第3部 お土産とハプニング

第6話 お土産探し


 俺は、故郷の里山さとやまにある、大好きなキャンプサイトで目を覚ました。


 森の中での目覚めは、やはり最高だった。

 傍らには小川が流れており、原生林が取りかこんでいる。小川の水で顔を洗う。もう、かなり水が冷たくなっていた。


 点ちゃん収納に異世界のアウトドアグッズをしまうと、俺は今日の計画を頭に思いうかべていた。

 恐らく、あと一日もせずにポータルが開きそうだ。この予感は、神樹様から頂いた「未来予知(弱)」の力によるみたいだ。


 俺は点ちゃん1号に乗りこみ、日本全域が視界に入るところまで上昇すると、ちょっと考えてからある町を選んだ。

 自分を透明化し、一気に地上に降りていく。


 着地したのは、ある繁華街だった。わざと治安が悪い場所を選んである。しかも、その裏通りだ。昼間でも、きっと彼らがいるにちがいない。


「おい、変わった格好の兄ちゃん」


「はい、なんでしょう?」


「ボクたち、お金落しちゃって、電車に乗れないの。

 一万円貸してくんない?」


「ああ、ありがとう。

 一万円、貸してくれるんですか」


 俺は、そう言うと、点魔法で奴らを丸裸にした。


「な、なんだこれ! 

 どうなってる!」


「はい、一万円、借りましたよ。

 残りは、返しますね」


 俺は、姿を消す。

 これを繰りかえし、それほど時間を掛けずに、十分な資金を稼ぐことができた。


「百万円」って言ってきた者は、有り金で勘弁してあげた。


 いや~、チン〇ラは、金払いがいいね。


 ◇


 俺は家で待っているみんなに、お土産を買って帰ろうと思ったが、よく考えると現金の持ちあわせが無かった。


 多分、三兆円くらいする宝石は持っているけれど、この世界では買い手もつかないだろう。こうして、俺は、チン〇ラ貯金から、お金をおろすことにした。

 資金ができたので、後は買い物だ。


 人通りが多い、大通りに出る。

 デパートに入ることにした。久しぶりのデパート内部は、キラキラして目が痛い程だった。そういえば、電飾とかない世界にいたんだな。そういうことに、今さらながら気づく。


 ナルとメルのために、ぬいぐるみをいくつか買う。向こうにも、ぬいぐるみはあるんだけれど、なんかいい加減な作りなんだよね。

 そういえば、サンプルを持ちかえり、ポンポコ商会で、作ってみるのもいいかもね。

 ぬいぐるみは、追加でいくつか買いたしておいた。


 歩いていると、女子高校生らしい二人がこちらを見ている。点魔法を飛ばすと、こんな会話をしていた。


「ねえねえ、あれってコスプレかな」

「バーカ、あんな地味なコスプレないでしょ」


 冒険者姿って、そう見られるのか。地味なコスプレねえ。


 ◇


 次は、宝飾品のコーナーへ行った。

 ルル、コルナ、コリーダのために、それぞれに似合いそうなものを選ぶ。異世界の宝飾品は、大ぶりな物が多いから、小さく繊細なものがいいだろう。

 リーヴァスさんへのお土産には悩んだが、和装の店で甚兵衛を買うことにした。加藤のおじさんが、いつも家で着ていて、「これ、楽なんだよ」って言ってたからな。

 俺は思いついて、本屋にも立ちよった。ルルがこの世界の事に興味を持っていたからね。


 ◇


 最後にデパ地下に降り、チョコレートなど、お菓子類を大量に買う。異世界のお菓子も美味しいんだけど、種類が少ないんだよね。ここにあるケーキの飾りつけとか見たら、きっとびっくりするぞ、みんな。保冷剤を多めに入れてもらうと、俺は、デパートを後にした。


 確か今日は平日のはずだから、学校で林先生に挨拶してから、異世界に戻ろう。


 俺は、故郷の町へ向かった。

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