第82話ジィジとばあちゃん

「お早うジィジ!!この後温泉に行こう!!」

「ジィジお早う!!温泉に行こう!!」

「お早うジィジ。温泉に行きましょう?」


「・・・・・・お早うお皆。今日これからか・・・?」


日曜日の早朝。


珍しくユイと姉さんも起き、皆でジィジの神社に来ていた。


「あら3人ともお早う。ユイと美和がこの時間に来るなんて明日は雨かね?」

「ほんとじゃな。珍しいこともあるもんじゃ!!」


おばあちゃんも珍しい二人を見て出てきた。


やーい。言われてやんの。


「今日は特別な日だからいいの!!」


「「特別な日??」」


ユイの言葉に二人は困惑する二人。

ジィジとばあちゃんはまだ話を理解していない。

まぁ当然か。まだ話してないしあれで理解できたらすごい。


「ジィジ。AOLの中で、すごくいい温泉を見つけたんだ。桜も咲いてて料理もおいしくて。是非二人に今日来てほしいんだ。」

「もう予約しちゃったもんねー!!」

「ぜひ来てほしいのだけれど。予定とか空いてるかしら?」


強引な誘いに、二人は顔を見合わせる。


「う~む。そういうことか・・・。」

「あらいいじゃない。こんな季節に桜の咲いた温泉なんて。それにもう予約してしまったのでしょ?」

「「「うん。」」」


ジィジは渋い顔をするが、察したおばあちゃんが後押しをしてくれる。


「あなた。行きましょう?あなたが行かなくても私は行くわ。」

「んん・・。しかし神社はどうする。」

「誰もいなくていいじゃない。どうせ誰も来やしないわ。」


それはそれでどうなんだろう・・・。

まぁそこまで頭の廻らなかった僕らが言えないが。


「というかあなた。行くわよね?孫たちが温泉に誘ってくれているのよ?ここで行かなかったら離婚よ?離婚。」

「なっっ!!??それは・・・・。はぁ。わかった。行くとしようか。」


とうとうジィジが折れた。

明日は本当に雨かもしれない。

ばぁちゃんはウィンクをしてくる。

僕は心の中で「ありがとう」と感謝する。


こうして僕らは時間を指定し、帰宅するのだった。


やっとジィジ達をあの世界に連れていける。

僕らの胸の中には感動と不安が入り混じっていた。

二人とも気に入ってくれるだろうか・・・。




時刻は午前10時。

フェラール始まりの街の広場。

まだ第三陣のプレイヤーが多くいた。

初期装備のままのプレイヤーが多く、なんだか自分たちが初心者だった頃が懐かしくさえ感じた。


「・・・・・おい。あれ「堕天使」様じゃないか?」

「ほんとだ。「鷹の目」もいるぞ。「カンパニー」に入れてくれないかな・・・?」

「「氷の女王」エリザベス様がいる・・・。踏んでいただけないだろうか。」

「「冷徹の聖女」様もいるぞ。なんて美しいんだ・・・。」


「もう一人の美少女は誰だ??」

「馬鹿!!あれは「俊足の兄貴」のウィル様よ!!男よ男!!」

「「「「ええええ!!??」」」」

「はぁ。私もあのハーレムに入れてくれないかしら・・・。」

「ほんと美形よね。しかもあんな美人たちに囲まれてるってことは、器も大きいのよ。きっと。」

「そうよね。じゃなきゃみんなついていかないわ。」

「くっ、一番かわいいと思ったのに・・・。」

「俺は男でも構わないぞ・・・。」



最後の。

僕は嫌だぞ。


僕らはかなり目立っていた。

廻襟の人たちに「カンパニー」と知られているみたいで、誰が最初に声をかけるか様子を見ているようだ。


そして、やはりアイーダのライブ活動にみんなが付いて行った時に、4人にもファンがついていたみたいだ。

ドンから、「護衛する人数が増えた。」と愚痴を言われたっけ・・・。


「おい!!俺たちを「カンパニー」に入れろ!!」


はい。テンプレ来ました。

こういうイベント定番だが、実際されるとかなり腹が立つんだよな・・・。


四人組の男たちがニヤニヤしながら話しかけてきた。

・・・・なんだかケンちゃんを思い出した。

元気にしてるかな・・・。今どこにいるんだろ?


「おい!!無視するな!!俺たちは第三陣だが、プレイヤースキルはかなり高いぜ。レベルが上がったら戦い方を手取り足取り教えてやるよ。」

「そうだぜ。だから「カンパニー」にいれな。絶対損はしねぇよ。」

「それに女ばっかで寂しいだろ?俺たちが相手してやるよ。」

「なぁ。合格でいいだろ?俺達。」


残念ながら、一言目で不合格は決まっている。

初対面で「おい!!」は、ない。

それで許されるのは猫型ロボットがいるアニメのガキ大将だけだ。


「おぉ。待たせたの。すごい世界じゃな・・・。」

「あらあら。ほんとね。それに人がたくさんいるわ。何かのお祭りかしら。」


ジィジとばあちゃんが来たみたいだ。


ジィジは人間で、ほとんど外見を変えていなかった。


そしてばあちゃんは何故か獣人の犬族を選んだみたいだ。

こちらも外見はほとんど変わっていなかったが、しわの数がだいぶ減った気がする・・・。

・・・言ったらきっと殺されるだろうな。


「おいジジイ!!こいつらには俺たちが先に話しかけたんだ!!」

「そうだぜ。老人は介護施設にでも行ってな!!」


下品な言葉に下品な笑い声で笑う4人。


「ん?なんじゃ。ナンパでもされておったのか?」


ジィジは特に気にしていないように話しかけてくる。


「気にしないで。ほっといていいよ。」

「そうだよー!!それよりAOLにようこそ!!」

「おばあちゃん犬族にしたのね!!とてもかわいいわ!!」

「ん。とても似合ってる。」

「ふふっ。お二人ともようこそ!!こっちでお会いできてうれしいわ。」


僕らは2人を歓迎し話で盛り上がる。


「おい!!無視すんなって・・・・・・。」

「わかったわ!!なら決闘をしましょう。ウィル相手に一太刀でも入れられたら、あなた達を「カンパニー」に入れてあげる。もちろんそっちは4人がかりでいいわ。因みにウィルは剣士だけど剣の使用は禁ずるわ。」


あっ。

エリザベスめんどくさくなって丸投げしてきやがった・・・。


「・・・いいぜ。ゲームはレベルじゃないってとこを見せてやるぜ!!」


そこは同感だ。

4人のLVは12平均か。結構やりこんでんな。


「おぉ、なんじゃ喧嘩か?ウィル。負けたら儂がお主をボコボコにしてやるからの。」

「あらあら。若いわねぇ。頑張ってね。」


お二人こそ若いわねぇ。

何処に孫に喧嘩させるジジババがいんだよ。

しかもいつの間にか負けたら罰ゲーム付き・・・。


周りにギャラリーも沢山集まってしまった・・・。

仕方がない。

やるか・・・・。


僕らが広場の中央に行くと、皆スペースを空けてくれる。


「僕は一発でも食らったら負け。武器はなし。そっちは制限なし。時間無制限。敗北時のペナルティなし。それでいいか?」


「へっ。馬鹿め。いいぜ。来な。」


こんな試合で勝利後にアイテムを貰っても空しいだけだ・・・。


僕らの周りに半透明な壁ができ、即席闘技場ができる。

後ろを振り返ると、皆サーカスでも見に来たかのように楽しそうにしている。


孫が理不尽な戦いに巻き込まれているんですよ?

何故楽しそうなんだい?

正面集団も理不尽。後ろの家族も理不尽。

僕は今理不尽な人たちに挟まれています。


おっと、集中せねば・・・。


頭上に「LADY・GO」の文字が出ると同時に僕は俊足を使い、距離を詰める。


「なっっ!!??」


まずは驚いた顔した魔法使いの顔面に魔力拳を叩き込む。


「ブフォォ!!」

面白い声を上げて魔法使いはクルクルと回り、壁に激突して消える。

まだ正面を見ている隣の狩人に標的を定める。


出した右腕を引きながら、後頭部に魔力脚を使い左足で蹴る。

クリティカルの文字が出て消えていく男の後ろから飛び出してきた男の薙ぎ払いの大斧。


僕はしゃがみそれをかわすと同時に足を払う。

「ぬゅおっっ!!」

またまた面白い声を聴きながら、僕は半回転し左足を軸にし、相手の懐に魔力脚を叩き込む。

男は吹き飛び壁に当たり消えていく。


・・・・LV差があるとこんなにも楽なものなのか・・・。


「ま、待て待て。ずるいぞこんなの!!聞いてない!」


何をだ?


「先に喧嘩を売ってきたのはお前たちだろ。うちの家族を「遊んでやる」だの「ジジイ」だの言いやがって・・・。僕の家族を馬鹿にした奴は死刑だ。」


しゃべりながらゆっくり歩み寄り相手の間合いに入る。


「くそっっ!!」


焦った相手は大ぶりで剣を縦に振ってくる。


・・・・素人だな。こいつ。


僕は一気に相手の懐に入り背負い投げ・・・のようにし、投げずにそのまま地面に頭から叩きつける。


「ぴっおわっ!!」


変な規制を発しながら脳天から落ちる男はそのまま消えていく。


「WIN」


頭の上に文字が出る。


「「「「「「「・・・・・・・・・・・。」」」」」」」


当りのプレイヤーは開いた口が塞がらないようだ。


「さぁ皆行こう。無駄な時間を過ごした。」


「ガッハッハッハ!!それでこそ儂の孫だ!!まだまだ無駄な動きが多いがな!」

「ふふふっ。そうね。私なら片手で勝てるわ。」


どんだけ強いんだよ二人とも・・・。


「お疲れーお兄ちゃん!!さあ行こう!!」

「そうね。早くいきましょう。」

「ん。無駄な時間だった。」

「ふふっ。私は割と楽しかったわ。皆の驚いた顔を見るのが。」


誰か褒めて?

何のために頑張ったんだか・・・。


こうして僕らはギルドに向かい、二人のギルドカードを作ってもらってから西門から出た。




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