第34話コータの決意

あれ?俺なんで――寝ているんだ?


外はまだ真っ暗だし、もしかして王城?

さっきまで、クロと外で会話していて……。

話の途中で、なんか息が出来なくなって……それから……。

――倒れた?


クロの尻尾が、飛んで来たんじゃなければ初めてだな……。

貧血とかも起した事、無かったのに。


「あ、コータさんが目をあけたにゃ!」

「大丈夫ですか?コータさん、急にクロさんがコータさんを引きずって中に飛び込んで来た時はびっくりしましたよ」


あぁ、心配かけちゃってごめんね。アルテッザ。


「コータさんは、いつもの事だに!」

「そうですね、コータさんですし……」


この獣娘二人……鬼か!


「コータさん疲れているんじゃないですか?盗賊の洞穴から、ここの所ずっと動きっぱなしだったし」


イアンがそう言うが……。

オワレスの街で、イアンの家にお邪魔して、何日かはゆっくりしたからな。

疲れじゃ無い様な気がする。

クロと何を話していて、倒れたんだっけ?

俺が、思考の海に陥ったのを見て、皆は気を利かせ何事も無くて良かった。

そう言いながら、隣の部屋に引っ込んでいった。


態々、俺を心配して寝ずに俺の寝かされた部屋に待機してくれたらしい。


あーそうだ……クロと、戦う事に関して話していたんだ。

しかし完全防御なんて、チートなんてものじゃないだろうに……。

そんな能力あったら、PKし放題でつまらないじゃん!


でも仮にも竜神。

それこそ古代の竜の話だしな……。

試してみるのもいいかな?

でも、もし痛かったら嫌だな……。

試しに、俺は自分の持っている短剣で軽く指を切ってみた。


「ぎゃぁぁぁぁー痛い!痛いじゃん!ち。血が出ているよ……やっぱ嘘じゃん!」


糞。こんな事だろうと思ったよ。

クロまで王族と結託して……あれ?

クロ最初から反対していたじゃん――――なんで?


俺は、また思考の海に潜る……。

潜りすぎだって? だって仕方ないじゃん!

足りない頭で、必死に考えているんだからさ!

…………………………………………。

うん、わからん。


自分で、攻撃したら効果ないとか?

まさかね!

それこそ、ご都合主義ってやつでしょうよ!


「なにさわいでるにゃ? 隣でみんな気でもふれたにょかってしんぱいしてるにゃ!」


くっ……相変わらず冷たい娘どもだ。


「あー丁度いい所に、悪いんだけどこのナイフで俺の指を切ってくれる?」


それを聞いたタマちゃんが、慌てて隣の部屋に掛けていった。

隣の部屋では大声で……。


「たいへんにゃ!コータさんがえむだったにゃ!」


――ちょ、俺そんな性癖ないからね!

これは、クロの言葉が本当か、実験したかっただけだから……。


こんなデマを大声で叫ばれたら俺……益々、モテ無くなるじゃん!

アルテッザにまで嫌われたら。泣くぞ!


パタパタとスリッパの音が聞こえ、皆が戻ってきた。


「コータさん!いくら幼女趣味のエムだからって……自傷行為はいけませんよ!」


ぶっ、イアンさん、いくらなんでもそのアニメ声で。

ちょっと萌えるかも……。


そーじゃなくて……なんで自傷行為になってんだよ!

自傷って、自分で傷付ける事でしょうよ!

あれ?俺が依頼したから合っているのか?

なんか……納得いかねぇな。


「コータさん、私信じていますから!」


うん、アルテッザ……ちゃんと理由があるから信じてくれていいよ。


「「思った通りでした」だに!」


あぁ、この二人は本当に駄目だ。何言っても思考が獣だわ。


「そうじゃ無いんだよ!」


わかります。

わかりますって顔で見るのだけは止めて!俺マジ傷つくから!

そして俺は皆に説明した。


「昨晩ね、クロと話してて――俺にクロがかけた加護の話になってね」

「加護ですか?」

「かごってなんにゃ?」

「まだ恥ずかしがっているんですね……」

「クロ様のせいにするのは行けないと思います!」

「竜の加護だに?」


すげー、俺の言葉を正確に理解出来たの……二人しかいねーよ!


「そう、加護。それでねクロが言うには俺は他人に攻撃されても死なない、怪我もしないらしいんだよ」

「それ凄い事じゃないですか!」

「にゃにいってるにょかわからにゃいにゃ!」

「さすが古竜様です!」

「そんな話は、冒険者ギルドでも聞いた事ありませんよ!」

「それは一大事だに!」


うん、さっきよりちょっとだけよくなった。

ちなみに言っている順はみんな、わかったかな?

アルテッザ→タマ→ホロウ→イアン→ポチでした。


「それで実際に俺も、確信が無いからタマちゃんにお願いしたんだよ。俺の指を切ってみてって」


みんな難しい顔をしているが、ホロウだけは何のためらいも無く切りつけて来た。


『キィーン』

ちょ……ホロウさん、危ないから、俺死ぬから……。

え? 今キンっていった――。


「さすが古竜様です!」


はい。本当でしたぁ!

皆、大きく目をあけて驚いている。

イアンさん、その化け物でも見るような目で見るのだけはヤメテ!


「まさか、本当だとは思いもしませんでしたね。コータさんのお嫁さんは幸せですね」


うん。アルテッザ、俺は外傷では死な無いし……。

怪我もしないから、牛馬の様に働けますよ。安心してね!


「コータさんだけずるいだに!」

「??」


ポチ……ズルくない。ずるく無いんだよ。

これが、異世界転移の醍醐味なんだから!

タマちゃんにはまだ早かったね!


「さて……本当だったみたいだし。褒美の魔道具どれにするかな?やっぱあれかな?でもあれ選ぶと――――お前が俺のマスターか!――――

とか言っちゃいそうだし……悩むなぁ……」


「何ぐじゅぐじゅいってるにゃ?」


うん、タマちゃん……ここはスルーってスキルを覚えようね!

そんな会話を娘達としていたら……。

何処に行っていたのか?

クロが帰ってきて言った。


「コータよ、どうやら我の言った意味を、ちゃんと理解したようだな!」

「うん。ちゃんと理解したよ。まさかこんなに強力な加護が掛かっているなんて――いつもクロに気絶させられているから気づかなかったよ」

「がはははぁ、我が自分の加護に負けていたら阿呆ではないか!」


さいですかぁー。


「それで、どの武器を選ぶのか決ったのか?」

「それはまだかな……もう少し考えたいかも?俺に何が出来るかもね」


俺が気を失った事で、その晩はそのままみんなで王城に泊まった。


朝、メイドが呼びに来て食堂へ行くと、皆と一緒にアレフ王子、ローラ王女も一緒に食卓を囲んでいた。


「昨日は大変だったね?!もう体の調子は良く成ったのかい?」

「はい、ご心配をお掛けしてすみません。また王城にまで泊めて頂き有難う御座いました」

「そう、それなら良かった。倒れたと聞いて僕達兄妹と母上も心配していたんだよ」


第一王女は?あ……元々影薄かったわ。

俺の心配より、王女の顔色の方が心配だよね!

え?なんで第一王女に拘るって?


だってローラ姫は……あれだし……。

きっと、あのブルーの瞳は間近で見たらもっと綺麗だよ?


朝食を食べ終わり。

皆で寛いでいる時に、アレフ王子が再度聞いてきた。

何を選ぶか決ったかい?


「はい!」


昨晩、ゆっくり考えたからね。

俺は、自分の聞いた事が無い武器にした。


だって……神関係の武器ってフラグでしょ?


「剣をお願いします!」

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