クラン「カンパニー」

第39話クラン設立


「また先こされたなぁ」

「たまたまだよ。それにここからはしばらく次の街には進まないつもりだし。」

「おっ、なら俺たちにもチャンスがあるな!」

「うん。それでほんとに僕たちのクラン入らないのか?」

「入らないなぁ。確かに魅力的な話だけど。それに入ったらなぁ・・・」

「あぁ。お前も大変だなぁ・・・」


学校の昼休み。僕とタクはクランについて話していた。


一応クランについて簡単に説明すると、ゲーム内で同じ思想を持った集団のことである。

攻略、生産や仲間集めなどその目的は様々。とにかく気の合う仲間で集まった組織だ。


「いいじゃない。別に同じクランじゃなくても。」

「まぁユリがそういうなら私も違くていいと思うよー。」


一番の理由はユリが僕らと同じというか、香織さんと同じが嫌なのだろう。

タクは本当にユリが香織さんと仲が悪いだけで自分は関係ないと思っている。

まぁタクはアホなのだ。


「ナギはどうするの?」

「なぎっちはうちに入りなよー!絶対楽しいからー!」

「うーん。それも確かに楽しそうだけど、やめておくわ。私は取り合えず、筋肉男たちが絡み合いそうなクランを探すわ。」


ねぇよ。そんなクラン。あっては困る。

なんでこいつハラスメント警告出ないんだろう・・・。


「お前ら今どこにいるのさ。」

「俺たちはお前らに教えてもらったフェラールの街の北西の山。鉱石集めしてG稼がねーと。ゲームの中でも金欠って世知辛いよな。」


僕らは山までレヴィ達を護衛したため、料金は無料となったが、タク達は料金をしっかり取られ、金欠に陥っていた。


ポーションすら買えなかったタク達は仕方なく毎日鉱石集めをしているそうだ。

お陰で今では結構溜まって来たそう。

因みにタク達の活躍のお陰でフェラールの街の鉱石の価格げ下がり、それに伴い武器の価格も下がったらしい。


どんだけ掘ったんだよこいつら。


「そういえばPKしたプレイヤーが死んだらどうなるんだ?」

「どうなるってそりゃ捕まるよ。レッドプレイヤーも死んだら最後に行った街の転移門にしに戻りする。そうすると衛兵達が集まって来て囚われるのさ。」

「逃げられないの?」

「まず無理だね。ALOのレベル上限がいくつか知らないけど、フェラールの街の衛兵でレベル50は超えていたからな。それが何十人も襲ってくるんだ。逃げ切れないだろ。」


それは無理だ。


「何?弥生はPKでもするの?」

「しないでしょ!そーゆー事出来なそうだし、やったらちーちゃんに怒られるでしょ!」


よく分かったな。絶対千紗に殴られよ。怒ると本当にこわいからな。あの子。


「逆だよ。ケンちゃんたちにPKされそうになってさ。なんとか返り討ちにしたけど。」


記憶は無いけれども。


「まじかよ。ケンちゃんたちって誰だ?」

「ほら、一番初めギルマスにぶっ飛ばされた奴らだよ。8人に増えてたけど。」

「あーあいつらか。まぁやりそうだな。性格も顔も悪そうだったもんな。」

「あはは!らっきょみたいな顔してたよね!!」

「ブフッ。や、やめなさいよ。確かに顎出てたけど」

「それに見た?あの顔いじっていたわよ?本来だったら三日月位あるんじゃ無いかしら。職業はきっとムーンナイトね。」


や、やめてあげて。ケンちゃんいじり。


「そ、それで、ペナルティとかはあるのか?捕まったら。」

「くくっ。。ああ、当たり前だろ。お前たまに掲示板見たほうがいいぞ。結構いい情報あるぞ?ペナルティは正解にはわかっていない。ただ最低でも5時間は牢に入れられその後‬24時間ステータス半減。所持金半分没収になる。因みに牢に入る時間はちゃんとダイブしてる時間で、だ。」


「それはきついな。つまり牢の中で5時間はじっとしていなきゃならないわけか・・・。」‬

「まぁ犯罪行為ってAOLの住民からしたら殺人事件だからな。しかもその罰は最低だ。ひどいとLV1になったりするそうだ。」

「こわっ。僕ならやめるな。」

「俺もやめる。」

「そして傷ついた二人は慰めあい愛が芽生えるのだった・・・」

「それはお前の願望だろ、ナギ。」

「やめろやめろ。一生癒えない傷になるだろ。」


「クラン名は決めたのか?」

「はいはーい!!タク&ユリ!!」

「ちょ、いやよそんな名前!!恥ずかしいじゃん!!・・・まだ付き合ってないし・・ごにょごにょ。」

「おい、最後なんて言った?ちゃんと否定しないと。俺は何とか騎士団がいいかなぁ」

「BL騎士団は?」

「「「ない」」」

「私はタクが決めたのでいいと思うわ、へ、変なのじゃなきゃ。」

「じゃーツンデレ騎士団。」

「それじゃユリだけじゃない。」

「だ、だれがツンデレよ。」

「「腐腐腐騎士団」は?」

「なんかこえーよ!しかも書かなきゃ伝わらないし。」

「らっきょ騎士団!!」

「ケンちゃん入れたくない!」

「・・・にぶちん騎士団」

「いねぇよ鈍い奴なんか。しかし決まんねぇな。なぁ弥生はなんかないのか?」

「えっ僕関係ないじゃん。っでもそうだな。最初のでいいんじゃない?」


「「「え??」」」」

「あっいや、そのまんまじゃなくて。3人中二人が盾職の騎士なんて珍しいだろ?だから「ダブルナイト」とか」

「いいじゃんダブルナイツ!!二人がクランの顔になれば!!」

「わ、私はそれでも構わないけど・・・。」

「なんで乗る気なんだよ。それじゃカナがかわいそうだろ。」

「私は全然いいよ!むしろ応援する!!」

「何をだよ・・・。でもダブルナイツか。悪くないかもな。」

「そうね。私の考えた「受け攻め騎士団」よりいいかもね」


こうして無事タクたちのクラン名は決まったのだった。




「さて、ギルドに行きましょう」

ーーーーーーーーー

・クエスト【王都のギルドに手紙を届けよう】  クリア!! 


・報酬5000G

ーーーーーーーーー

・クエスト【ブラックウルフの退治】  クリア!!


報酬

20000G

簡易転移ポータル(パーティメンバー全員分)


ーーーーーーーーーー


「報酬はこちらになります。」

「あのクランの設立と素材の売却をしたいのですが。」


「はい。ではまず素材を出してください。・・・・・・・はい。確認いたしました。ではグレーウルフの素材150点で22500Gになります。先ほどと合わせて47500G。こちらからクランの設立費を差し引いてもよろしいでしょうか?」


「はい。お願いします。」

「それでは10000Gいただきます。残りはお納めください。それではクラン名と参加メンバーを5名お書きください。」

ーーーーーーーーー

クラン名「カンパニー」


・クランマスター

エリザベス

・クランサブマスター

ウィリアム

エリーゼ

その他代表

クリス

アイリス


以上5名がクランの代表になります。

この5名のみクランクエストの受注が可能になります。

クラン所有の金銭のやり取りも同様になります。


禁止事項・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・


ーーーーーーーーー


カンパニーにはいろいろな意味があるとエリザベスが教えてくれた。

『不可算名詞』

 交際・つき合い、同伴、同席・仲間、連れ、友だち・来客・人の集まり

『可算名詞』

一行、一団、一隊 、劇団 会社、商会


つまり僕らは仲間になり、同士となる。

こういった様々な意味合いが自分たちに向いているというエリザベスの判断だ。


「クランの拠点の購入もされますか?」

「どういったところがあるのでしょうか?」


「説明いたしますね。まず料金の方が1万G~1000万Gまであり料金が高い方が城に近い、つまりは貴族街になりやすい方が平民街になります。建物には空間魔法が1万Gでかけられ購入後部屋や設備の増幅が可能です。因みにリアルマネーと呼ばれる「円」での支払いも可能です。そちらの場合は100円で10Gとなります。購入後他の建物に移ることは可能ですがその場合設備は1からやり直しとなります。建物の複数所持は可能ですがその場合クラン人数が50名以上からとなります。因みにクランには現地人を雇い、働かせることが可能です。しかし当然わいせつな行為、及び暴力行為を行ったクランには罰則が生じます。以上が説明となります。さらに詳しく知りたい場合は先ほど書いていただいた紙の下に複写式の紙がありましてそちらが控えとなりますのでそちらをご覧ください。」



すげぇ。噛まずに言い切った。

一気に言い切った。

しかもドヤ顔だ。

確かにすごいが。


先ほどのクラン設立費用を引いた報酬を僕が受け取ったとして僕の残高は194500G。


皆の所持金と合わせると225500G。


下着の買いすぎだぞ・・・。


僕らは15万~20万Gのクランを見せてもらうことになった。

山下家の力を使えば1000万Gのクランだって簡単に買うことができるがさすがにやらなかった。

この世界の主人公は僕たちで、これは僕たちの人生だ。

僕たちが稼いだお金でやりくりするのが道理だ。


当然流れ人のクラン設立は僕らが初めてで空きが多かった。


中流階級の建物でセール中の建物もあり、小さな丘の上の王都が一望でき、後ろが花畑になっている大きなゴシック風な屋敷が220000Gだった。ギリギリ払えたので僕らはそこに即決した。


セールの理由はそこは眺めや環境はいいが中流階級の場所の端の方であり丘の上の為、人気がないのだとか。現地人は、より中央道路に近く城に近いことがステータスとなるそうだ。


因みに元値を聞いたところ50万Gだそうだ。


なんてご都合主義な話だろう。


「ひーろーいーねー!!最高だよお兄ちゃん!!」

「ほんといいところね。色々掃除なんかしなくちゃならないけど。」

「ん。まさに貴族のお屋敷ね。」

「ほんと。素敵なところ。」


レンガ調の屋敷。木材も使っており中世の貴族の屋敷そのままだ。


広い庭。中央に小さな噴水。花壇の草は雑草だらけだが掃除をすればよくなるだろう。


敷地内をすべて合わせたらサッカーコートくらいになるんじゃないか?

いや、少し小さいくらいか。正面には王都、裏には花畑。敷地内にベンチもある。もうここから出ないでいいんじゃないか?


青い屋根で少しゴシック風の我が屋敷に入る。


広い玄関ホールには暖炉があった。しかし家具はなく埃かぶっていた。

アイリスはそこでごろごろ転がりクイックルワイパー状態になっていた。

つまり埃だらけだ。彼女の将来が心配になる。


応接間、調理場などは一階にあった。そしてなんと風呂もあった。


AOL内では汗は書かず汚れも一定時間たつと自動的に消える。

しかし精神的にはずっと同じ服でいるのは気持ち悪かったのでありがたい。


食堂、書斎、寝室は二階にあり3階にも部屋はあった。


「見て見てお兄ちゃん!!料金システム!!」


その前にお兄ちゃんは埃まみれの妹を見て泣きそうだよ。


メニューにはクランという項目が増えており、所持金、メンバー名、メンバーの居場所、料金システムなどがあった。

アイリスが言っているのは料金システムだろう。


地下室に生産場所や訓練場の増設から、滑り台、ジャングルジム、ベッドやソファなどがある。


おいおいSMグッズっていいのか?

絶対フランジェシカに見せてはいけないものまであった。


あっ、この食器いいな。



とりあえずゲーム開始から一周間で僕らは夢のマイホームを購入するのだった。



・・・・・・ただし貧乏になった。

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