竜神の加護を持つ少年
石の森は近所です。
ピクシードラゴン編
第1話出会いと突然の別れ
小さな頃から、よく家族で色んな所に遊びにいった。
俺は、遊園地やアトラクション系の方が好きだったけれど、
母さんが、自然が好きな人だった都合上、
森林公園や山歩きに連れて行かれた。
宮城でも、仙台方面は都会の装いだったけど、
自宅があるのは仙台から更に北に70kmも、離れた所だ。
その昔、伊達政宗公が攻め滅ぼした。
城の跡が現代では隠れた桜の名所になっている。
そんな田舎に住んでいても、
森林公園や山歩きが好きな、お母さんを――。
もの好きなものだ……と思ったものだ。
俺が10歳の頃だったか?
そんな両親と、森林公園を散歩していた時に、
遊歩道の脇の畦からゴソゴソと音がした。
春先だった事もあって、
蛇が冬眠から目覚めたか、ハクビジンか鼬?
そう思って注視していたら――。
母が……。
「まぁこんな所にオウムちゃんがいるわ!羽に怪我をしているみたいね、家に連れ帰って、動物病院に連れて行かないと」
「母さんの、もの好きがまた始まった」
父さんは、いつもの事とあきれた様子でそんな事を言う。
「だって可哀想じゃない、弱い動物は保護しないとね」
「そうだな、このまま放って置いたら、鼬の餌にされかねんからな」
まったくもの好きな両親である。
「だけど、オウムは、オカメインコと違って人には懐かないって、
この前読んだ図鑑に書いてあったよ!」
俺がそういうと母が、
「別に、懐かなくてもいいじゃない?怪我が治るまで、保護すればいいんだし」
本当にもの好きだな……。
そうして、家に連れ帰ったのはいいものの……。
結局医者に連れて行く前に、餌をよく食べ、体を休めただけでオウムは元気になった。
そして何度、外に出してあげても、すぐに戻って来る様になった。
「ネットで、調べたんだけど、普通のオウムって、仲間と群れで行動するんですって?!」
「お母さん、それにしては、家から出て行こうとしないよ?これじゃ、引き篭もりみたいじゃん!」
「孝太も、学校で苛められた時に、1週間も引き篭もったでしょ」
なんとも、恥ずかしい過去バナで、息子の心を抉ってくれる。
「それに、全然鳴かないじゃん!声真似とかも、やらないし」
「それは、オカメインコじゃないからかしらね?」
「このオウム、鳴かない癖に、人の事じっと見過ぎで、ちょっと気味が悪いんだよ」
「オウムちゃんも、ちゃんと観察して、自分に害がある人間か?考えているのかもね」
鳥って、そんなに頭が良く、賢い生き物なんだろうか?
鶏なんかは、3歩あるいて、すぐ忘れるとか言われているのに……。
「それより、名前をつけてあげないとね、孝太はどんな名前がいいと思う?」
「ん~黒っぽいからクロで――」
こういう時に、自分の発想力の無さにうんざりする。
「じゃぁ、今日からクロちゃんね!」
「GAGA」
「びっくりしたぁ、ちゃんとクロちゃんも、分かっているみたいね」
鳴いたのには驚いたけど、きっと偶然だ……。
その後は、お腹が空いたときだけ、鳴くようになった。
それから4年――。
俺は、中学でネトゲ研究会なるものに入った。
両親と出かける事も少なくなってきたが……。
別に嫌いになった訳でも、反抗期でもない。
ただ同じ趣味の、友達と遊ぶのが楽しくなっただけだ。
そんなある日、両親が朝いつもの様に、山に散策に出かけようとした所、
珍しくクロが泣き喚いていた――。
今思えば……。
クロにはこれから起きる事が、分かっていたのかもしれない。
いつもの様に、学校で友人とネトゲをしていると――。
校内放送で職員室から呼び出された。
担任の先生の話は、頭が真っ白で覚えてない。
ただ、先生に付き添われて……。
両親が散策に向かった方面にある、市民病院に着き。
白い布を、顔にかけられた。
両親かもわからない物と、対面させられ――。
俺の両親だと医者に言われた事と、
傍に、両親の時計や、山を散策する時に、よく持って行っていた――。
トレッキングポールを、見せられた事だけを……。
今もはっきり覚えている。
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