18~頼れる仲間~・3

 そこからは大した妨害もなく、すんなりとカカオ達と合流できた。


「みんな、無事かっ……メリーゼ!?」

「メリーゼ姉!」


 一足先に合流地点で待っていたカカオ達は、ブオルに抱き抱えられたメリーゼの姿に驚きの声をあげた。


「お、おいおっさん! 何があったんだよ!」

「すまん、カカオ……」


 掴みかかりそうな勢いのカカオにブオルは先ほどの出来事……倒したと思った魔物が襲い掛かってきて、消滅間際にメリーゼに何かしたらしいことを話し、彼女を守れなかったと頭を下げた。


「ブオル殿……メリーゼも一人の騎士です。自分の身は自分で守る。ましてあの性格だ……貴方がそのように責任を感じる事は、彼女も望んでいないでしょう」

「クローテ……」


 クローテがブオルに歩み寄り、彼を見上げると、


「そ……うです」


 メリーゼが微かに目を開け、苦しげな声を発した。


「クローテくんの、言う通り……わ、たしが、油断をしたから……」

「メリーゼ、喋るな! これは毒にやられているのか……今解毒を、」

「どけ、クローテ!」


 解毒の術をかけようとしたクローテを押し退け、カカオがメリーゼに向けて手をかざす。


「カカオ、何を……!」

「カカオ君……?」


 意識を集中させると、ぽわ、と淡い輝きが彼のてのひらに生じ、光がメリーゼの中に浸透していく。


「あ……」


 あたたかい、優しいものがすうっと入り込んでくる感覚。

 次いでメリーゼは己の身を蝕む毒素が消えて、体が楽になっていくのを感じた。


「苦しく、ない……動ける……?」

「本当か、お嬢ちゃん!?」


 ありがとうございます、もう大丈夫ですとブオルの腕から降りると、メリーゼの足取りもまだふらついてはいるものの、意識はしっかりしていた。


「カカオ兄ってば、治癒術使えたんだっけ?」

「いや、今のは……気功術でござるな」


 モカの質問には本人ではなくガレが答える。

 いつの間にそんな術を、と考えた一同が辿り着いたのはマンジュの里でカカオが仲間達に隠れひとり修行をしていたらしい時のことだった。


「カカオ君、もしかしてイシェルナさんに教わったのって……」

「い、いやあ、治癒術でクローテに頼りっきりっていうのもあれかなって思ってな……今回みたいに離ればなれになることもあるかもしれねーし」


 出来ることは増やしておいた方がいいだろ、と語るカカオは照れ臭いのかメリーゼから顔をそらし、頬を掻いた。


「カカオがそんな風に考えて努力するなんてな」

『いえ、彼はもともと真っ直ぐな努力家さんですよ』

「……それもそうだった」


 やれやれ、とクローテが溜め息をつく横で、風精霊がくすくすと笑う。


「でもクロ兄、今は自分がやる方が確実だったのに突き飛ばされちゃって、いつもみたいに怒らないの?」

「いいんだ、モカ。貴重なものが見られたじゃないか」


 色素の薄い長い睫毛に縁取られた青藍の瞳が見つめる先にはメリーゼに笑顔を向けられ、赤面するカカオがいたのだが……


「まあ確かに、カカオの術だけだと不安だから後で私もメリーゼに治癒術をかけておこう」

「素直じゃないでござるなあ」

「そうだなあ」


 大人達にそう言われてしまえば、今度はクローテが頬を染めることになってしまった。

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