと・・・・。まず初めに助けていただきありがとうございました。僕は流れ人のウィルです。そこで寝てるのは、アイリス、クリス、それからエリーゼに、エリザベスです。先ほど助けていただいたのは魔法ですか?」


入れ歯を拾いウォーターボールを宙に浮かせ維持し、入れ歯を洗ってから口にはめている。

・・・そんな使い方すんのかい。


しかし只者ではないことはわかった。

魔法の維持はとても大変だ。

身体強化のような元々維持するためのスキルと違って、放出する魔法は無意識のうちに飛んで行ってしまう。

というか魔力がどんどん流れて行ってしまい、火薬に火をつけた砲弾のように飛んで行ってしまう。


それを維持しているということは、魔法のコントロールがとてつもなくうまいということになる。

ましてや入れ歯を洗うために使うとは・・・・。


「・・・・ふむ。流れ人か・・・。初めて見た。お主、もしかして・・・・・。」


なんだ?獲物を狙う目つきになった。

まさか、流れ人を嫌っているのか・・・?


「・・・何か食べ物を持っていないか?先ほどの魔法で腹が減てしまっての。助かたお礼によこさんか?」


ただのたかりだった・・・・。



「おぉ!!このシチューはうまいのう!!ようやった!!」


なんか褒められた。

老人ががつがつ食事にありついていると、皆が起きだした。


「・・・・あれ?ここは?」

「う~~ん。お兄ちゃんおはよー。あれ?死に戻りしてない?」

「ん。でもHPは残り一割しかない。あとお姉ちゃんじゃま」

「・・・・あっ!ちーちゃんもうすこし~!!」


・・・エリザベスは起きてたな・・・?

エリーゼがすかさずエリアヒールをかけてくれる。


僕はここまでの状況を話す。


「・・・そうだったんだ!!おじいちゃんありがとね!!」

「ありがとうございました。」

「ん。ありがとう。」

「助かりました。…えっと。お名前を聞いても?」


食事を終えた老人は満足そうにする。


「儂か?アランというただの老人じゃ。儂からも質問いいかの?こんなところで何をしておった?見たところ川で遊んでいたわけではなかろう。」


僕らはここに来た目的と経緯を話す。


「・・・・・・・なるほどの。フィリア様が・・・・。確かにおるの。」


「えっ!?知っていいるんですか?」


アランは情報を知っているようだ。


「・・・ふむ。お主らから悪い魔力は感じられんし、食事をくれたいいやつらじゃ。教えてやろう。儂こそが、元王国筆頭魔導士にして天才魔道時のあづしゅsdg!!あ、いすfgしfss・・・。」


肝心なところで入れ歯を落とした元筆頭魔導士殿。


・・・・・ボケて言ってんじゃなかろうか?

だが先ほどの魔法の正体はやはり重力魔法だったか・・・。

やけに体が軽く感じ、周囲の水も一緒に持ち上がっていたからな。

範囲指定して使うたぐいの魔法か・・・?


「ふむ。おしい。範囲的に使ったのではない。が、先ほどのは重力魔法であっておる。」


・・・・・・は?

心を読まれた?


「そうじゃよ。皆が考えた通り心を読んだんじゃよ。どうじゃ?わしのすぎょしょうあほうd?」


儂の何だ・・・?

入れ歯合ってないんじゃないかな?


「あの・・・。僕らにその魔法を教えていただくことはできませんか?」


僕のお願いにアランの顔つきが変わる。


「・・・・・何故学びたいと思うんじゃ?」


ーーーーーーーーーー

・クエスト【アランを説得しよう】


アランの質問に慎重に答えよう!!


1、この世界を守るためだ!!

2、重力魔法ってかっこいいじゃん?

3、強くなるためだ!

4、うるせぇジジイ!!いいから教えやがれ!!

5、道行く女の子のスカートを気づかれずにめくるため。

6、空が飛びたいんだ!!LET`S  I  CAN FLY!!YOU CAN FLY!!

7、自分の言葉で話してみる。


ーーーーーーーーーーー


久々の選択肢だ。

5は僕も考えた。

確かに魅力的だ。


・・・・・・・だが7を選ぼう。


「・・・・理由は二つあります。一つは強くなるため、これが一番大きいです。力がなければ大切な人を守れない。出会った人々を守れない。そして世界を救えない。そうなれば僕らがこの世界に来た意味がない。それがフィリア様が僕らをこちらに送り込んだ理由なので。」


「・・・・なるほどの。どれでもう一つは・・・?」


僕は爺さんあの背中を思い出す・・・。


「・・・もう一つはロマンの為です。魔法がない僕らからしたら魔法はロマンなんです。人生は冒険。旅はロマン。僕は大事な人からそれを教わりました。そして僕は心に誓いました。この世界と真剣に向き合おうと。そしてロマンを追い求めようと。」


アランは真剣に僕の顔を見る・・・。


「他のものも同じ気持ちのようじゃな・・・。ふふ。ひゃひゃひゃ!ロマンか!!そうじゃ!!魔法とは力でありロマンじゃ!!それがわからんアホが多すぎる!!実に愉快愉快!!


ーーーーーーーーー

・クエスト【アランを説得しよう】クリア!!


・報酬

アランの弟子入り


ーーーーーーーーー


弟子入り・・・・?


「気に入った!!お主らに魔法をお教えてやろう!わしの家に来い!!」


どうやらうまくいったようだ。


「いやー久々に同士とあったわい!!まさか重力魔法でスカートめくりを考えるものが他にもいるとは!!」


それを言うんじゃない!!


ぞくっ。


背筋に寒気がはしる・・・。


冗談だからね?

ほんとに冗談だからね?


一瞬の気の迷いだからね?



こうして僕は皆に睨まれはしたが、無事重力魔法の教えを乞うことができたのだった・・・。

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