68~反撃、そして~・3

「どいつもコイツもッ……鼻につくンだよ! 近ヅクんじゃねェエエエエ!」


 テラはやけくそとばかりにさらに大量の魔物を呼び出し、場を蠢く異形で埋め尽くす。


「にゃんとっ!?」

「キリがないわね……」

「おいおい、身動きとれねえぞっ」


 一体一体はもはやカカオたちの敵ではないが、動きを封じるほどの数となれば話は別だ。


「く、こう数が多くては……っ」

「集中させてくれないよ!」


 術士も詠唱の時間を稼ぐことが叶わず、一瞬仲間たちに焦りの色が生まれる。


 その時……


「地面がダメならッ!」


 強引に魔物の頭を踏みつけ、軽やかに跳んだのはパンキッドだった。

 長い滞空時間、身を翻しながらトンファーの先端を飾る丸い石に己の気を集中させ、そして、


「いくよ! はぁぁぁぁッ!」


 気合いをこめた叫びと共に仲間に群がる魔物目掛けて気弾を放つ。

 広い戦場に散らばる仲間全員とまではいかなかったが、数人の拘束が外れ、自由になった彼らが再び反撃に移る。

 それを見届けたパンキッドは着地の勢いでもう一体踏みつけると、くるりと踵を返した。


「いっちょあがり!」

「やるね。お陰で助かったよ」


 シーフォンが笑顔で差し出した手に、パンキッドも笑って応え、パァンと手を打ち鳴らす心地よい音が響く。


「オマエらも……アタシの物語にいなかッタ異物……」


 地を這うような低い声で呻くテラ。

 シーフォンもまた、シブースト村でのことでテラの計画を狂わせた一人だった。


「アンタ、自分だけが主人公だと思ってんのかい?」

「前回とやらがどうだか知らないけど、今回は僕が参加している以上、僕の物語なんだ。ここにいるみんなが、それぞれの物語の主人公さ」


 言いながらシーフォンはスリングショットを構え、残った魔物に狙いを定める。


「さあ、道を開けるよ!」

「めでたしめでたしへの道、だね!」


 二人の声を皮切りに、仲間たちが一斉に敵を倒し始める。


 彼らが作る“道”は後方へ……


「……いけるか、メリーゼ?」

「はい……!」


 まだ少しふらつきながら立ち上がるメリーゼに、カカオが手を差し伸べる。

 彼の支えでしっかりと足を踏み締め、視線の先に宿敵を捉え。


「みんなが拓いてくれた道……今なら、これなら……!」


 その瞬間、メリーゼの身体を淡い緑の光が包む。

 カカオが自ら編み出した術でその身に風の力を宿らせたのだ。


「メリーゼ、翔べ!」

「ええ!」


 メリーゼの背に、風のマナを具現化させた光の翼が生える。


「これがわたしの、全てです!」


 空中に無数の氷塊を浮かべ、地を蹴ると、少女は一気に加速した。

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