第26話ピクシードラゴン

 消失した村跡地を――。

クロに乗って再び空へ。

正確な街の位置は視界が暗く分りづらい。

その為、街道沿いを戻る形で飛行している。


「そろそろオルゴナーラ山脈と、オワレスの街を結んで交差している場所に出るぞ!」


 確かそこを右に曲がって真っ直ぐ道形だったな。

オワレスから山脈まで馬車で5日かかる。

そうイアンから聞いたからクロの翼なら後3時間位か?

そんな事を考えていたらクロが何かを視界に捕らえたらしい。


「前方に軍隊らしきものの隊列が縦長に伸びておる様だぞ?」


 軍隊?

こんなに暗く成ってから?

何処かに奇襲でも掛けるのか?


「イアン、この辺りに何かの拠点とか、砦とか軍に狙われる様な物とかあったりする?」

「いいえ?元々この西部は畑作と蚕の養殖が盛んですから、一番近い街、建築物は王都ですよ?」


 じゃぁ王都へ急ぎで向う軍隊なのかな?

誰かを護衛しているとか?

少し降りて様子を見てみようか!


「クロ、そんな事でお願い」

「あい分かった!」


 丘の稜線に隠れる様に、クロと俺達は降りた。

先頭から最後尾まではそんな長く無いな。

やっぱり誰かの護衛か?

クロ、ちょっと見てきてくれる?


「都合よく使いおって。まぁいいわ、使われてやろう!」


 ピクシードラゴンの姿だから羽音もパサリパサリと拍子抜けだ。

――クロの姿が見えなくなって5分。

またパサリパサリと音が聞こえてきたと思いきや……。

体当たりされ吹っ飛ばされた。

今の、何が悪かったんだ?


「ふん!見てきたぞ。あの一団はピクシードラゴン捕獲隊だな。懲りずにまた生贄の少女を連れておったわ。じゃが犬の獣人は居なかったぞ。おったのは人族と猫の獣人の幼女だけだ!」


じゃ違うのか……。


「それきっとタマだに!」


 えっ?

だってポチの妹って事は犬だろ?

何を言っているんだ?

そんな視線を向けたらホロウが――。


「タマちゃんは猫獣人ですよ?」


 と教えてくれた。

えぇぇーじゃぁ血が繋がって無いのか?

俺は混乱してもしかして血繋がってないの?と聞いてみたら。


「ポチの妹だに!!血も繋がっているだに!!」


と……ムキになって言い返された。


「ポチとタマのお父さんが犬獣人で、お母さんが猫獣人だったのです」


過去形って何か寂しい言い回しだよね……。


 この世界では犬と猫でも子供出来るのか。

やっぱり地球とは違うんだな。

そう思っていたらクロから――。


「それは普通の猫と犬なら出来ぬが、ポチ達は獣人だからのぉ」


何、そのご都合主義!

それだとドワーフと、エルフでも子供が出来る事になるじゃん!


「出来るぞ。ただし我が居た時代では、その二種族はかなり仲が悪く今もそのままなら在り得ないだろうがな」


へぇ、何かの小説で読んだまんまなんだな。

おっと。

無駄話していたら軍隊が通り過ぎてしまう。


「で?生贄は分ったけど、何でピクシードラゴンの捕獲隊だと分ったの?」

「うむ、あ奴等、行進しながら愚痴を漏らしておったわ。こんな幼女を連れて夜の強行軍なんて……。本当にピクシードラゴンなんて居るんですかね?だそうだ」


軍の兵隊さん達は、乗り気じゃ無いのか。


「さて我の仕事は終わった。後はお主達5人で何とかしてみよ!」


何とかって……

俺達だけで救出しろと言う事?

夜目も利き難いこの状況で……。


「何、人質の安全確保は我が受け持とう!」


 今の俺達なら簡単に対処出来るだろう!

だと!

また始まったよ。

オーガ戦の再来じゃねーか!


「クロがあー言ったら、もう決定事項な訳だけど――。みんな協力してくれる?」

「でも失敗したら、オワレスのお母さんに迷惑かけちゃうし」


 そうだよな……。

同じ街の兵隊だもん。

もしかしたら知っている奴が、居るかも知れないしね。


「じゃ、イアンは後方の顔がバレない位置から援護ね?」

「俺が先頭に声かけるから、乱戦になったら突撃して来て!」

「「「はい!」だに!」」




「なぁ今晩中に、どこまで行くって聞いている?」


そろそろ足が疲れてきたのか――。

偶に躓きながら兵士が隣の兵士へ声を掛ける。


「そんなもん知るかよ。大体ピクシードラゴンって伝説なんだろう?御伽噺信じてこんな幼女まで用意して――」


馬鹿じゃないの?


「しっ!セグモンド様に聞かれたら不敬罪で……」


首の前に手を出し、手の指先で横に切る動作をする若い兵。



 「俺こんな事をする為に部隊に志願したんじゃ無いんだけど……」

「俺だってそうだよ!」

「大体、代替わりする前の伯爵領はもっと治安も景気も良かったって家のオヤジが言っていたぜ!」

「俺は一昨年、入隊したから昔の事は知らないけど……そうなのか?」

「ああ、先代は税率も温情で普通は30%の所20%だったらしいからな」

「そりゃー安いな」

「だろ?今の伯爵領なんて45%だぜ。どれだけ税取り立てるんだって話だ……」

「でもその税で給金貰っているんだよな?俺達……」

「同じ穴の狢だな!」

「情けないが違いねぇ」


 現代日本では1980年代後半から、始めて税制改革が導入されて導入された当初は私自身も値札を見て購入した商品がレジでは違う値段になっていて困惑する事度々。開始当初3%だった税が今は8%。今後10%と上がる様だが、国の消費税収が3%時点で1.6兆円、現在の8%時点で約17.2兆円である。だがこれでも日本の税率はOECDの中では低い方で世界の平均は19%であるが、社会保障制度等を考えると日本が一概に安いとは言えない――。昔はタバコも1箱200円だったが今は440円……泣

 ――閑話休題。




 「でも伯爵様はピクシードラゴン捕獲してどうするんだろう?いつもの高価な骨董品の収集の延長か?」

「それは無いんじゃねーか。きっと高く売るつもりなんだぜ?」

「その可能性は高いな!オワレスの景気も悪くなっているのに――。あれだけ贅沢していたら、いくら先代までが優秀でもそろそろ底付くんじゃないか?」

「俺、伯爵領が没落したら王都の彼女と店でもやろうかな?」

「いいなぁ、俺の奥さんはオワレスの食堂でウエイトレスだからモロに影響被っちまいそうだ」


 フラグである。

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