第9話
欲しかったものは、いつになったら手に入るんだろう。
そんなことばかり、考えていた気がする。
ないものねだりの毎日だった。寄せた期待を取り消して、諦観と憤激に身を任せて、この身を引き裂いて。押し寄せる痛みを抱き寄せて、心が麻痺するのを待ち続けていた。
幾度となく死を重ねた。そしてその度にコンテニューして何事もなかったかのように振舞って、それが私にとっての平穏だからと言い聞かせて、そうやって生きてきた。
私と”私”がいて、“私”はいつも私を見ていた。他人事のように、観察して分析して「ああまた死んだのか」とつまらない感想を抱いて、訪れる私に問いかけて、それでもやっぱり“やり直し”を提案する。
それを無限に積み重ねて、その中で生まれた愛情も信頼もほんの少しの楽しさも、全部ひっくるめて廃棄処分だ。それが、私が決めたこと。彼女がよしとしたこと。それを実行する、私。
ごめんなさい。
私は言う。
何がいけなくて、誰のせいで、どうすればよかったのか、私にはわからない。
もう嫌だ、と言って私は死んで、生まれ変わってやり直す。それまでの感情の一切を殺して、切り替わる世界に追いつくように、乗り換えて、乗り越えて、それを繰り返してそんな下らないコンテニューを人生と呼んだ。私はきっと愚か者で、より良い方法なんてどうでもよくて、いつしか慣れ親しんだそのやり方を肯定してそれに拘泥していた。
けれど、それももう終わり。
そう、終わらせ、なければ。
なければならない。
全部を清算しよう。
なにもかも。
すべて。
そうして私は自分を殺す。
呼吸と言葉を封じ込めて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます