33~消えない罪~・おまけスキット

~不気味な人形達~


モカ「あいつら、なんか気持ち悪かったねえ……いきなり変な動きになるし、言葉喋んなくなるし、やばやばのやばだよ!」

クローテ「だがその後は戦闘能力が格段に上がっていた……あまり馬鹿にはできない状態だな」

アングレーズ「暴走……かしらね」

カカオ「けど、本当に使い捨てなんだな」

ガレ「一度暴走すればその後は言語も忘れ、理性ある振る舞いもできず……情けをかけるつもりはござらぬが、哀れな姿でござるな」

カカオ「作り出されて言葉や感情もあって、自分ってものがあった以上、あれはもう生命だとオレは思うんだけどな……」

メリーゼ「カカオ君……」

クローテ「そう感じたからこそ、お前が引導を渡したんだな」

カカオ「ただの自己満足みたいなものだけどな」

クローテ「どのみち倒すべき敵だ。そうする必要があった」

カカオ「……うん」



~暴れ放題?~


カカオ「そういやパンキッドはあの空間で戦うの、初めてだったな」

パンキッド「びっくりしたよ。急に周りの景色が消えてさ」

アングレーズ「不思議な場所よねえ。何もないようで、どこまでも広がってるんだから」

ガレ「そしていくら暴れても外には影響を及ぼさない……時空干渉を止めるため過去の世界で行動するそれがしたちは、何かと助けられてきたのでござる」

クローテ「あと、本当の内緒話ができるな。いくら聴力に優れていても、どれだけ近くに潜んでいても、あの空間の中に入られたら聞かれることはない」

ガレ「盗み聞きは破廉恥でござるよ、クローテどの?」

クローテ「う、うるさいな」

モカ「何にせよ、暴れ放題って聞いたら張り切らない訳ないよねえ」

パンキッド「ああ! 闘技場でもあんまモノをブッ壊さないようにたまに言われてたからね!」

メリーゼ「壊してたんですね……」

パンキッド「あまりやると賞金が減っちまうからさあ……その点、あそこは思いっきりやれていいね!」

モカ「うわ、とびっきりの笑顔……」

アングレーズ「爽やかな破壊神ねえ」



~守るための戦い~


パンキッド「これが、守るための戦い……守るべきものがあるから、拳を振るうんだ……」

アングレーズ「あら、そういうのは初めて?」

パンキッド「アタシが守ってたのはせいぜい自分の生活費さね。アンタらみたいに大層な理由で戦ったことはないよ」

モカ「ま、この平和な時代みんなそんなモンじゃない? 騎士団とかならともかく」

ガレ「それが普通でござるな」

パンキッド「けど、まあ……なんていうか、いいもんだね。前よりも更に強くなれそうな気がする。カカオやアンタらの強さの理由がわかったよ」

カカオ「負けられないからな」

クローテ「負ければ時空干渉により連鎖的に世界は滅ぶ……そんな水際で戦っているんだ」

パンキッド「ギリギリの戦いなんだね……普段のノリからは想像もつかないけど」

モカ「ゆるいからねえ」

ガレ「そうでござるなあ」

クローテ「私はゆるくやっているつもりはないぞ。ゆるいのはお前達だろう」

カカオ「いいんだよ、ゆるくて。戦ってない時ぐらいそうしてないと、いつか潰れちまうぞ」

クローテ「む……」

ガレ「そうでござる! クローテどのは眉間のシワとかやめた方がいいでござるよー」

クローテ「やめろ、のばすな!」

モカ「……クロ兄もだいぶゆるくなったよねえ」

メリーゼ「うふふ、そうね」



~旅芸人一座~


カカオ「旅芸人一座、か……」

メリーゼ「確かに、見ようによってはそう見えちゃうかもしれませんね」

アングレーズ「統一感ないものねぇ、あたし達」

モカ「だからって、傭兵の可能性もあるのになんでそうなるかなあ?」

カカオ「お前が一番芸人っぽいだろ。その箱とか」

クローテ「鳥や風船が出てもおかしくないからな」

モカ「いやそんなセコい仕掛けしてないから!」

アングレーズ「神子姫の衣装だって踊り子に見えるわよ。儀式で踊るんだから実際そうなんだけど」

ガレ「それがしも目立つ外見でござるからなあ……」

カカオ「そんな集団の中に普通に騎士までいるからもう訳わかんないよな」

モカ「なんか名乗るのに困ったら旅芸人でいいんじゃない?」

カカオ「いや、鍛冶職人って名乗らせてくれよ!」

パンキッド「いや、地味にそれも疑わしいから……」



~グラッセという名~


グラッセ「ああ、そうか……」

メリーゼ「どうかしましたか?」

グラッセ「いや、俺の名前……確か古い言葉で氷って意味があったとか聞いたことがあるんだが」

メリーゼ「はい。古代アラムンド……お父様の時代よりさらに古い、一部の地域で使われていた言葉だって聞きました」

クローテ「その言語は今では使われていませんが、そこから名付けることは多いようですね」

グラッセ「どうして、グラッセになったのか……わかったような気がしてな。いや、思い出したというべきか」

クローテ「?」

メリーゼ「どうしてですか?」

グラッセ「……秘密だ」

メリーゼ「えっ」

カカオ「おっさん、そこまで言ってそれはねーよ!」

グラッセ「おっさんではない」

カカオ「おっさーん!」

グラッセ「うるさい」



~時精霊は見ていた~


ランシッド『グラッセ……変えられないはずの過去を変えたくてついて来たのかと思ってたけど』

グラッセ「過去を変えるのは、今の俺を否定することになるだろう? それに、未来を知る者ではなくこの時代を生きる者が現在を作る。俺が何をしたところで、あのお節介女は止められなかっただろう」

ランシッド『残る手段は当時の自分自身を消すこと……だけど、自分に直接干渉はできないからね』

グラッセ「残念ながらな」

ランシッド『けど、それならわざわざ過去に来て、彼女を抱き締めたのはどうしてだい?』

グラッセ「なっ……貴様、覗いていたのか!?」

ランシッド『みんな普通に実体化した俺達と接してるから忘れられがちだけど精霊って本来はほとんどの人には気配とか感じられないんだよ?』

グラッセ「ぬっ……」

ランシッド『いやまあ、あれぐらいならいいけどね。実際、未来に影響はなかったし……オグマと違って意外と情熱的だなぁって』

メリーゼ「お父様、グラッセ隊長、何のお話ですか?」

グラッセ「なっ、なんでもない! くそ、油断ならない奴め……」

ランシッド『生前の評価は抜け目ない王様だったからね☆』

メリーゼ「?」

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