26~願いの腕輪~・おまけスキット

~カレンズ村のその後~


クローテ「オアシスからゴタゴタが続いてしまったが、まさかカレンズ村にしばらく滞在することになるとは……」

アングレーズ「だってオアシスから一番近いのはカレンズ村ですもの」

ブオル「お前さん達を休ませるのに、場所を選んでる余裕がなかったんだ。緊急事態だし、どうにかして泊めて貰おうと思っていたんだが……」

カカオ「お前を見て、カレンズの人達が村を救った英雄の息子だって言ったんだよ」

メリーゼ「それで宿代はいらない、いくらでもいていいって」

ブオル「あれにはびっくりしたな。カレンズ村っていったら余所者に冷たく聖依獣を忌み嫌うことで有名だったから」

クローテ「英雄……父上が……」

カカオ「お前の親父さん、すげーな」

ガレ「自慢のお父上でござるな!」

クローテ「……ああ」



~デューと別れて~


カカオ「デューさん、行っちゃったな」

ブオル「やれやれ、これでいちいちブオル子さんって呼ばれなくて済む」

モカ「なにげに仲良かったね、騎士団長繋がりで」

ブオル「まあ、話してて気持ちの良い奴だったよ」

ランシッド『嫌味とかネチネチした部分はないからね、デューは』

アングレーズ「ある意味ねちっこそうに見えたけど……」

カカオ「ある意味ってなんだ?」

メリーゼ「えーと……なんでしょう?」

ランシッド『……美人を見る時の目、とかかな』

モカ「あれがなきゃ割とイケオジなんだけどねぇ。一応時と場所と相手は選んでるらしいけど」

ガレ「フケツでござるー」

カカオ「また、会えるかな……」

モカ「そのうちひょっこり出てくるっしょ」

カカオ「そうだな。きっとまた」

メリーゼ「はい、きっと」



~ふたたび闘技場都市~


カカオ「町の中心に闘技場……間近で見るとすげえ……」

ランシッド『前回立ち寄った時はほんとに立ち寄っただけだったもんねえ』

アングレーズ「町の特性上、荒っぽい人も多いから気を付けてね」

モカ「その辺の路地裏とかふらふら入ったら危なそう……」

ガレ「モカどのはその箱の紐を引けばだいたい解決しそうでござるな」

カカオ「っていうか、その辺の暴漢にやられちまいそうな奴が一人もいないぞ……」

ブオル「たぶん俺と一緒だったらそもそも暴漢が寄ってこないと思う……」

アングレーズ「なんか、大丈夫そうね?」

クローテ「いや、油断は大敵だ。万が一のことがないよう、気を引き締めていこう」

ガレ「それがしもばっちり警戒するでござる!」

アングレーズ「真面目ねえ」



~手を引いて~


メリーゼ「カカオ君、いきましょう!」

カカオ「お、おいメリーゼ、そんな引っ張るなって!」


モカ「……手、つないだね。ごく自然に」

アングレーズ「引っ張って行っちゃったわね」

ガレ「これはアレでござるな。距離が近すぎて逆に意識してない幼馴染みでござるな」

クローテ「て、的確だな……」

ランシッド『このビミョーな距離が続いてるんだよねえ』

ブオル「父親としては複雑ですか」

ランシッド『なんつーか、生殺し?』

アングレーズ「いっそひとおもいにくっついてくれ、って?」

ランシッド『ちちち違うし! メリーゼに彼氏とか百年早いし!』

モカ「一生無理じゃんそれ!」

ガレ「諦めて応援する方が良いと思うのでござるが……」

ブオル「娘の花嫁姿を夢見るのもいいもんっすよー? うちは息子だったから花婿だけど」

ランシッド『見たいけど見たくないぃー!』

モカ「時空の精霊が駄々っ子してるよ……」

ブオル「こうなるとダメだなあ、この人……」



~敏感な人達~


クローテ「……」

ガレ「うう、すごい熱気と空気でござる……」

ブオル「ほら、売店で飲み物買ってきたぞ」

クローテ「ありがとう、ございます」

ガレ「かたじけない……」

モカ「ふたりは五感が優れてるって聞いたけど、便利なことばっかりでもないんだねぇ」

アングレーズ「いろいろ感じ過ぎちゃうのね」

メリーゼ「やっぱり医務室で休んだ方が……」

ブオル「倒れてからじゃ遅いぞ」

クローテ「そうなる前にちゃんと言いますから」

ガレ「心配は無用でござるよ」

アングレーズ「あなた達、つい先日心配させたばっかりじゃない」

クローテ「うっ」

ガレ「ぐぬぅ」

ブオル「それを出されちゃ何も言えないな、ふたりとも」

クローテ「き、気を付けます……」

ガレ「でござる……」



~いろいろあるよ~


モカ「闘技場の売店は面白いねえ」

ブオル「観戦用の飲食物も種類が豊富だし、応援グッズにパンフレット、こっちは……女の子の人形?」

モカ「最近現れた闘技場のアイドルのフィギュアだって」

ブオル「へえぇ、なんでもあるなあ」

アングレーズ「商魂たくましいわねぇ」

モカ「ボクあれ食べたいな、ポップコーン!」

ブオル「観ながら食べるのにちょうどいいな。あとメリーゼにクレープでも買っていこうか」

アングレーズ「試合に出られなかったこと、態度に出さないようにしてるけど拗ねてるものね……あら?」

ブオル「どうした?」

アングレーズ「こっちには水辺の乙女さんのフィギュアがあるわよ。二十年前に闘技場に現れた女神様、ですって」

ブオル「えっ……なんで大精霊がそんなことに?」

モカ「あっ、ねえ見てこれ!」

ブオル「これは……仮面つけてるけどなんかどっかで見たことある感じのじいさんの、ブロマイド……」

モカ「二十年前に闘技場で大暴れした謎の老人、マスク・ド・グランマニエだって」

ブオル「何やってんだあの人!?」

モカ「待って、二十年前に何があったの……?」

ブオル「知りたくない。特に後者」

アングレーズ「うふふ、見なかったことにしましょうか」

モカ「みんな待ってるし、早く席に戻らないとねー」

ブオル「そ、そうだな……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る