2-7【2つの王 5:~モニカの奇妙な異世界探訪~】




 窓の向こうを高速で光が流れていく。

 その様子を眺めながら、わたしは自分の中で渦巻く歯がゆい感情と戦っていた。


 この光景は初めてではなかったが、”前回”は殆どまともに認識できていなかったこともあって、目に映る全てが新鮮だ。

 だが何が起こっているのか確認しようにも、首はおろか眼球すら自分の自由にはならないので、この体の”持ち主”の気の向くままにしか物を見ることができない。

 そして見れるものも視界に映った全てではなく、”体の持ち主”の注目した箇所しかハッキリと認識できないようだ。

 しかも、どうやらこの”環境”は”体の持ち主”にとってそれほど珍しいものではなく、時々”馬車”の中に貼ってある特に意味を感じない張り紙や、くしゃみをした他の乗客などに注意を向けることがある以外はただボーッと焦点を合わせずに虚空を見つめている。

 わたしがこの”環境”の何処かに興味を持ったとしても、それが何なのかはっきりと見ることが出来ないようでは息苦しいだけだ。

 普段ロンはこんな息苦しい環境の中で生きているのかと思うと、”帰ったら”自分の相棒にもうちょっと優しくしてやろうという気分になる。


 ただ彼よりも”マシ”な点がある。


 この状態がおそらくそれほど長続きしないということと、”この世界”の言葉が薄っすらと理解できるということ。

 周囲に散らばる大量の文字や、行き交うたくさんの声は基本的にどれも理解不能だが、ごく一部この体の”持ち主”が興味を持った言葉だけは何故か理解できた。

 ただ、その殆どは途中で興味を失うせいか中途半端にしか分からないので、この”世界”の情報を集めるには不十分。


 そうだ、たぶん今ここで見えている光景は間違いなく”違う世界”の光景だと思う。

 それは何か理由があってそう言っている訳じゃないけれど、”ここ”で見るものすべてが根本的に何か異なることを示していた。

 おそらく、いやほぼ間違いなく”魔力”がない。

 最初はこの体の持ち主が”魔なし”なのかもとも思ったが、ここにいる全員に魔力を持っている素振りがないのだ。


 ではこの巨大で高速な連結”馬車”を動かし、目が眩むほどの光を放つこの明かりのエネルギーは何だろう?

 普通なら魔力と答えるのだが、自分はこれでも魔道具の授業を取ってピカ研に通う身。

 これほどの規模で、素材の強化に魔力を使わない魔道具など常識の範囲外だ。

 その代り頑丈な素材を使用しているみたいだけれど。

 なるほど使う素材自体が頑丈ならば、強化に使う魔力を動力に回すのもありなのか。

 そうだ、もう少し足元に注意を向けてくれないだろうか?

 さっきから聞こえるこの”唸り”の正体を知りたい。

 多分これが動力だと思うんだけど・・・


 あっと、今はそれどころじゃないんだった。

 なるほど普段ロンが妙に余計なことを考えているなと思っていたが、この様に”頭しか”回らない環境というのは自然とこうなっちゃうんだな。


 そうそう、たぶんこの状況は長続きしない。

 このまま”前回”と同じように進むのなら、あと数時間でわたしは死んで元の状態に”目覚める”ことになるから。

 つまりこれは”夢”なのだ。

 おそらく、わたしのスキルにある【予知夢】と同じようなものだろう。

 ということはここは”未来”なのか?

 いや、それはないか。

 ”世界”も、この”現象”も、微妙に【予知夢】とは毛色が違う気がする。


 ただ、”夢”なのは純然たる事実だ。

 ならば覚めるのを待てばいいのだが、問題はそれまで”保つ”かという話。

 今、”外”ではガブリエラがスキルの”力”の暴走を起こして、わたしはそのすぐ近くにいる。

 なのにわたしは”寝て”いるのだ。

 こうしている間に外で何処まで事態が悪化しているか分かったものではない。

 たとえ起きていたからといって出来ることはなくても、だからといって寝てていいわけでもない。


 この”夢”が終わるまで、一体どれほど外で時間を食ってしまうのだろうか?

 ”前回”はどうだった?

 いや前回はそもそも本当に寝ていて時間は測ってないし、今回は明らかに情報の密度が異なる。

 ロンの話によれば【予知夢】はかなり時間を取っていたというし、この夢はあれと比べても長いのだ。

 その事実は、締め付けられるような恐怖と焦りをわたしにもたらしていた。


 このままこの”夢”で死んで戻るのが先か、ガブリエラの暴走に巻き込まれて本当に死んでしまうのが先か・・・

 可能性は少ないが、途中でロンかスコット先生が起こしてくれるといいな・・・

 ただ、たぶんそんな”やわ”な夢じゃないけれど・・・


 するとそのとき”体の持ち主”が窓の外に注意を向け、わたしはその”光景”に圧倒される。

 今は夜なので窓の外は真っ暗・・・ではなかったのだ。


 闇夜に浮かぶ巨大な建造物・・・それも尋常な数ではない。

 どれもこれもピスキア見たものより遥かに巨大で、そして遥かに”異質”な見た目をしていた。

 どうやらこの世界ではガラスは高級品ではないらしい。

 どの建物もまるで自分が”宝石”であることを主張するかのように大量のガラスを身に纏い、その豪華さを競っている。

 その中には”門番ゴーレム”と並んでも見劣りしなさそうな物までちらほら見える。

 それがいったい・・・いくつある?

 そしてその下の地面を、まるで星空を数百倍にして貼り付けたかのような街の明かりが高速で駆け抜けていく。

 その”星空の地面”は、冗談抜きに無限に続いているかのようにどこまでも広がっていた。


 ここでわたしは”この世界”について、2つの確信を持つ。

 まず恐ろしく ”発展した世界” だということ。

 それは、これほどまでに巨大かつ洗練された”社会”を維持できることから間違いない。


 と、同時に恐怖を抱くほど ”魔の道に見放された世界” だということ。

 この街並み、行き交う人々、物の考え方全てに魔力の痕跡を感じない。

 それでも尚、この世界の人間は力強かった。

 ”魔力がなければ人は発展しない”という”ラズロックの原則”とは無縁の世界らしい。





 それから暫くして、”体の持ち主”は乗っていた”連結馬車”を降りて大きな通路の中を歩いていた。

 わずかに理解できた”案内”を信じるなら、ここは”シンジュク”と発音するこの街の中心部。

 どうやら今は”帰宅時間”のようで、”連結馬車”を降りてからこっち、まるで濁流の様な人の群れを掻き分けて進んでいる。

 彼等はわたし達の乗ってきた”連結馬車”に乗り込んで、これから街の外側に向かって移動するのだろう。

 この辺の”習性”はアクリラの人とそれ程変わらないんだな。

 だが、こうまで人が多いとありがたみがない。

 ちょっと怖いし。


 それに気になるのは、この”体の持ち主”はそれと逆方向に進んでいるという事実。

 他の人間とは目的が異なるのだろうか?

 それとも中心部に家があるとか・・・

 いや、単純に交通手段の”乗り換え”の可能性も捨てがたい。

 現にここにいる殆どが、別の交通手段でここまでやってきた人間の乗り換えだ。

 ”連結馬車”の乗り口に設置してあった腰くらいの高さの”ゲート”が、少しだけデザインを変えて色んな所に設置してあって、人々はそこから湧き出すか、そこに吸い込まれるかのどちらかの行動をとっていた。


 この”ゲート”は見た感じゴーレム機械で同じものが作れそうだ。

 どう動いているのかは分からないが、何からの”判定”を行っているのは分かる。

 きっと乗っていい人かどうか”選別”しているのだろう。

 それと”前の記憶”からして、おそらくまた何処かの”ゲート”を通ると思う。

 この辺はっきりと覚えてないのだが、見た感じたぶんそんな気がするのだ。 


 

 ・・・ごめん、全然そんな事なかった。

 やっぱり全然覚えてなかったよ・・・

 

 だが、”体の持ち主”が乗り換えのためにこの街にやってきたのは事実なようで、別の”馬車”の発着場のようなところにやってきていた。

 ここは先程の”連結馬車”に比べれば、まだ遥かに理解できるところだ。

 ちょうど朝の”知恵の坂うちの寮”の前にある”馬車乗り場”がこんな感じである。


 もちろん建材とかデザインとか、止まっている馬車とかはぜんぜん違うが、色々な行き先の1両建ての馬車が沢山集まって止まっているのは同じだ。

 客層の方は街間を結ぶ”高速馬車”の方が近いかもしれない。

 大きな荷物を持って妙に興奮気味の者が多いあたりはそっくりだった。

 馬車にしても、馬とか牛とかが引いていないだけで、大きさはアクリラの駅馬車と同じくらいだし、少なくとも先程の”連結馬車”の異様を見たあとだと拍子抜けするくらいである。


 そしてちょうど・・・”わたし達”の乗る馬車が目の前に停まるところが見えた。


 あ・・・流石にこれは覚えていたか・・・

 その独特の白い車体は、他のものと殆同じデザインなのにも拘らず、見た瞬間にハッキリと”これ”だと感じる。

 そりゃそうか・・・

 だってこれが”棺桶”になるのだから・・・



 そこから少しして馬車が乗り場に完全に停止すると、前の方の側面一部がパカリと外れ、それがスライドするように横に開いた。

 うわ、随分親しみやすいとか思っていたら、こっちはこっちで驚く仕掛けがあったのか。

 この辺は逆に、わかりやすい”引き戸!!”だった”連結馬車”の方が親しみを感じる。

 更に続いて中程の側面の下側が大きく開き上にスライドした。

 こっちも開くのか・・・随分のっぺりとした側面なのに意外と開口部は多いんだな。

 見た感じ、どうやらこっちは”荷物置き”のようだ。

 大きな荷物を持った乗客は、その荷物を係員に預けてそこに入れていっている。

 この分だと後ろのあの四角い溝のところも開くんだろうな・・・

 ただ、その感覚が少し”王球”を思い出して懐かしい。

 ”わたしの世界”でも構造こそ違えど、閉まったときに面一になる扉はあるので、この辺の考え方は案外どの世界でも共通なのかもしれないと思うと、なんだか面白くなってくるから不思議だ。


 そんなことを考えていると、”体の持ち主”が馬車の中から出てきた”御者”と軽く手続きのようなことを済ませて、扉の向こうに入っていき、そこにあった小さな階段を登る。

 だが長さはまったくないものの、意外と急なその階段に全身の筋肉が力を発して体を持ち上げる感覚が伝わってきた。

 この程度の階段に、また随分な力の使い方だな・・・

 これでは2ブル(2m)程度の壁すら飛び越えられそうにない。

 わたしはそんな風にこの体の”虚弱っぷり”を心配してしまった。


 馬車の中は、狭い通路と薄い壁で仕切られた小さな個室のようなものが並んでいた。

 さらにその中には、かなりゆったりとした椅子がある。

 これだけでも”高速馬車”よりかなり豪華だ。

 そして”体の持ち主”は、その個室の扉に書かれた文字を、手元の”乗車券”に書いてある文字と照らし合わせながら”自分の居場所”を見つけると、そこに潜り込むように座り込んだ。


 うん・・・意外と・・・普通だ。


 もちろん馬車にしては破格の座り心地だが、見た目ほど良くはない。

 お尻から上がってくる感覚的に、クッションの内部に魔力系の繊維を入れていないことが丸分かりのショボさである。

 それでもその感触に”体の持ち主”はある程度満足したようで、少しの間落ち着きなく椅子を立ったり座ったりを繰り返しながら、ようやく背もたれを少し倒して落ち着いてくれた。

 そしてそんなことをしていると、続々と他の乗客たちが乗り込んでくる音が聞こえてくる。


 その時、個室の少し空いた扉の向こうに、小さな女の子が元気よく走っていく姿が見え、その瞬間・・・心臓がドキリと小さく跳ね、”体の持ち主”がそれに対して不思議そうに胸を軽く撫でる。


 ・・・今、わたしの”気持ち”に心臓が反応した?


 あの少女が”どんな意味”を持つかは知っている。

 ・・・だがそれはまだ”先”の話で、この”体の持ち主”にはまだ関係ない話だ。

 どういうことだ?

 もしかするとわたしは、”ただ見ているだけの存在”ではない?





 ”発着場”を出発した馬車は、独特な唸りを上げながら巨大な街の中を縫うように進む。

 ”体の持ち主”も今は落ち着いたように、席についてただ呆然と景色を眺めていた。


 相変わらず巨大な建物だ。

 近くで見ればその異様がよく分かる。

 だが近くで見て気づいたのは、この世界の建築物が基本的には小さい・・・・・・・ということだ。

 そもそも一階の高さがアクリラの半分もない。

 皆小さなスペースに押し込むように、部屋や施設を重ねている。

 それでいてこの大きさなのだ。

 いったいこの建物、何千人入る前提で作っているのだろうか?

 

 それと、呆然としていても情報というのはそれなりに集まるようで、車内に響く”案内”やら他の乗客の会話からある程度この”馬車”について分かってきた。

 それによるとこの馬車は、1人用と2人用の個室があるらしく(わたし達が座っているのはどう見ても1人用)、複数の目的地を経由するタイプであること。

 それも”キョウト”と”オオサカ”それと終点の”コウベ”という街の複数箇所に停車するようだ。

 ただ同時に、それらの街にこの”馬車”を使って行くのは少々珍しいらしく、何やらもっと早く着く手段があるらしい。

 その代り破格の値段と、”朝に着く”というのが売りのようで、”体の持ち主”もおそらくそれらの利点を考慮して選んだのだろう。


 だが”体の持ち主”の目的地がその3つの街のどれかまでは分からない。


 なにせ、もう・・・・降りないのだから・・・






 どうやら寝ていたらしい。


 ロンはわたしが寝ている間でも起きているみたいだけど、わたしはそうはいかないようで、いつ眠りに落ちたかとかの記憶すらない。

 あれから何時間経っただろうか。


 気がついた時、窓の外は不気味なまでに静まり返った広大な空間が広がっていた。

 間違いなく街なかではない。

 建物のようなものは見えない代わりに、真っ黒な地面が広がり、そこに大小様々な形の馬車が沢山停まっていた。

 その向こうに、大きな道とそこを高速で走る馬車の姿が見えるので、道中の何処かで一旦休憩をしているのだろう。

 馬が引いているわけでもないのに、休憩が必要とは結構ひ弱な機械なのか・・・いや、ひ弱なのは”御者”の方か。

 彼もきっと、この世界の他の住人と同じく”魔なし”だろうから。


 まだ少し・・時間があるので、視界の中から他の馬車を物色する。

 あの小さめの馬車なんかいいな。

 街なかでも大量に見かけたけど、たぶんあれは家族とか少人数向けで、扱いも比較的簡単そうだ。

 それに微妙に丸っこかったり、逆に四角かったり、色も沢山あって見てて飽きない。

 どれがいいかな・・・


 あ、”魔力自転車”みたいなのもあるな。

 アクリラの街なかを走っているのに比べれば、少し大柄で無骨だが、風を感じれる分こっちの方が自分には合ってるかもしれない。

 だけどこんな事を考えてると、ロメオはへそを曲げるだろうな。

 最近あの子、わたしが馬車とか自転車を見てると結構露骨に不機嫌になる。


 そんな風に自分の飼ってる牛のことを思い出すと、僅かな時間しか”ここ”にいなかったのにも拘らず、自分の寮の部屋が懐かしくなってくる。


 大丈夫・・・


 わたしは自分にそう言い聞かせる。


 もうすぐ”終わる”からと・・・



 しばらくそうやって微睡んでいると、”体の持ち主”がにわかに落ち着きをなくしだす。

 どうやらもう空が白んできたというのに、一向に発車しない馬車の様子が気になりだしたようだ。

 外に見える同じ様な形の他の馬車はみんなとっくに発車して、停まっているのはわたし達が乗るこの馬車だけだ。

 ”体の持ち主”が、これでいいのかと顔を車内の方に向けて様子を窺う。

 すると前の方から、何やらゴソゴソという物音が聞こえてきた。


 そしてそれに反応するように、周囲からも何やら人が動く気配が。


 ついに”体の持ち主”がしびれを切らして個室の扉をあけると、そのまま顔を外に出した。

 するとほぼ同時に、同じ様に顔だけひょっこり出して様子を窺う他に乗客と目が合う。

 皆事態が呑み込めていないようだ。

 そのまま頭を廊下の前と後ろに振るように向けて、情報を集めようとするも何もなし。

 だが廊下に出ると確かに男性が声を押し殺して泣くような、そんな物音が前の方から確かに聞こえてきた。


 ”体の持ち主”はそのまま廊下にゆっくりと歩み出て、前の方に歩いていく。

 この馬車は客室が高い位置にあるらしく、最前部は階段を降りないと見えない。


 そして階段の向こうを覗き込むように、下を見てみれば・・・・

 

 馬車の制御用と思われる小さな”御者台”の壁に寄りかかるようにして、ぐったりと動かない御者の姿。

 そして空いた扉から吹き込む風に釣られて、目線を出口に向けれ・・・


 そこで頭を抱えて震えるように泣く男の姿があった。


 その光景に”体の持ち主”が絶句する。


 うん、わかるよその気持ち。

 わたしも”これ”2回目だけど、全く何が起こってるか分かんないから。

 

 ただ一つ・・・


 その男が頭を抱える逆の手には・・・真っ赤な血に染まった、包丁くらいの大きさの刃物が握られていた。

 その時、咄嗟に”体の持ち主”が御者台で動かない御者とその男を見比べ、1つの”答え”を導き出す。


 ”この男が御者を刺し殺した”


 その瞬間、凄まじい驚きと恐怖が体を駆け抜け、思わずその場で腰が抜けた様に座り込んでしまう。

 するとその音を聞いた男が、ゆっくりとこちらを向いて、その涙で濡れた・・・それでいてハッキリとした目でこちらを睨んだ。


 その瞬間、わたしは”自分”の死因を悟る。


 前回は分かりづらかったがこの男・・・”手負の獣”だ。

 何かしらの傷を負った熊や、群れから追い出された狼のように、追い詰められていることがその瞳から伝わる。

 さて、そんな獣に出会ったときに重要なのは、まず”刺激しない”ということだ。

 間違っても・・・


「お、おい・・・何やってんだアンタ!?」


 と、問い詰めるような事はご法度だ。


 だが愚かにも”それ”をしてしまった”体の持ち主”に対して、その男は目を見開いて手に持っていた刃物を振り上げる。


「うえああああ、あうぇらあああ!!!」


 そんな何を言っているのか分からない叫びを上げながら、こちらに向かって迫る男。


「うぅぉお!?」


 それに対し、これまた情けない声を上げながら這うように避ける”体の持ち主”

 そんな小さな刃物なんて大した事ないんだから、思い切ってぶつかれば立っている高さ的に勝てるだろうと、半ば呆れるわたし。

 だがすぐに、腰が抜けてるから、それはまあ無理かな思い直した。


 それにしてもこう、どちらもまるで酔っ払いのもつれ合いみたいな動きだと、気が抜けてしまう。

 至って真剣な様子の当人たちには悪いが、刃物も小さいし、本当にこんな事でわたしは死ぬんだろうかと思ってしまうのだ。


 だがそれも、その刃物がズブリと嫌な音を立てて脇腹に刺さるまでだった。


「ぐっぁ!?」


 あ、これ意外と・・・いたい・・・




 あ・・・いったぁ・・・・



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