2-21【静かな雨音 9:~ルブルムからの商談 前編~】



「・・・・ふむ」


 俺の目の前でヤモリがそんな事を言いながら、頭をひねる。


「ふ・・・む」


 身動きの取れない俺の目の前で、ヤモリがそんな事を言いながら頭を更に逆に捻る。


「わからん」


 やがてヤモリはそう言うと、あっけらかんとした様子で自分の目をペロリと舐めた。


「先生でも分かんないですか・・・」


 オリバー先生の言葉に俺はそう答えると、心の中で大きく肩を落とす。

 これ以上無いほどに不思議の塊であるこの先生が分からないのなら、この”謎”の深みは尋常ではないのだろう。

 

 いつもの様にバックグラウンドで実行されている日常の合間に、俺は”メルツィル平原での一件”について、質問していた。

 主に概念魔法の仕組みで過去に干渉できるかどうか。

 そんな理屈をなにか知ってるかと聞いた結果が、これである。


「”時空関連”は専門外だからな」


 そう言ってオリバー先生が首をひねる。

 その表情の読みづらい筈のヤモリの顔には、俺でもハッキリ読み取れるほどの”わからん”が張り付いていた。

 専門か・・


「専門の先生とかって、誰かいるんですか?」


 俺が聞く。

 当たり前の話だが、時空系の魔法を専門としている魔法士は少ない。

 というよりも、何らかの現象を起こせるほどの人材が非常に少ないというべきか。

 少なくとも、この一年でまともに時空干渉を起こせた魔法士を俺はガブリエラ以外に知らないし、そのガブリエラにしたって”時間関連”はからっきしだった。


「いるにはいるが、過去に干渉するとなると、答えられる者は居ないだろうな」

「そうですか」


 そんな分野なのだから、やがて出てきたオリバー先生の答えにも、俺は落胆よりもむしろ”納得”の感情を大きく感じたものだ。


「何分、必要とする力が大きい分野だからな、だが過去を改変するとなると・・・」

「ガブリエラとかじゃないと無理ですか?」


 俺は半分冗談のつもりでそう聞き返す。

 実際、単なる空間魔法ですら、その実験一つに莫大な魔力を要求される。

 それをかなりの精度で行わなければならないのだから、それこそガブリエラ級の力がなければ話にもならない。


 だが先生の答えは、それすら凌駕していた。


「彼女でも足りぬ・・・いやそれどころではないな」


 オリバー先生がそう言うと、瞬きの代わりに両目を舐める。


「時間の流れを遅くするには、遅くすればする程巨大な力が必要になる。 そしてそれは速度”0”に向かって無限に増大する、ということはだ・・・」


 その言葉に俺はハッとする。


「・・・過去に向かって進むには、”無限以上”の力が必要?」


 俺がそう答えると、ヤモリが体を上下させて頷いた。


「故に無理だ」


 立ちはだかるのは至極簡単な数式。

 だがそこに無邪気に放り込まれた”0”の壁が、俺達どころかガブリエラでさえ、歯牙にかけぬ程の分厚い壁となって立ちふさがるのだ。

 魔法は、法則に魔力というエネルギーで交渉する方法でしかない。

 だが”無限”を超えるエネルギーなど、どうやって用意できるのか。

 そんな方法があるとは思えなかった。


 ただ・・・


「でも、過去に進んでた訳じゃないんですよ・・・

 なんというか、時間を貫いて出来た穴を覗いてたというか」


 単に干渉するだけ・・・いや、単に見るだけならば、その”無限以上の力”を必要とはしないのではないか。

 それこそ時空の歪みを通して見るだけで。

 だが俺は、そこでもうこの話が”学術的な意味においての概念魔法”の範疇から大きく逸脱していることから、目を背けることはできなかった。


「ならば、それこそ理解不能な領域だろう。 我々が推察するには根本的な部分が欠け過ぎている。

 もっとも専門的にはそうではないかもしれん。 ”次元魔法”の専門家を何人か紹介しようか?」

「うーん・・・」


 俺は頭の中で先生の提案を吟味する。

 正直、このまま調査をしても何かを得られるとは思えなかった。

 少なくとも理解は無理だろう。

 ただし、完全な放置というわけにもいかない。


「相談くらいはしたほうが良いと思うので・・・口が堅そうな人をお願いします」

「うーむ・・・口が堅いとなれば、内容が内容だけに、”人”は難しいかもしれないな」


 先生はいつもの様に、ちょっとズレた部分に思慮を巡らせる。

 ・・・そっか、人以外なら思い当たるのか。


「じゃあ、先生みたいに会うだけで大変な目に遭わない先生を教えて下さい」


 俺はせめてもの条件を追加する。

 オリバー先生みたいに、会うたびに超常現象が起こってはこちらの神経が持たない。

 ずっといる分には問題ないが、モニカが魔力を充填しに来るたびに、俺の神経はゴリゴリと削られるのだ。


「あともう一つ、質問があるんですが」

「アンタルク島の神殿か?」


 俺の質問に先生が間髪入れずに答える。

 先生の意識には俺の意識もある程度溶けているので、偶にこういう反応をされる事があるが、もう慣れた。


「やっぱり、あれ神殿なんですか?」


 俺の中に、あのアンタルク島とメルツィル平原の地下にあった神殿の姿が浮かんで来る。

 何となく全体の形から”神殿”と呼んでいるが、雰囲気だけなら”巨大ネズミの死骸”だが。


 もちろん先生は首を横に振った。


「いや、そう呼ばれているが、聖王教よりも古いものだ、先史時代の宗教などよく分かってはおらんからな」

「先生でも知らないんですか」

「こう見えて、アクリラでは比較的新参だからな。 ただ、探った所で何かを得る可能性は低いだろう」


 先生はそう言って自重するが、俺は少し驚いていた。

 いくらこの先生が一生の内、99.99995%以上を意識のない状態で過ごしていようとも、それでもまだ百年単位のキャリアはあるのだ。

 特に同じく”浮いている存在”であるアンタルク島の神殿に、興味を持たなかった可能性は低い。


「もう既に、あれほど調べられた場所も他にはないが、魔力が不安定になるという以上の発見は成されていない。

 ある意味で私の同類で、それ以上の謎だろうな。 アラン先生も、あの島については関わりたがらない程だ」

「魔力が不安定になる・・・」


 俺はその言葉を繰り返す。

 何となく、ものすごく重要そうな情報なのに、ものすごく難しい臭いがした。

 ある意味で、先程の過去干渉問題よりも泥沼に嵌りそうな気配である。


「”神秘”に惹かれるのは程々にしておけ、そういうのは大抵酷い目にあう」


 先生も何やら実感めいた様子でそんな事を言うもんだから、俺の大いなる好奇心は現実的な損得勘定に押し流されてしまった。

 ”触らぬ神に祟りなし”という言葉があるが、今俺が触ろうとしているのは間違いなく”神の領域”だろう。

 つまり何か得られたら祟られる。


「先生も、そういった”ジンクス的なもの”を信じるんですか?」

「いいや。 だが”概念魔法士”だ、誰かが何らかの意図を持って作ったものは信じるし、それが善意であると決め付けることには慎重になる。

 特に私や君のような存在は、己の身を護れぬ内は手を出すべきではないだろう」



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「モニカ、お役人さんが来てるわよ」


 オリバー先生との会話記録を読み込んでいると、不意に横から声をかけられた。


「・・・? んにゃい?」


 ”朝食戦争”の戦利品を全力で頬張っていたモニカが、ちょっとビックリした様子でそちらを振り向くと、現在この寮を仕切っている纏め役の一人である最上級生の姿が視界に飛び込んできた。

 昨年その位置に居たジーナ先輩から引き継いだ、”おせっかい焼き”な表情を浮かべた白髪の少女の視線を追って窓の外を見れば、驚いたことに”モニカ連絡室”の面々が雁首揃えて並んでいた。


 俺達と目が合うと、端のジョルジュが手を上げて振る。

 それに対して、モニカが口の中のサンドイッチだった物を咀嚼して飲み込んだ。

 そして「ちょっとまって」と口の形だけで彼らに伝えると、残りの朝食を一気にかきこみだす。

 急ぎだろうと、せっかく勝ち取ってきた朝食を放棄するわけにはいかない。


 そんな様子を見た先輩が、ちょっと心配そうに俺達の肩を叩き耳元で囁く。


ラクイア軍事会議に呼ばれたりで、大変な時期なのはわかるけど、子供なんだから、あんまり大それた事はしないでね」

「・・・そうしたいです」


 モニカが咀嚼の合間に至極疲れた声色で答えた。

 俺達が大変なのは、俺達に責任があることではない。

 モニカも心の中で溜息をついた。


『”オフェヤェレヌカ先輩”に、心配されちゃったね』

『おいこら、人が気を使って名前を伏せていたというのに!』


 俺がせっかくこの異常に発音しづらい先輩の名前を、読んだ人がどう発音するのか考えなくて良いように伏せたというのに、その努力が台無しだ。

 因みに途中の”レ”も、本来は”ラャェ”と書くしかない不思議な発音であるが、長すぎるので”レ”に纏めた。

 ”ヌ”だって、「ぬ」と言ってはいけない。


『?』


 だが、モニカはキョトンとするだけ。

 こいつは先輩の発音を全く苦にしなかったので、俺の配慮が理解できないのだ。

 

「・・・ところで、”奴隷使ってる貴族を襲ってる”って聞いたんだけど、もしかしてその件?」


 ふと、”名前をうまく言えない先輩”が、眉を顰めながらそんな事を聞いてきた。 

 ・・・ん? どいうこと?


「へ?」


 当然ながら、俺達の口からまともな音が出るわけもない。

 ただ、”難読先輩”の口からは衝撃的な言葉が続けられた。


「なんか噂が立ってるのよ、モニカが毎週、取引に応じない領地を潰して回ってるって」

「そんなことしてないよ!」


 モニカが、慌てた様子で先輩の言葉を否定する。

 確かに俺達は奴隷商売に悪感情を持ってるし、それに対して公然と非難もしている。

 だがそれ以上のことはしていない。

 そんな力もないし、そんな余裕もないのだ。

 ましてや、商人相手に信用をなんとか取り戻そうと藻掻いているのに、この上更に市場に火を投げ入れるような真似ができるわけ無いだろう。


 モニカがそんな意志を込めて先輩の目を見つめると、オフェヤェレヌカ先輩がため息をついて視線をそらした。


「・・・そう、ならいいんだけれど」


 あ、これ全然信じてない時の顔だ・・・

 こういう所がジーナ先輩にそっくりである。


『なんのことかな・・・』


 パンの最後の一切れを口に放り込みながらモニカが聞いてくる。

 モニカも先輩が俺達を信用したとは思わなかったらしく、額から冷や汗を流していた。


『聞きたくないような、聞かなきゃいけないような・・・』


 俺が率直な感想を先に述べた。

 と同時に俺の冷静な部分が、該当するかもしれない情報をモニカに提示する。

 実は俺達の記録に、”妙なもの”が混じっているのだ。


 ヴェレスの屑山を襲ったあの人攫い達の言葉である。


 ”北のモニカ”


 彼等はその言葉を吐きながら大いに驚いていた。

 あの時は何の事か分からなかったが、あれがもしこれの事なら合点がいく。

 そりゃ、人攫いなら逃げるわな・・・


 唯でさえ今は”ナーバスな時期”だというのに、朝からとんでもない爆弾情報を突っ込まれた。

 だが、それにかまっている余裕はない。

 今日はそれ以上の”問題”が既に見えてる。


『・・・今日はいいよね。 なんとなくそれどころじゃない気がするし』


 モニカも苦々しげにそう答える。

 窓の外で待つ顔ぶれが、なぜだか大所帯だったからだ。 

 こういうときは大抵、碌なことがない。





「なんで、ヘクターさんまでいるの?」


 アクリラのマグヌス軍駐屯所に配置され、モニカ連絡室の軍事担当と、連絡室の護衛という名の俺達の監視役でもある、中年のエリート軍人を見ながらモニカが少し嫌そうな声で問うた。

 すると即座にヘクター隊長が「ひでえな」と不満を口にするが無理もない。

 こちとら、ここ最近は”平和”で通しているのだ。

 ・・・少なくともなにかマグヌスの迷惑になるような事はしていないのに、なぜ軍事担当者が出張ってこなければならないのだ。 


 だが、ヘクター隊長はすぐに懐から何やら封書のようなものを取り出すと、無言で俺達に渡してきた。

 受け取ったモニカが、怪訝そうに封を破り中を改める。

 入っていたのは、マグヌス軍が標準で使ってる令状の形式で書かれた、短い通告分だった。

 だが、その内容を読んだ俺達の体が緊張でギュッと縮こまる。


「以前、モニカ嬢から依頼された”案件”だが。 ・・・今日来るらしい」

「いきなりだね」


 ヘクター隊長の言葉に、モニカが自嘲気味に答えた。

 それは、ヴァロア領への”一時帰宅”から戻ってすぐに出した、ヴァロア領救済のための”必殺兵器”の回答だ。

 ただし、物凄く諸刃の剣であるために、できれば頼りたくなかったし、せめてもう少し手札を増やしておきたかったが・・・


 来てしまったものは仕方がない。

 俺とモニカは感情だけでそう決心をつけると、グツグツと突き上げる腹痛を噛み締めて気合を入れた。


 その気合もすぐに折れそうになったが。


「それと”あの人”もくる」


 ヘクター隊長の続く答えに、モニカの眉がへの字に曲がる。


「え? なんであの人が?」


 思わず出たその言葉は、かなり露骨に嫌そうな空気を纏っていた。

 俺達の間で”あの人”で通じて、ヘクター隊長がこんな物凄く微妙な顔になって、モニカ連絡室の面々の表情をいつもよりも緊張させる人物は一人しかいない。


「まさか、来ないと思ってたのか?」

「えっと・・・うん」


 ヘクター隊長の言葉にモニカが頷く。

 俺も正直、何でこの件で来るのか理解できない。

 ・・・いや、理解できないこともないんだけれど。


「案件が案件だからな。 立会人として王族が必要なのだ」


 横から話を聞いていたファビオが、俺達を諭すような声でそう告げた。


「まだ”相談”だよ?」


 モニカが聞き返す。

 確かに何かを決定する段階ならいざ知らず、その前の段階で王室の名代が出てくるのは些か、話が大事すぎる気がしないでもない。

 ただ、そうは問屋も卸さないらしい。


「”誰”が、”誰”に、”何”を相談してるのかよく考えてみろ」


 ファビオが呆れた様子でそう言う。


 こいつも、すっかり役人面が板についてきたな。

 まあ、俺達が何かするたびに国王まで直結の報告をしなければならないのは彼なのだから、鍛えられもするか。

 かつて、”俺達の婚約者”として担ぎ出された頃の世間知らず感も、この数ヶ月で大分抑えられていた。

 

 だが、色々と本調子ではないモニカは窘められたことに膨れて憤りを顕にしている。


 そういえば、この男は元々俺達の”婚約者”になりかけていたんだよな・・・

 それが今では、もはや親戚の叔父さんみたいな距離感に収まりつつあるが、今回の話は流れによってはそれを再燃しかねない。


 いや・・・普通にその可能性が高いだろう。





 ”商談相手”が来るのが午後ということもあって、その日の授業は早退した午後の分を除いて平常通り行い、その後で関係者と再び合流することになった。

 それでも以前と違って俺達にも、関係者にも剣呑とした重苦しい雰囲気はない。

 こちらも随分と強くなったし関係も大きく改善している上、俺達の”面談経験”もたっぷりある。

 伊達に毎日商人に門前払いを食らってはいないのだ。

 強いて言うなら、なんとなく大事になりそうな気配が気になるか。


 あと・・・


『・・・どう?』


 モニカが鋭い声色で聞いてくる。

 その精神は午前中と比べても更にナーバスになっていた。


『正直、舐めてた。 こんなにピーキーになるなんて』


 俺が苦々しい声でモニカに答える。

 視界いっぱいに表示させている計器類の針が、いつも以上に大きくブレて、一部は表示も出来なくなっていた。

 恐ろしい状態である。


 まあ、安心してくれ、別に特別に何か病気をしているとかではない。


 単に、ついに”女の子が体育を見学する日”が、俺達にもやってきていただけの事なのだ。

 みーんな経験する。

 むしろこの作り物の肉体が、”ちゃんと機能している”と喜ぶべきことだろう。

 ただし、どうやら俺達は”非常に重い”にカテゴリ分けされるらしい。

 あと、タイミングが非常にマズイ。


 今日は実家の存続が掛かった商談なのに。


『お腹いたい』


 堪らずモニカが腹部を擦る。


『そこは胃だぞ・・・あと、嫌なことがあっても、今日は喧嘩はやめとけよ』


 そう言って俺は、体内に流す鎮痛成分の量を増やした。

 それで気分は大きく改善するが、途端に制御系統の反応が鈍くなる。

 印象としてはハンドルが重くなったような、俺達の体重が20倍くらいに増加したような感覚だ。


「ふう・・・」


 痛みが治まってモニカが一息つくが、体はゴム製みたいに感覚が薄い。

 とてもじゃないが、何かあっても戦闘できる状態じゃないだろう。

 少なくとも数日は空を飛ぶのは控えたい。


 こりゃ、真剣に専用スキルを組む必要があるかもしれない。

 バイタルの自動化は手がかかりすぎるが、これじゃ生活も覚束ないだろう。

 まったく・・・他の子はどうしてんだ?


 ・・・あとでルシエラにこっそり聞いておこう。

 ここ数日は彼女の世話になりっぱなしだ。






「お久しぶりですねモニカさん」


 待ち合わせ場所である、中央区の駅馬車ターミナルでモニカ連絡室の面々と一緒に、懐かしい顔があった。


「サンドラ先生も来るんですか?」


 モニカが今日初めて気分の良さそうな声で人に語りかけた。

 するとサンドラ先生も、嬉しそうに返してくる。


「ええ、流石に生徒個人で扱うにはあまりに大きな話ですし、モニカさんの用意できる人脈で対抗するのは厳しい相手ですから。

 でも、お家の話に出せる口には限界があるので、あまりお手伝いできないですが、お目付け役くらいには思っていてくれれば」


 サンドラ先生はそう言って謙遜するが、商人学校の交渉役である彼女がいれば、俺達としては百人力だ。

 おそらく俺達が、今日の”商談相手”と過去に引き摺る物があるから顔を出したのだろう。


 サンドラ先生は、俺達のようにアクリラに逃げ込んだ者を政治的に保護するための交渉をしている教師で、昨年は俺達も大きくお世話になった。

 一緒に交渉の席に着いてくれたし、俺達の裏で動く事もあったらしいのだ。

 今でこそ”連絡室”が出来てマグヌスとある程度平和的に付き合えるようになったが、彼女は今でも俺達の恩人である。


 ただ、


『そうか、サンドラ先生が出てくる案件か』


 俺がそう言うと、モニカの肩が僅かに落ちた。

 紛争案件担当の教師が出てくるということは、つまりアクリラはこの件で俺達が揉めると警告しているも同然なのだ。

 その証拠に、当たり前のように関係者に混じるスコット先生の表情は、どこか硬い。

 まあ、スコット先生は最近ずっとどこか硬いが。


 それにしても、まあ大所帯なことで。


 俺は関係者一同に声をかけて回るモニカを眺めながら、広大な馬車乗り場の一角を占拠した集団を眺めていた。

 これがその辺の商人とのやり取りなら俺達だけなのに、相手が相手とはいえ、ちょっとした催し物だ。

 まあ、マグヌス王家立ち会いの、国を超えた上級貴族同士の商談と考えれば、これくらいでもおかしくないのかもしれないけれど。


 うーん、そう考えると”窓口役”がいるな、”モニカ”ではなく”ヴァロア家”の。

 ただの事務的なやり取りにさえこの大騒ぎでは、色々と動きづらい。


 俺がそんな事を考えていると、アルバレス役人のジョルジュが別の話を持ってきた。


「そうだモニカ殿、頼まれていたものですよ、ようやく予算が承認されました」


 そう言って何やら証書のようなものを俺達に見せる。

 内容を見てみれば、”連邦予算承認通知”と書かれていた。


「よかった。 すごく高いから、ダメだって言われるかと思ってた」


 モニカが大きく安堵の感情を発する。

 今朝のと違ってこっちの令状は元気をくれる。

 これで俺達の安全が大きく改善するから、それもひとしおだ。


「ははは、勇者に勝てる装備なら、いくら出しても格安ですぞ」


 ジョルジュがそう言って得意げに笑う。

 無理もない、なにせこれは新型”デバステーター”の基幹パーツの材料の予算なのだ。

 もう”デバステーター”の予算と言ってもいい。

 前はガブリエラに買ってもらったが、今はアルバレスの貴族の身。

 作るなら、どこにねだるかは議論の余地がない。

 城が建ちそうな金額といえど、超大国が戦略兵器を買う予算と考えれば法外に安いだろう。


 そういえば以前、ゴーレムの修理先を探していたときに、”貴族の娘か?”と聞かれたっけ。

 当時は随分と分厚い壁に思えたものだが、思えば遠くへ来たものだ。


「ただ、それ故に、認証するのに大変な審議を必要とするのですがな」


 ジョルジュはそう言うと、少し遠い目をした。

 無理を言って急かせたのが効いてるかもしれない。

 Mk.2の背中には、でっかくアルバレス国旗を描いておくか。

 俺はそっと、手持ちの青写真の背中を変更した。

 お小遣いをくれる限り、俺達は愛国者だ。


「いつごろ買えそう?」

「いつでも。 連邦予算で小切手を切るので、モニカ殿が好きな所で購入してください。 その方が良いでしょ?」

「うん。 ありがとう」


 モニカは礼を言うと、手元の証書に目を落とす。


『これどうやって使うのかな・・・』


 よく見れば、証書には何かを書き込めそうな空白のある、仰々しい証書が更に何枚かついていた。


『買う時に、額を書いて渡すとお金の代わりになる・・・んだと思う』


 確か、小切手がそういう仕組みだったはずだ。

 おそらくこの紙も、然るべきところに持っていけばアルバレスが建て替えてくれるのだろう。

 その証拠に、こちらの証書にはアルバレス国章ではなく、”セリス/レク通貨”を管理する”冒険者協会”の会章が書かれている。

 

『なんか・・・こわいね』


 モニカが証書に刻まれた魔力回路を、自分の魔力でそっと撫でながら、その頑健さから漂ってくるただならぬ空気にたじろいだ。

 この紙切れは1枚で城が建つ。


「それよりも、入手できる当ての方はご存知ですか? 知り合いのゴーレム系の素材を扱う商人が、それの名前を聞いて青ざめておりましたが、アクリラで手に入りますかな?」


 ジョルジュが心配そうに確認してくる。

 俺達が金を心配する様に、彼は物を心配したようだ。

 そりゃこんな高額商品が、その辺に転がっているわけがない。

 デバステーターの完成が”ラクイア軍事会議”に間に合わなければ、取れるカードは大きく限定されるし、俺達・・・アルバレスがガブリエラ、つまりマグヌスに依存する割合が高くなる。

 俺達の命の話だと分かりづらいが、共同事業とはいえアルバレス所属の戦略兵器が、マグヌスのそれに護られるというのは外聞が悪いのだ。


「あ・・・それは、たぶんだいじょうぶ。 ガブリエラに教えてもらってるから」


 モニカが安心しろと答える。

 恐ろしく高価だが、別に国宝級の貴重品というわけではない。

 むしろ産業用等で需要が高いので、ある所にはあるのだ。

 まあ、飛行機みたいな物だと思えばいいかな。

 なので戦略爆撃機を買いに行くと思えばいい。


 そんな事を考えていると、横にいたスコット先生が意外な事を言い出した。


「ラクイアには私も行く」


 モニカが慌てて振り向く。


「先生が? いいんですか?」


 モニカが驚いた声でそう言うと、スコット先生は苦虫を噛み潰したような表情で答えた。


「自分の生徒の危機に、出ていかぬ教師はいない」


 スコット先生が誰かに言い聞かせるように呟く。

 不思議なことに俺は、その言葉が俺達に向けられたものとは思えなかった。


「安心してくれ、私が出ていくというのはアクリラからの”警告”になる。

 この件に関して、アクリラの立場がハッキリしている事を示すのも仕事だ。

 アラン先生の信書を持つ、外交特使に手を出す馬鹿はいないだろう」


 それが本心なのか、それとも何かを誤魔化す為の方弁なのか、そこまでは表情からは読み取れなかったが、俺達にこれ以上ない程強力な味方ができたのは間違いない。

 

「それに、そろそろ私の立場もハッキリとさせねばならぬからな」


 少なくとも、こっちの言葉は唯の照れ隠しだろう。


 するとこの会話の内容に、ジョルジュが目を輝かせてポケットに手を突っ込んだ。


「そりゃいいですな、”魔導剣士スコット・グレン”の復活だ。

 どれ、なにかサインできる物を・・・」


 そう言って真剣にゴソゴソと自分の手持ちを探るジョルジュ。

 こういうところは商売人丸出しである。


 ・・・ところで、スコット・グレンのサインって高く売れるのかな?

 なんとなく、非常に希少価値が高そうな気がして、俺は脳内で先生にサインしてもらうチャンスの皮算用を始めた。


 そんなことをしているものだから、マグヌス組の反応に少し虚を突かれてしまう。


「ウチとしては、ガブリエラ様の重要性が下がるのであまり嬉しくないですが」

「ディーノ」


 マグヌス組の実務役であるディーノの言葉にファビオが噛み付く。

 ただファビオの目を見る限り、今の言葉はマグヌスの本音なのだろう。

 それにガブリエラへの依存度が下がれば、今回の商談で俺達が払わなければならない”料金”が目減りしてしまうしな。


「これは失礼しました」


 ディーノがそう言って謝るが、その表情は相変わらずしれっとした物だ。


「みなさん、今日の案件を忘れないように」


 気を引き締めようとサンドラ先生がそう言ったとき、ちょうど大通りの向こうから雰囲気の違う馬車の車列が見えてきた。


 魔獣かと思うほど巨大な軍馬が4頭立てで引き、その後ろに走る宮殿みたいな車体をもつ馬車本体が続く。

 間違いない、マグヌス王族専用の超豪華高速馬車だ。

 そんなのが6両続いていた。

 警備を含めると、とてつもない規模である。


『あんなの呼んだっけ・・・』


 モニカが不安半分、呆れ半分の調子で呟く。

 鯛を釣る為の海老を釣るつもりが、クジラが寄ってきたような気分である。

 ただ、”あの相手”に話を通そうとするならこうなると予想できるというのは、これまた無駄に巨大化しているこちら側の陣容を見れば分かる。

 モニカが眉間にシワを寄せて、体をぐっと緊張させた。


 大きく弧を描くようにカーブしながら馬車ターミナルへと侵入してきたその一団は、そのまま中の通行路を走り抜け、俺達のいる乗り場へと入ってくる。

 露払いの先頭車が通り過ぎ、”本隊”を形成する豪華馬車が2台通り過ぎて、ようやく3台目が俺達の目の前で止まった。


 と、同時に前後の馬車からゴテゴテに装飾のついた兵隊が飛び出して、俺達の前に道を作るように並ぶ。

 まるで式典か何かのようなその空気に、その場の全員の背筋が自然と伸びた。

 全員の胸に”エリート”の金バッジ、その内半分には”将位スキル”を示す銀線が・・・中身の伴わない部隊ではない。

 

 彼等の服装を見て、ちょっとだけガブリエラの卒業のときに着ていた”金線付き”の制服を着てくるべきだったかと悩んだのは内緒だ。

 だがその思いもすぐに霧散するが。



「やー! ひさしぶり! モニカちゃん、こっち! こっち!」


 斜め前の方向から気の抜けた声がかかり、俺達の視線が少し動く。

 衛兵が整列したもんだから、馬車の扉から出てくると思っていたら、まさかの後部の窓から身を乗り出して叫びながら手を振るとは。

 これでも王族なんだろうか?


 ガブリエラとはまた違ったテイストで自分勝手な王女様は、俺達の姿を確認してから身を引っ込めて、バタバタと音を立てながら車内を走り”バン!”と勢いよく馬車の扉を開け放った。

 その顔は妙なまでにスッキリとしていた。

 ・・・本当にこの人王族なのだろうか?


「お久しぶりです・・・クラウディア殿下」


 モニカが目の前に立つマグヌスの王女に向かって、アルバレス式の礼を取る。

 以前会ったときは色々有ったし俺達の自覚も足らなかったが、今日は”ヴァロア伯爵家”の一員として面会するのだ。

 マグヌス王女に対して、礼はどれだけ尽くしても足りることはない。

 

「なに、かしこまってるのよ!」

「うわわ」


 だがそんなコチラの配慮と思惑など一考にも値しないとばかりに、クラウディアは俺達に駆け寄ると、そのまま礼の姿勢で固まっている俺達の肩を思いっきり叩いた。

 それは身体強化込みの意味での”おもいっきり”だ。

 つまり唯の熊とかなら一瞬でミンチという意味である。


 相変わらず、ガブリエラの姉ならではの力加減に、俺は真剣に脳内で冷や汗を流した。

 確かに今くらいの威力なら問題ないけれど、こっちも今日は身体強化に不安があるというのに。

 クラウディアはそのまま、俺達にヘッドロックを噛ましながら久々に会った妹を可愛がるような感じで、俺達の頭をワシャワシャと撫で回す。


『本当にこのひと、”王族”なんだよね!?』


 明らかに”貴族と王族”の面会に似つかわしくない状況に、モニカも焦った声で俺に嘆きを流したほど。


『やっぱ、”ホーロン人気質”ってやつなのか?』


 堅苦しい空気じゃないのは救いだが、流石にどうしたものか。


 すると、そんな風にジャレつく俺達を叱責するように、クラウディアの背後から「コホン」という咳払いが聞こえた。

 それは小さな音だと言うのに、妙に場の空気を引き裂くような、強烈な力を持った咳払いだった。

 当然、俺達の視線がそこに向き、馬車から出てくる人物へと注目する。


 クラウディアも俺達への”かわいがり”の手を一旦止めて後ろを振り返ると、ちょうど王族専用馬車の中からシンプルだが高級感の漂う服装の”女性”が歩み出てきた。

 それを見て、モニカの目がカッと見開かれる。


 俺の最初の印象は、”まるで鏡を見ているようだ” だった。

 それくらい、俺達にそっくりな人物が現れたのだ。


 だがすぐに、その鏡が歪んでいる事に気がつく。

 俺達よりも背が高いし、俺達よりも大人びているし、俺達よりも摺れた目をしている。

 何より目の色が真っ黒な俺達と違って、完全ではないが白い。

 それでも、その内で燃え盛る”炎”の勢いと温度が、本当に俺達とよく似ていて、そこから来る表情が顔立ち以上に両者を似せていた。


 モニカが、また無意識に胃のあたりを擦る。

 驚いた事に、今度は本当に胃がキリキリと傷んでいた。


 ”この人にだけは嫌われたくないが、間違いなく嫌われている”


 そんな感覚だろうか。

 猛烈な緊張感が俺達を蝕んでいる。


 一瞬でこんな事が分かるくらい、俺達は互いに類似点を感じてしまったのだ。

 話には聞いてたけど・・・


「まあ! 本当に”親子”みたいね」


 モニカとその女性の顔を何度も見比べながら、クラウディアがとても嬉しそうな声を上る。

 だがその反応が不快だとばかりに、相手の鉄面皮のコメカミに皺がより、強烈な殺気が飛び出してきた。


「不快ね」


 その女性のたった一言で、何故だかわからないが俺達の心に強烈な鋭痛が走り、思わずモニカが目を逸らす。


 ”勝てない”


 何故だか分からないが俺達はそう直感した。

 力の強弱ではない、それ以前の段階で、根本的に俺達はこの人に勝てないのだ。


 その女性が目を逸らした俺達に追い打ちするように、上から強烈な視線で睨み付ける。

 まるで魔獣に押しつぶされているようだ。

 こんな状態があと1分でも続いたら、俺達の体は原子まで消し飛ばされるのではないかと思った時、その視線を遮るようにクラウディアが間に割り込んだ。


「ダメ! 先に用があるのは私なんだから! それまでお姉様・・・は私の近衛のまま!」


 クラウディアがそう言って嗜めるように腰に手を当てると、女性が鉄面皮を僅かに歪ませて俺達への殺気を緩める。

 おかげで少しだけ息が楽になった。


「承知しております殿下」


 女性がビシッと背筋を伸ばして敬礼しながら、口からは物凄く嫌そうな声でそう答えた。

 ”姉であり臣下”。

 その複雑な関係性が、それだけで伝わってくるようだった。


 そして、こんな複雑な立場の人間は2人もいない。

 これまで会った事はないが、間違いないだろう。


 モニカが息を大きく吸い込んで覚悟を決め、アルバレス式の礼のために右手を握る。


「はじめまして、”エミリア・アオハ公爵夫人閣下” お会いできて光栄です」


 モニカができるだけ丁寧に、そう言って礼をする。

 この女性の正体は、”俺達の元”であるフランチェスカの双子の姉である”ウルスラ”の長女、ガブリエラとクラウディアの姉にして元第一王女。

 そして今は、マグヌス最大の貴族である”アオハ公爵家”の夫人で、形式上は俺達の”はとこ”にあたる存在だ。

 その証拠に、異様なまでに俺達に色々なところが似ている。


 だが内心では、自信のない答案用紙を母親に見せる子供のような恐怖心が渦巻いていた。

 間違ってないはずだ、”肩書”だってこの前旦那さんが正式に家督を継いでいたので、2ランク下の”後継者格”ではなく”家格”と同じになってるはずだし、敬称も”閣下”で問題ない・・・はず。


 だがアオハ公爵夫人と思わしき女性は、まるで俺達の全てが間違っているとばかりに、見下ろす視線を冷たくするばかり。


「・・・」

『あ・・・れ?』


 まさか”貴族の礼”を無視されるとは思わなかったモニカが内心で盛大に焦り、その余波がブレにブレたバイタルとして俺のコンソールまで揺さぶった。


 まさかの別人!!?

 いや、俺達が呼んだのってアオハ家の人のはずだから、間違ってる方がおかしいし、だいたい”お姉様”っていったら一人しか・・・


「お姉様、流石に失礼が過ぎるわ。 モニカちゃんはヴァロア家の事実上の正統後継者なのよ?」


 するとクラウディアが膨れっ面でアオハ公爵夫人の背中を叩く。

 それに対し、公爵夫人は猛獣のような視線を向けて、それを見ていた俺達と、何故かファビオが縮み上がった。


「貴族の肩書を持とうとも、施しを受ける立場の物乞いに、尽くす礼はない」


 アオハ公爵夫人の言葉は辛辣だった。

 無言だったのは、どうやら相手を間違えたからではなく、俺達を全く対等に見ていないという主張だったらしい。

 

『ロン・・・無理! パス!!!』

『えええ!?』


 あまりの緊張に耐えかねたモニカが、まさかの俺にキラーパスを投げ込んでくる。

 というか、こんな場面で俺にパスされても困るんだが!?

 殆どマトモに人と会話したことのない究極の引きこもりスキルに投げられても、こんな化け物みたいな相手との会話などマトモにできるわけない。


 ええい・・・仕方ない、本来は実務的な打ち合わせに入ってから使う予定だったが、どうせ話すことは事前に決まっていたのだ。


 そう考えた俺は、話さなければいけない内容のテキストデータを、【社交】の中にブチ込んで強制的にマトモな声を発した。


「施しを受ける気はありません」


 唐突に発せられたモニカのキッパリとした声が、クラウディアとアオハ公爵夫人の口論を引き裂いて、2人の視線をこちらに引きつける。

 まさに今の瞬間まで怯えていた筈の少女が、急に覚めたようなハッキリとした態度に豹変したことで、それまで見下すようだったアオハ公爵夫人の表情に、嘲り以外の”興味”のような感情が芽生えたのを俺は感じた。


「施しを受けるわけではないだと?」


 アオハ公爵夫人が俺達の挑戦を受けるように聞く。

 よし、釣れた ・・・

 そう判断した俺は、次に必要な文言を【社交】のコンソールの中に打ち込む。


「公爵閣下の参加を願ったのは・・・」


 イメージするのはIT企業のCEO。

 実際、これから売りに出す商品はその類 ・・・なのだ。

 ならば胡散臭くなってもいいから、徹底的になりきれ。


 俺はできるだけ、まるでITベンチャー企業の社長のような表情で、彼等が使うような言葉を放った。

 


「わたしと一緒に、世界を変えてみましぇんか?」


 ・・・噛んだ。


 やはり今日は、細かな制御は上手く行かないらしい。


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