第81話ガチャって他人が回すのを見る時の方が面白い時がありませんか?ニコニコ動画の総統の動画が大好きな作者です

 碧色の長髪が印象的な女性がいきなり自分の部屋に現れて、それが契約したフェンリルだと言うのだから俺も大分世の中の常識から離れてしまった事を自覚してしまう。




「ジルアちゃん……また新しい女の子を捕まえてきたの? お姉さんそろそろジルアちゃんの生き方に説教しないといけないと思い始めたのだけど……」


 呆れ顔でこちらを見ながら棘のある言葉を使ってくるセシルだが、それは誤解である。




「……何でこんなエルフっ子が美人ばかり周りに侍らせてんだよ。俺にもハーレム展開ぐらい用意してくれよ」


 天井を見ながらブツブツと独り言を言い出すアクトは体全体から黒いオーラを噴き出しているが、それなら貴様も女体化するかと俺は問い正したい。




「セシル、アクト。言い忘れていたけど、この女性はこの森の主人であるフェンリルで青い毛玉のお母さんだ。訳あってフェンリル母さんと青い毛玉に名付けをする事になっちゃって契約……しちゃったんだよね」


 段々と冷たくなっていく2人の視線に押されながら、俺は言い訳にも聞こえる説明をし始める。


「ジルアちゃん? 貴女自分がどれだけ無茶をしたのか理解しているの? この世界のラスボスに一人で立ち向かうくらいの無茶をどうして勝手にしちゃうのかな? 私達に無理するなといってる本人が一番無理しちゃってるじゃない! 」


「お前さん本当に元地球人なのか? 俺の知ってる地球の人間はそんな企画外れな事はしないと思うんだがな……」


 腰に両手を当て俺の間近でプリプリ説教を始めるセシルなのだが、胸をこちらの顔に当ててくるのは罰ゲームなのかな?


 後、アクトは信じられないものを見るような目でこちらを見ないでください。




「それは我も感じておった事じゃな。ジルアよ、お主実は父親か母親に天界の血を受け継いだものでもあるのではないか? 」


「うちの家系は代々普通の人間です! 勝手に人の家の家系にそんな恐ろしい設定を付け加えないで下さい! 」


 ミドリが面白そうに話を振ってくるが、生憎うちの家族は普通の……普通だよな? 俺か知らない所で変な設定あったりしないよな?







 そんな不安に襲われながらミドリを含めて四人で話をしていると、突如として俺の部屋の扉が吹き飛ぶ!


 壊れた扉は俺の方へと飛んでくるが、セシルがいつの間にか俺の前へとおどり出ると、扉を床へと流れるように叩き落とす。




「ご主人様! またその獣とイチャイチャしているのですか! 私というものがありながらそんな退廃的な外道の道へ進むなんて許せませんよ! 」


「ごめんねご主人。ミーアが暴走しちゃって止まらないの。シロは悪くないんだよ? 」


 《ママひどい! ぼくもジルアとあそびたい! 》


「またまた新しい美人さんがいらっしゃいますわ! これは……滾りますわ! 」


「あーマスター。我と同じ口調のキャラを増やされると益々我の出番が潰されてしまうのだが……」


「流石はマスター! これ程強力な力をいとも簡単に手に入れてしまうのですね。これでこの地域の占領は終わったも同然です」


「これでも止めようとはしたんだぞ? だがな……俺の手には負えなかったんだ」


 続々と俺の部屋へと雪崩れ込んでくる仲間達を見ながら、俺はもう一度一から説明をしなければならなくなったこの状態をため息と共に受け入れるのであった。







「そういう事だから、アオとミドリは俺の契約相手になっているんだから仲良くしてね……ミーアも分かった? 」


 未だミドリの事を敵視している感のあるミーアに釘をさすと、嫌そうな顔をしながらもミーアはそれを受け入れるように頷く。


「それにしても、ご主人は行く先々で面倒事を起こしてきますよね? そろそろお祓いにでも行った方がいいんじゃないですか? 」


「神敵の私がお祓いに行けるような場所がこの世界にあればいいんだけどね……」


 シロの言葉に突っ込んでしまう俺だが、考え事をしているのか渋面を崩そうともしないライアを不審に思い話を振ることにする。


「どうしたのライア? 何か考え事をしているみたいだけど、そんなに気になるような所があった? 」


 俺の言葉を受けてハッとするライアであったが、どうやらライアの考え事はかなり大きいようで更に顔を顰めるライアを見て、俺も不安になってしまう。


「いえ……私の考えが杞憂でしたら良いのですけど、あの老人が異界から来た仙人だというのならあのお方は地球からの『異世界転移者』となるのでしょうか? ジルアさん。貴女の称号で確認していただけませんか?」


 ライアの的確な指摘に俺は慌てて自分の称号を確認するが、以前見た時と代わり映えのない説明欄を見て違和感を覚えてしまう。


「なるほど……やはりあのお方は違うのですね。そうするとあの方はこの世界の住民であるという説が高くなりますわね。『異世界転者』でしたら世界の守護者と仲良く出来そうにありませんし」


 ライアの説明を受けて俺達一同はライアの考察力に驚かされると共に、益々謎が深まってくる老人の正体について謎が深まるばかりとなった……


「まぁ良い所まで考えが進んでおるようじゃが、それ以上の答えは今は出るまいて。それよりも其方達にはするべき事があるはずじゃぞ? 」


 子犬モードとなった我が子を可愛がっているミドリからそんな言葉が飛んでくるが、よく考えて見たらあの老人を仙人だと断定したのはミドリだったはず……だったら、


「残念じゃが我が答えれるのはここまでじゃ。これ以上はこの世の理が崩れてしまうからの……それでも良いのなら答えてやるがの? 」


 蠱惑的な笑みを浮かべるミドリに俺は降参の態度をとり、俺達は元々の課題であったみんなのレベルアップについて話を進めるのであった。


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