12~新しい力~・おまけスキット

~人間だったモノ~


メリーゼ「人間が魔物と融合してしまうなんて……」

ランシッド『通常の攻撃では死なない、マナを喰らい穢す、そのふたつも充分恐ろしい特徴だけど……“総てに餓えし者”やその眷属の怖さは、これなんだよ』

カカオ「オレ達も取り憑かれたらああなっちまうのか?」

ランシッド『強い抵抗力があれば振り払えるかもしれないけど……ヤツに同調しやすい負の感情が膨らんでいたり、意識のない時に取り憑かれたら危険だね』

ブオル「あの男はまさしく、うってつけだった訳ですね」

モカ「うへぇ……」

ブオル「そういやモラセス様も過去で魔物化してましたね」

カカオ「あっ、けど今は何ともないってことは元に戻せるのか」

ランシッド『自力で振りほどくか浄化の力があれば可能だけど……モラセスの場合はちょっと特殊かな』

ブオル「特殊?」

ランシッド『ある意味化け物だよね、誉め言葉的な意味で……』

ブオル「……?」




~王として~


クローテ「守るべき民を焼き払っておいて、か……」

メリーゼ「あんな冷たい目をしたお父様、初めて見ました……」

ブオル「そりゃあ、元は王様だからな」

モカ「王様……」

ブオル「貧民街なんていう格差の象徴があるのも為政者の力不足だが、ああいう奴がいることも原因の一端だろう」

クローテ「おまけに同じ街に生きる人間を貧富の差で見下し、その住まいを焼き払い、人の命を弄んだ」

メリーゼ「あんなことができるなんて……」

ランシッド『善人ばかりじゃない。綺麗なだけじゃないんだ、世界は』

メリーゼ「……」

ブオル「それでも、信じたくなるもんな。その気持ちは大事なものだぞ、お嬢ちゃん」

メリーゼ「ブオルさん……ありがとうございます」



~コンビネーション~


モカ「幼馴染みトリオ、さすがのコンビネーションだよねぇ」

ブオル「うん、大したもんだ!」

カカオ「なんか照れるなー」

クローテ「我々が合わせてやってるだけだ」

カカオ「なっ……そういうこと言うかよ!?」

メリーゼ「ま、まあまあ……カカオ君にはわたしやクローテ君にないものがありますから」

クローテ「野性の勘とかな」

カカオ「誰が山育ちのサルだ!」

モカ「カカオ兄、誰もそこまで言ってないよ」

ブオル「カカオの動きはいわゆる我流で騎士団のようなきっちりした型がないが、なかなかのものだ。野性というより天性って言った方がいいかもなあ」

カカオ「ブオルのおっちゃん……!」

ブオル「鍛練を積めばいい戦士になれるかもな!」

モカ「そっちの方が才能あったりして」

カカオ「やっ、やだー! オレはじいちゃんみたいな職人になりたいんだぁー!」

クローテ「やれやれ……」


~温度差~


カカオ「……なぁ、あんな事があってこう言うのもなんだけどさ」

モカ「カカオ兄、たぶんボクの言いたいことも同じだよ」

メリーゼ「え、ええ、わたしも……」

クローテ「……」

ブオル「さっ……」

カカオ「寒かったぁぁぁ!」

ランシッド『時空転移でイシェルナの過去に飛んだのはいいけど、北大陸の街だったからねぇ』

メリーゼ「時間も場所もかなり飛びましたね……」

ブオル「マンジュとはえらい差だ……」

カカオ「もー言ってくれよ! そしたら防寒対策していくから!」

ランシッド『一刻を争う時にそんな悠長なこと言ってられないよ!』

メリーゼ「それはわかりますけど、今回は極端過ぎました……」

モカ「せめて心の準備だけでもさせてぇー!」

ランシッド『わかったわかった、次は気を付けるよ』




~長い髪の理由~


カカオ「なぁ、クローテ」

クローテ「なんだ?」

カカオ「その……女と間違われるの嫌なのはわかるけど、だったら髪切ったらどうだ?」

クローテ「断る」

ブオル「何か理由があるんだな」

クローテ「……願掛け、というか……」

モカ「クロ兄の口からそういう言葉が出るの、珍しいねぇ」

カカオ「なんか意外だ」

クローテ「こ、この話は終わりだ!」

モカ「えぇー、もっと聞きたーいー」

ブオル「聞きたーいー」

クローテ「ブ、ブオル殿まで……」

ブオル「いやぁ、つい」

クローテ「……あまりペラペラと人に話すのは好きじゃないんです」

カカオ「秘かに憧れてる人がいる、とか?」

クローテ「!」

カカオ「なんだ、そういうことかよ」

クローテ「カカオ!」

モカ「ありゃ、顔真っ赤」

ブオル「可愛いとこあるよなぁ」



~男として、騎士として~


ブオル「ク……クローテ君、ちょっといいかい?」

クローテ「なんでしょうか?」

ブオル「魔物にトドメを刺したあの一撃なんだけど……」

クローテ「ああ、咄嗟のこととはいえ騎士として相応しくない攻撃でしたね。見苦しい所をお見せしました」

ランシッド『いやそこよりもあまりにも容赦ないっていうか、よく同じ男にあんなことできるねってさ!?』

クローテ「どうして二人が涙目なんですか」

ブオル「そりゃあ、あんなもの見ちゃったらさあ!」

ランシッド『実体ない精霊だけどないはずのモノが久々にヒュンってしたから!』

モカ「ボク達にはわからない感覚だねぇ、メリーゼ姉」

メリーゼ「え、えーと……」

クローテ「むしろ同じ男だからこそ、でしょう?」

ランシッド『やだ、恐ろしい子……!』

ブオル「信じられないわ!?」

カカオ「おっちゃん、ブオル子さんが出てるぞ……」


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