第43話試練の塔前編


昨日はポータルで一度フェラールに戻りフランジェシカにポーション類を買い、Mr.とレヴィ、テイラーに装備のメンテナンスをしてもらった。

しかし所持金がないため残りのグレーウルフの資材をすべて売ってしまった。それでも所持金50G。情けない。


一度屋敷に戻りお金がないので、僕はお弁当作り、4人は雑草抜き。


結局昨日はここで終わってしまった。


日曜日午後一時。‬


「さてさて、しゅっぱーつ!!


アイリスの掛け声と共に西門から出発する。


残り時間は明日の午後3時‬。学校があるので今日中に試練の塔とやらへのアタックは今日しかない。気を引き締めなければ・・・・・・。


1時間ほど歩くと町が見えてくる。しかも・・・。‬


「ねぇ、なんか馬が多くないかしら?」

「多いねぇ。しかも旗が多い」

「ん。なんか軍の駐屯地みたい。」

「ああ、確かに。じゃ町はまだか?」

「どんなんでしょ。でもあの冊や、建物は昨日今日でできるものじゃないから町なんじゃない?」


端から端まで見渡せる小さな町の外に馬が30ほどいて近くには剣と盾そして龍が描かれた旗があった。確かあれはエレクトリカル王国のシンボルマークだ。



一応街に入るが所持金が50Gしかないので何もできない。


このまま抜けようとしたところ・・・。


「おいぃぃぃ、おめぇら・・ヒック・・どこかで・・ヒック・・見たことありゅな。」

「あっはっはっは。隊長、こいちら・・ヒック・・流れ人だすよ!」

「あぁ?なんだって?」

「だから・・・ふふ・・・流れ人・・あっはっはっは!!」

「おぅえぇぇぇえぇ・・・・・。」

「ちょっと隊長!ここではいたらまた怒られ…もう手遅れか・・・。」


そこには酔っぱらって吐いている四番隊隊長のジャック、とそれを見て笑っている副隊長のケイト、それと若い兵士がいた


「ひっひっ。あー腹痛いらぁ。ところでお前らこんなとこでろうした?」

「うちの酔っぱらいたちがすみません。流れ人の方々ですね?旅の途中ですか?」


まじめな兵士が聞いてきたので、攫われた子供のことを話す。

「それは大変だ!!すぐさま我々も・・・・・・・ちょっと隊長!!副隊長!!」


すでに二人は夢の中だった。ここ道のど真ん中なんだが・・・。


「ところでなぜ4番隊の人がここに?」

「…ったく、この人たちは・・・。あぁ。ここは名前のない村、皆、小さな村とか駐屯地と呼んでいる。新人兵士は皆試練の塔のダンジョンで訓練をするのだが、明後日‬は我が四番隊の番だったんだ。」

「すまない。まだ兵も少ない。急いでこの二人を起こして我々も塔に向かう。君たちは先に行っていてくれないか?」


もちろんそのつもりだったのし、援軍が来るならありがたいので了承する。寝ている二人をみると本当に来るかはわからないが・・・・・・・。


僕らは町を出てさらに西に向かう。途中で魔物はちらほら出たが大した数ではなかったので、順調に進んだ。


「ここが試練の塔か・・・思っていたより大きいんだな・・・。」

「だねぇ・・・。今日中に終わるかしら。

「ん。ビルくらいある?」

「そうね小さいビルくらいはあるかしら。」

「大丈夫大丈夫!!お兄ちゃんが何とかしてくれるよ!それより早くご飯プリーズ!!」


そんなに期待されても困る。君たちとは違い僕は凡人なんだ。


とりあえずご飯にし空腹度を満たしておく。

今日は魚介のスープだ。炭水化物を買うお金がなかったので卵だけ買っておき、モブモブ鯛をつみれにして入れておく。


・魚介たっぷりつみれ汁(AGI+5、mp+5  残り2時‬間)

鑑定結果はこうなった。


味は好評ですぐになくなった。

満腹度が搭載されたためちゃんとおなか一杯に感じる。不思議なものだ。


「じゃあ行きましょう。」


エリザベスの合図でダンジョンに入る。AOL初めてのダンジョンだ。


「ここは試練の塔。塔を攻略するには一人ではできない。体力、知力、勇気、忍耐力、チームワーク。すべてを使い塔を攻略してみよ。さすれば君たちに大切なものを授けよう。」


扉をくぐると早速階段があり近くの壁にはそう書いてあった。


「お宝!?なんだろー楽しみ!!」

「大切なものか。確かに気になるね。」

「でも大切なものって人によって違うんじゃない?」

「ん。私の大切なもの。もう隣にいる。」

「それより子供の救出が先でしょ?行くわよ。」


エリザベスの言葉に従い進む。

階段は狭く人ひとり分しか通れない。

馬などで来ることはできないだろう。


「「力を示せ」ね、戦闘があるかもしれないから、皆準備してね。」

「なら僕が先に行くよ。いきなり襲われたらエリザベスでは危険でしょ?」

「ふふっ。そうね、ならお願い。」


狭い通路でエリザベスと入れ替わる。

入れ替わるときこちらを向き、わざと体を押し付けてきながら「ありがとね。」と耳元でささやかれた。

柔らかい胸の感触といい匂いに一瞬動揺するが、すぐすり抜け気持ちを入れ替える。


剣を抜き、石の扉を開ける。


ヒュッ、という音とともにいきなり矢が飛んでくる。

「うぉ!」

思わず階段に戻る。

すると矢は止まり追いかけてくる音もしない。

「あぶなっ。交代しててよかった。」

「ほんとね、私だったら串刺しだったわ。」

「ウィル大丈夫?」

「うん。何とか。人影が2.30は見えたかな。」

「人型のモンスターかしら。どうする?」

「うん。まず僕が一人で入って敵の注意を引くから時間差で入ってきて。5秒後に。」


僕はダッシュ、観察を使い一気に入る。


再び弓が飛んでくるが今度は余裕でかわせる。

部屋の中は円形になっていて闘技場のようだ。


スカスカボネナイト 、Lv12×20

スカスカボネアーチャー 、Lv×10


モンスターの奥に階段が見える。

僕は斜めに走り弓が当たらないように近づく。


「はぁぁぁっぁぁぁ!!」

挑発を使い敵をすべてこちらに集中させる。


その瞬間魔法と弓が飛びモンスターが一気に6体ほど減る。五秒たったようだ。

僕、アイリスは両側から挑発を使いながら近づき、弓兵から倒す。


バキッ、と音とともに骨は折れ消えていく。

弱いな、彼らは骨粗鬆症のようだ。


弓兵を倒した時には骨ナイトはほとんど消えていた。

最後の一体にクリスの弓が刺さり消える。


「お疲れ。」

「うん!!お疲れ!!あれを見ると骨は大事だなって思うね!」

「そうね。ならアイリスは牛乳をたくさん飲まなきゃね。」

「う~~~。牛乳は嫌いだよ~。」

アイリスは牛乳が飲めない。


少し雑談をした後階段を上ると


「知力を示せ」


と書いてあった。

突然攻撃される心配はなさそうなので取り合えず入る。


そこは小さな部屋に扉が一つあるだけだった。


「二人で荷車を引いている人たちがいる。前で荷車を引いている人に「後ろで押しているのはあなたの息子さんですか?」と尋ねると「そうです」と答えました。

ところが、後ろに回って荷車を押している息子に「前で押し車を引いているのはあなたのお父さんですか?」と尋ねたところ「そんなことはない!」と言われてしまいました。

一体なぜ?」


急にメニューウィンドウが出てきてそう書いてあった。


「知力ってなぞなぞなのね。」

「そうみたい。しかも簡単だね」

「だね!じゃあいっせーの、せーで・・・」

「「「「「お母さんだったから!」」」」」


ゴゴゴゴゴゴ、という音がし扉が開いた。


「この階は簡単だね!!」

「そうでもないわよ。足元を見て。」

足元の石には切れ目が入っていた。

「おそらく間違えたら足元が開いて下の階に落とされるのよ。」


エリザベスの言葉で空気が凍り付く。


「・・・さっき結構階段上ったよね?」

「ん。たぶん今ビル3階あたり。」

「・・・この体ならだいじょうぶかな?」

「……たぶん」

「間違えなきゃいいのよ。行くわよ。」


エリザベスの自信にあふれる言葉で皆前に進む。

彼女がいてよかった・・・。


「二人の赤ちゃんが同じ月日、同じ時間、同じ病院、同じ母親から生まれたが双子ではない。なぜ?」


「なんか急に難しくなったな。」

うーん、と悩むのとは反対に彼女たちは涼しい顔だ。


「お兄ちゃん、こういうのは鉄板問題っていうんだよ」

「そうね。どうする?私たちは答えわかっているけど。」

「ん~じゃあお願いしようかな。時間もあまりないし。」


「じゃあせーのでいくよ?せーの・・・。」

「「「「三つ子だった!!」」」」


ゴゴゴゴゴゴと扉が開く。


なるほどね。なんか悔しい。


「5リットルの容器が1個、3リットルの容器が1個ある。水をいくらでも使い2つの容器を使って4リットルを測れ。」


そこには小さな池と容器が二つ、中央に大きなグラスがあった。グラスが4リットルだろう。


「どうする?私たちがやっちゃおうか?」


エリザベスとエリーゼはもうわかったようだ。流石天才二人だ。

アイリスとクリスと僕はうなっていた。


だが時間もないのでやってもらう。


エリザベスは迷わず5リットル容器に水を浸し3リットル容器に入れる。5リットル容器には残り2リットル。それをグラスに移し、また繰り返す。


ゴゴゴゴゴゴ


答えを見れば簡単なように感じるが・・・。

「ここが最後みたいね。」


「この先君たちは死ぬかもしれない。進むなら左、やめるなら右、へ進め」


「右に進む人なんていないでしょ!」

「いや、そうとも限らないよ。最初の戦闘は挑発スキルか盾職がいないと厳しいし、クイズも間違えたら落とされていた。この先LVが低い人は厳しいかもしれないでしょ。」

「そうね。だからここが最後の引き返すチャンスなのかもしれないわ。」

「ん。でも私たちはすすまなきゃ。

「そうね、子供は見捨てられないわ」


僕らは左を選択して階段を進んでいった・・・。

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