第3部 真竜廟ダンジョン

第8話 天竜国のダンジョン1


 俺と点ちゃんは、夕方までに山脈からこちらの『枯れクズ』平野を全て処理した。

 広場程度のものは、まだ放置しているが、それは天竜に任せることにする。


 洞窟に帰ると、皆は思い思いに過ごしていた。場所は赤竜の暴れん坊が乱入してきた、あの広い空間だ。


 リーヴァスさんは、ポル、ミミに剣術の指導をしている。コリーダがそれに参加しているのには、少し驚いた。

 ナル、メルは、コルナ先生からボードを習っている。イオも初心者用ボードを練習中だ。人化できる竜の子供は、皆そこに集まっている。


 俺の姿を見つけた長が小走りに近づいてくる。彼は再び人化していた。


「シロー殿、首尾はどうじゃった?」


「ええ、広い場所は、全部終わらせましたよ」


「有難い」


 彼は俺の手を両手でぐっと握った。


「これが上手くいくと、この世界は救われたも同然じゃ」


「ああ、『枯れクズ』の事は、もう解決できますよ」


「ははは、不思議じゃな。

 お主が言うと、本当にそれができるような気がするぞ。

 おお、そうじゃ。

 お主の力を見て思いついた事がもう一つあるのじゃ。

 食事の後でまた部屋に来てくれるか?」


「分かりました。

 場所は分かりますから、案内は不要ですよ」


「そうか。

 では、食事の後、部屋で待っておるからな。

 戦闘力が高い者を連れて来るといい」


「ええ、そうします」


 長は俺の両肩をポンポンと叩くと、大部屋を出ていった。


 ◇


 夕食の後、俺はリーヴァスさん、ルル、コルナ、ミミ、ポルを連れ、長の部屋にやってきた。


 ドアが無いので、入り口付近で声を掛けてから中に入る。すでに三枚の敷物が置かれており、その一枚に長が座っていた。


「よう参られた。

 ささ、お座り下され」


 六人が三人ずつに分かれ、二枚の敷物に座る。


「シロー殿、森の事、本当にありがとうございました」


「いえ、こちらにも利があることなのでお気にせず」


「そう言うて下さるか。

 誠にかたじけない」


「ところで、お話と言うのは……」


「おお、そうそう。

 今日、森の上を飛んでおるときに、前方に山があるのに気づかれたか?」


「ええ、ありましたね」


「あの山には、いくつかダンジョンがあるのじゃ」


「ダンジョン!」

「やった!」


 ミミとポルから歓声が上がる。


「我ら竜には通路が小さすぎるので、時々人化した若いのが挑んでおる」


 それなら、わざわざ俺たちを呼ばなくてもいいと思うが……。


「その中の一つに、真竜様に由来すると言われるダンジョンがあるのじゃ」


「ほう、それは興味深いですな」


 リーヴァスさんが、気を引かれたようだ。真竜に由来するということは、ナルとメルに関係するということだからね。


「今まで若いのが挑戦してきたのじゃが、現れる魔獣が強くての。

 一番高く上がれたもので、第三層がやっとじゃ」


「何層あるか分かってないんですね?」


「分かっておらぬ。

 恐らく五層くらいではないかと思うのじゃが」


「どうしてそう思われるのですか?」


 これはミミからの質問だ。


「他のダンジョンが三層か四層なので、そう思うたのじゃ」


 なるほどね。他のダンジョンは、一番上までクリアしてるのか。


「ダンジョンなのに、上がるのですか?」


 ポルが尋ねる。確か、パンゲア世界やグレイル世界のダンジョンは、地下に伸びていると聞いたことがある。


「天竜国のダンジョンは、山のふもとに入り口があっての。

 そこから斜めに上がっていく洞窟をダンジョンと呼んでおる」


「洞窟は枝分かれしていますか?」


 ルルらしい、具体的な質問だ。


「数は少ないが、枝分かれしとるのもいくつかあるぞ。

 洞窟沿いの小部屋なら無数にある。

 魔獣は、そこから出てくるものが多いのじゃ」


「長も入ったことがあるのですか?」


 尋ねてみる。


「ああ、若いころに数度な。

 何度か危ない目に遭うてな。

 それっきり行かんようになってしもうた」


「ダンジョンに入ったことがある方から、話をうかがってもいいですか?」


 これは、コルナからの質問だね。


「どうぞ遠慮なく聞いてくだされ。

 若い者には、そう伝えておきますゆえ」


 俺たちは、話しあった末、若い竜から情報を仕入れた後、ダンジョン攻略に臨むかどうか決めることにした。

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