第6話初めての食事と奴隷娘達

 食べ頃になった魚を手に取り――。

まずは、クロの前においた大きな葉っぱの皿の上に置く。

魚を取ってきたのはクロだから1番手だ!

器用に枝の串を押さえながら横からかぶりつく。


「うーむ、油が乗っておるのに、さっぱりした味だのぉ」


そりゃ……何も調味料付けてないんだからさっぱり味だよね!

俺も鱗の部分だけ枝で取り払ってから、中の白身の部分を口に入れる。


「ん!なんかさっぱりしているけど不味くはないね!」


湖の水は思ったよりも綺麗で泥臭くなかった。


「コータの母君の作った鱈の蒸し焼きが懐かしいのぉ」


母さん、オウムに何食べさていたんだよ!


「母さん、料理が得意だったからね」


 湿っぽい気分に浸っていると気絶していた犬の獣人と狼の獣人が目を覚ました。

最初は鼻をピクピク震わせたかと思ったら目がぱっちりと開いた。

さすが獣人……匂いに敏感みたいだ。


「むむ!「ここは……」」


 二人共、気絶する前の洞窟から一転。

目覚めると湖畔だったのだから、思考が止ったようだ……。

言葉が通じるかわからないけど、一応声をかけてみるか。


「やぁ君達、お腹は減ってないかい?」


声をかけられた獣人二人はお互い視線を左右にきょろきょろさせて――。

ようやくこちらに気づいた所で、グルグルっとお腹がなった。


「良かったら沢山焼いたから魚でも食べなよ?もっとも魚しかないけど」

「「あのぉ……ここはいったい、あなたは誰?だに?」」


見事にシンクロした質問が飛び出したが……。

俺の隣で魚を齧っているピクシードラゴンサイズのクロを見て――。


「「あぁあぁーー!ドラゴン!だに!」」


またしてもシンクロ有難うございます。


「あーこっちのドラゴンは俺の、俺のなんだろ?友人?恩人?ペット?のクロです。で俺がコータです」


ペットの部分で、クロにジト目を向けられたが柳に風。


「私達、ピクシードラゴンを捕まえる生贄として盗賊に浚われてきて、それから大きな竜が現れて、あれ?」


クロと俺に視線を行ったりきたりさせながら、あれあれ?と首を傾げている。


「「コータ……さんが私達を助けてくれたの?」だに?」


何から助けたと思っているのかは分らないけど……。

一応、首を縦に振っておく。


「「ありがとうございます!」だに!」


てっきり竜の生贄にされて、食べられると思ったらしい。


 「竜からなら助けたのは俺じゃないよ、そもそも竜は、そこのクロの事だけどね。盗賊に酷い目に合っていた君達を助けただけなんだけど」

「でもそこの竜はピクシードラゴンじゃ、わたし達が襲われたのは10mくらいの大きさの竜でしたよ?」


世間一般にしられている竜って変化出来ないのかな?

なんか話が噛み合わないな――。


 「我はピクシーでは無いぞ!種族で言うならば古竜である」

「「ひえぇぇー竜が喋った!」だに!」

「古竜は御伽噺に出てくる架空の竜だって、ばっちゃんが言ってただに!」

「お伽話も幻も、今そなた等の目の前におるのが真実じゃ」


驚いている2人の獣人の後ろで寝ていた人間の女の子の瞼がピクピク動いた。


「そこの娘も起きておるのは気づいておるわ。まずは起きたらどうじゃ?」


クロにそう声をかけられ流石に寝た振りも限界とばかりに――。

土下座の体制にジャンピングして頭を下げだした。


 「助けて頂き有難うございます。私はトーマズの街の商人の娘でアルテッザと申します」


自己紹介をしていなかった事に気づいた、獣人娘達も続く。


「助けて頂き有難うございます、狼族のホロウです」

「同じく犬族のポチだに、さっきは架空の竜だなんて言って悪かっただに」


奴隷娘じゃないのか?気になった俺は聞いてみた。



 「その首と手足の鎖は奴隷の証だと思ったんだけど違うの?」

「私は商会の行商の旅の途中で、先程の盗賊に襲われ無理やりここに……」

「わたしは獣人の村が盗賊に襲われ隣のポチと一緒にここに連れてこられたのです」

「そーなんだに!」



3人は誘拐されてきたらしい。この世界かなり治安が悪そうだな――。

そんな事を考えていると、クロから思いもよらない発言があった。


「あれらは盗賊なのか、ならば遠慮などせず、一思いに殺してしまえば良かったな」


遠慮とか以前に、グロイ事言うのは俺の情操教育上如何なものかと。


「あーいった輩は放って置けば付け上がり、更なる悪事をするだけだぞ?それにいつまでもあの洞窟に居座られては、我等の住処が決まらぬでは無いか」


そっちが本命かよ!


「まぁ明日まで待って山を降りなければ、盗賊狩りをしようではないか」


 やっぱり狩る気満々なんじゃん!

目の前でピクシードラゴンっぽいクロと俺の会話を聞いていた3人は――。

恐る恐る手を上げ発言を求める。


 「私達はどうなるのでしょう?」

「わたしを食べても美味しくないです!」

「ポチは食べ物じゃないだに」

「俺達はただ困ってそうだったんで助けただけだから、もしお礼をというなら、

この付近の街や村の話を聞かせて貰えればいいかな?」


俺がそう言うと娘達は安心したようで……。

俺が勧めた焼き魚を美味しそうにモグモグ齧りだした。



助けたはいいけど、本当にこの後どうしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る