第43話 新世界の街
点ちゃん1号に乗りこみ上空へと昇る、
この世界は三つの大陸からできており、どの大陸も緑が多い。
ポータルがある大陸はその内で最も大きいもので、所々に街のようなものが見られる。
他のポータルについて情報を手に入れるには、図書館が一番てっとり早いだろう。まあ、街に図書館があるとしてだが。
白いふわふわ魔獣がいる草原に着陸し、1号を収納してからボードに乗りかえる。
ボードで街まで飛ぶつもりだ。
森の上を飛んでいると、点ちゃんの声がした。
『(・ω・)ノ ええと、いいのですか?』
なにが?
『(・ω・)つ その子を連れていって?』
えっ!?
「きゅきゅ~?」(どうしたの?)
「どうしたの」じゃありませんよ!
どうしてついて来ちゃったの?
いつの間にか、ボードの後ろに一匹の白いふわふわ魔獣が乗っている。
『(Pω・) ご主人様を背中に乗せて、ぽんぽんさせてた子みたいですね』
えーっ! あれで懐いちゃったの?
よっぽど遊びに飢えてたんだろうか?
瞬間移動を使って、さっきの草原に戻しておいた方がいいだろう。
そう思った時、魔獣と目が合ってしまった。
ふわふわの毛からのぞいた小さな顔をこてりと傾け、つぶらな黒い目で俺を見ている。
そのキラキラした目を見た時、俺はとりあえず、街まで魔獣を連れていくことにした。
まあ、万一の時は、この子に透明化の魔術を掛ければいいからね。
◇
街が見えてきたので、森の中を通る人気がない道にボードを降ろす。
森を抜ける直前にボードを消し、後は歩くことにした。
ブランとキューには、透明化の魔術を掛けておく。
『キュー』というのは、例の白いふわふわ魔獣につけた名前だよ。鳴き声をそのまま名前にしたんだけどね。
『(*'▽') それでまともな名前になったのかー!』
ええ、どうせそうですよ。
おっ、石造りの外壁か。
アリストを思いだすな。
家族の顔が次々浮かんできて、俺は頭を左右にふった。
今は油断できないからね。
街の外壁には門があり、そこに衛兵風の男が槍を持って立っていた。
もう一人の衛兵が、並んだ人たちをチェックしているようだ。
数人ごとに、門を潜り壁の中へ消えている。
人々の服装は素朴なもので、男性は布でできた長そでシャツ、ズボン、皮の半そでジャケットという服装だ。女性は長そでシャツにスカート、編みこんだジャケットを着ている。
白人っぽい顔の造り、肌の色、ブロンドの髪の毛、アリストに住む人々とそっくりだった。
「次、手形を見せてもらおう」
ヒゲ面の衛兵に話しかけられるが、ここはどうしようか?
とりあえず、異世界から来たっていうのは、隠す方針でいってみるかな。
「シローと言います。
森で白い魔獣に襲われ、そのとき手形を落としてしまいました」
「なっ、なに?!
白い魔獣だと?
どんな魔獣だ?」
俺は高さが五メートルはある石壁を指さした。
「あれより少し小さいくらいでしたよ」
「お、おい!
こんな形じゃなかったか!?」
衛兵が、両手で丸い形を作った。
「ええ、そうです」
「ま、間違いない!
そりゃ、『白い悪魔』だ!
おい、お前、その魔獣がいたのはどこだ?」
「ええと、その場所から……五日は歩きました」
五日というのは、もし本当に歩いたらどのくらい掛かるか、点ちゃんに算出してもらった。
「五日か……安心したぜ。
じゃ、お前はヤツらの生息地『白い悪魔の森』を通ったんだな」
「恐らくそうではないかと」
「その頭の布はなんだ?」
「ああ、これ、俺の一族に伝わる慣習なんですよ」
「ふん、初めて見るな。
とにかく、
おい、ロータス!」
槍を手に立っていた、若い衛兵が近づいてくる。
「こいつ、身分証を無くしたらしい。
手続きをしてやってくれ」
「はい、分かりました」
若い衛兵に連れられ門を潜ると、そこには中世風の街が広がっていた。
地面は舗装されておらず、土がむき出しで、そこかしこに
人通りは思ったより多く、門のところに並んでいた人々のように素朴な服装をしていた。
まるでアリストに帰ってきたようだな。
おれは改めてそう思った。
◇
詰所で、仮の身分証を発行してもらう。出身地は、門の所で俺の前に並んでいたおじさんが話していた村の名を頂いた。
「その恰好、あんた冒険者かい?」
おお! この世界にも冒険者がいるのか!
「ええ、そうです」
「ギルドの場所は知ってるな?」
なんと、ギルドまであるのか!
『(Pω・) やはり、ここも以前はポータルズ世界群だったようですね』
もう、これは間違いないよね。
ああ、衛兵さんの質問に答えなくちゃ。
「……ええと、この街は初めなので」
「そうか。
門から続く大通りを少し行くと、左手にドラゴンの風見鶏が屋根に乗った建物があるから、それがギルドだ」
「ありがとうございます」
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