第14話記念に……

 アンドレア商会に滞在も――今日で3日目。


いよいよ明日は更に東に向けて出発する事が決まった。

なんで東に決めたか?

そんなのクロに聞いてくれ……。


 イアンは、一応多少の戦闘能力はあるが、俺や獣娘達は戦闘能力皆無だ。

しかし獣娘達は獣特有の運動能力が元から高い。

だから、俺だけ――。

我が目を話した隙にどうなるか分らん様では、おちおち散歩も出来ん。


 ――――と言う、クロの一言でスタンピード発祥の地。

オルゴナーラ山脈に沿って東に向うことになった。

山脈沿いに行けば遭遇したくなくても、魔獣と遭遇するのが理由らしい。

ゲームではLV上げするのに効率とか考えたりしたよ――。

でもまさか、この身で実体験する事になるなんて思わないじゃん!


 生まれてこの方――。

体育の授業と運動会以外で、運動なんてした事無いんだよ?


 父さんの世代は外で草野球やったり、サッカーしたり皆、学校外でも遊んだらしいけど……。


 俺、ハイテクゲーム世代だよ?

友達で集まって何する?

じゃ対戦格闘ゲーム。そんな世代だよ?


 「いつも、ぱそこんとか言う箱でやっていた遊びか。たまに我も見ておったがあの様に倒せばいいのだ!あれは実にこの世界の戦闘と酷似していたぞ」


 指先だけで何でも出来るゲームとリアルを一緒にされてもね……。

そんな言い訳を聞き入れられる筈も無く――。

山脈沿いに東へGO!が決まった瞬間だった。


 そんな事で今日は街最後の日だというのに何もする気が起きない。

心配した獣娘達が部屋にやってきて――。

昼を過ぎた頃に、昨日出来なかった露天巡りをする事になった。


「わー、この串肉おいしいだに!」


 そうニコニコ笑顔で美白肌の頬を目いっぱい膨らませながら食べているのは犬獣人のポチだ。


「本当ですね、特にこの油の甘みが最高です!」


そう言いながら犬歯を見せ付けるのは狼獣人のホロウだ。


「でも、私はもう少しピリカラの方が好きです!」


 そう言うのは、魔法師のイアンだ。

イアンは俺達の中では一番年上だけあって、味覚も大人みたいだ。

見た目ドジっ子キャラの癖に……。

 

 そんな皆の様子をニコニコしながら眺めているのは――。

俺達が滞在している商会の一人娘で、アルテッザだ。

旅の途中では髪をポニーテールにしていたので、

正確な長さは判らなかったが。

街に帰ってからは下ろしている。

ポニーテールって下ろすと、背中の肩甲骨の少し下まで伸びるんだね!

――知らなかった。


 明日で街を出る俺達と残るアルテッザ……。

束の間だったけど、随分仲良くなったものだ。


 アルテッザを初めて見たのは――。

湖の傍で悲鳴を聞いて、様子見をした時だった。

女盗賊――もう名前も忘れた……。に鞭で叩かれていたな――。

鞭の跡はもう消えている。

若い女の子があんな痣とか傷が残っていたら大変だったね。


 襲撃現場では泣きじゃくるアルテッザに――。

声をかけてあげる事も出来なかった。

自分は本当に無力だと、思い知らされたな。


 結局はオルステッドさんは生きていた訳だが……。


 明日でお別れと思うと、少し感情的になっちゃうな。

でも、アルテッザはアンドレア商会の一人娘だ。

さすがにこの先どうなるか分らない。

俺達の旅には付き合せられない。


人数多くなると作者がヘタレなんで、物語を書くのも大変だしね!


 そんな事を考えていたら――。

みんなが雑貨や小物を売っている露天の前に移動していた。

そんな高価なアクセサリーでは無いけど、花柄の銀細工や綺麗な石が嵌め込まれたペンダントなどが売っていた。


「好きなもの1つ選んでいいよ!この街の記念に俺からのプレゼントね」


俺が稼いだお金なんて鉄貨1つも無いのだが……。


 みんなワイワイ言い合いながら髪に付けたり、首にかけ合ったりしている。

胸に……ぐふ。ポチさんの胸に着けると強烈だな――。

 

それぞれ何かの花のペンダントに決めた様だ。

聞いてみたらこの花がプレヴァの花らしい――。

あー、あの桃の味の実がなる花ね!


 俺の分もあった。

勿論、クロの分は無い。

だって大きくなったら首に掛けてもすぐ切れちゃうしね!


 買い物が終わるともう夕方――。陽が沈むのが早い。

この世界では当然電気などは無いから、裕福な家や酒場でもない限りは陽が沈んだら寝る。といった生活習慣になっている様だ。

裕福な貴族だと――光の魔石という魔石で光を作り出して、夜遅くまででも本やお茶会を楽しんだりもしているらしい。


 アンドレア商会では何かの植物油を使った油で明かりを取り――。

酒場などでは安く臭いのきつい動物油で夜を越しているらしい。


 アンドレア商会に戻ると、オルステッドが受付で待っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る